筋トレ中にめまいが起こる…。
筋トレをする前は特に体調不良でもなかったのに、筋トレ中に突然めまいが起きたり、急に吐き気がして気持ち悪いと感じたような経験はありませんか?
なぜそのような症状が筋トレ中や後に突然表れるのでしょうか?その理由や防ぐための対策について紹介、解説します。
筋トレ中にめまいが起こる原因
筋トレ中にめまいが起こる原因はいくつか考えられます。主なものをいくつか順に見ていきましょう。
また、各症状についての一般的な情報について、併せて参考サイトへのリンクも掲載しましたので、適宜そちらも確認してみてください。
血糖値の低下
極度に空腹な状態で筋トレを行うと、筋肉の運動に必要なエネルギーである糖質の消費が進んだ結果血糖値が下がり過ぎ、めまいや気持ち悪いといった症状に繋がることがあります。
低血糖症状は他にもしびれ、ふるえ、意識の低下といった形でも表れることがあります。このような筋トレ中の低血糖症状は、条件が揃えば糖尿病の有無とは無関係に表れます。
出典:糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター )
血圧の低下
筋トレを急に中止したり筋トレ後のクールダウン(整理運動)を行わないことで「運動後低血圧」が起こることがあります。また、水分が不足することで低血圧を招く場合もあります。低血圧状態ではめまいの他に頭痛、だるさ、立ちくらみなどの症状が表れることがあります。
筋トレなどの運動は血圧を下げる効果がありますが、人体には体の状態を一定に保とうとする恒常性維持機能があるため、血圧を維持しようとして血流を増やすために心拍数が上がり、筋肉内の血管が拡張されます。運動を止めてもしばらくは血管の拡張が維持された上で、運動停止により心拍数が下がるため、低血圧状態となります。
4.低血圧 | 薬事情報センター | 一般社団法人 愛知県薬剤師会
出典:一般社団法人 愛知県薬剤師会
血液のpHバランスの変動
運動による筋肉のpHバランスの変動から疲労に繋がり、そこからめまいが起こる場合があります。
運動に必要なエネルギーとして体内の糖質が代謝・分解され、その結果乳酸が作られます。その過程で発生する水素イオンなどの影響により筋肉のpHバランスが酸性に傾く事が一因と考えられています。
ちなみに、昔は乳酸は疲労を生じさせる物質そのものと考えられていましたが、今ではむしろ疲労を回復させる役割があることが分かってきています。
出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)
酸欠状態
呼吸の乱れから酸欠になり、めまいに繋がることがあります。
筋トレ中、特に慣れてきた方は筋肉の使い方を考えたり意識しながら行えるようになりますが、そこに集中するあまり呼吸がおろそかになったり無意識に呼吸を止めたりで十分な酸素を取り込む事ができず、酸欠状態からのめまいに繋がるのです。筋トレ中は通常よりも体が酸素を多く必要とすることもあり、気を付けないと酸欠状態になりやすいのです。
また、低血圧が酸欠に繋がる事もあります。めまいの原因の一つとして血圧の低下があることは既に解説しましたが、血圧低下によって脳への血流が減少することで脳が酸欠状態になり、めまいや吐き気などの症状に繋がります。
7.スポーツと人間(第3第2号)_小澤治夫、中西健一郎、中井真吾、若杉雅代、西村佳子
出典:スポーツライフ構築に関する基礎的研究 静岡産業大学学術機関リポジトリ
オーバートレーニング症候群
オーバートレーニング症候群とは、筋トレなどで生じた疲労が十分な回復をしないまま蓄積していく、慢性的な疲労状態のことです。栄養の摂取や休養が十分でないまま筋トレを続けると、めまいの他はしびれやだるいといった症状として表れる場合があります。
もしもこれまで挙げたような症状が続くなど一過性ではない体調不良が感じられる場合は、このオーバートレーニング症候群である可能性も考えられます。
オーバートレーニング症候群 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)
筋トレ以外の要因
ここに挙げたものだけが筋トレ中のめまいの原因とは限らず、要因が別に潜んでいる可能性もあります。
本人がまだ気付いていない何らかの疾患が、たまたま筋トレが引き金になってめまいとして表れている可能性もあります。特に、元々基礎疾患がある方や、筋トレを休んでもめまいやしびれ、吐き気などの体調不良が続くような場合は、別要因を疑ってみる必要もあるでしょう。
例えば、頸椎(けいつい)ヘルニアから来るめまいがあります。頚椎ヘルニアは発症のきっかけが判然としないケースが多いとされていますが、スポーツや重労働、加齢などが一因ともいわれています。頸椎ヘルニアから来る症状にはめまいの他、手のしびれ、腕のだるさなどがあります。
7.めまい、ひどい肩こりは頸椎ヘルニアの恐れあり。 | 腰と首の健康コラム|椎間板ヘルニアのレーザー治療 PLDD専門クリニック 伊東くりにっく
出典:椎間板ヘルニアのレーザー治療 PLDD専門クリニック 伊東くりにっく
筋トレ中にめまいが起こらない為の対策
ここまで、筋トレ中のめまいの原因についていくつかご紹介しました。次はこれらの症状を引き起こさない為の対策について見ていきましょう。
筋トレ中に水分補給をこまめに行う
運動中の十分な水分補給は運動後低血圧の予防に効果があることが分かっています。脱水状態は筋トレ中のめまいはもちろん、吐き気など他の体調不良の引き金にもなり得ますので、筋トレ中は意識してこまめに水分補給を行うようにしましょう。
筋肉量や体格の違いになどによって異なりますが、「アメリカスポーツ医学会」によれば、ジムでのトレーニング時などには、その日の通常の水分補給に加えて運動時間30分毎に約350ml(ミリリットル)の水分補給を行うのがよいとされているそうです。筋トレ中はこれを目安にして水分補給を行うのもひとつの方法です。
運動後低血圧に対する水分摂取の効果 | 産学連携情報提供支援データベース
出典:信州大学 産学連携情報提供支援データベース
(筋トレと水分補給との関係については以下の記事も参考にしてみてください)
筋トレは水分補給で成長速度UP!理由〜必要な量・タイミングまで解説!
出典:Slope[スロープ]
意識して呼吸を行う
酸欠に対してはシンプルに、呼吸の方法で対処可能です。例えば、筋トレ中の呼吸を意識して整え、激しく短い呼吸ではなく、筋トレ中の体の動きに合わせて深呼吸のようにゆっくり落ち着いた呼吸を行うように意識しましょう。
また、市販の携帯酸素スプレーを使うのも有効な方法のひとつです。
(酸欠などから来る筋トレ中の吐き気について以下の記事も参考にしてみてください)
筋トレ中〜後に吐き気が起こる原因は?体調不良が起きた際の対策まで解説
出典:Slope[スロープ]
急に筋トレを止めない
筋トレを急に止めたりせず、トレーニング後はクールダウンを最低でも5分以上は行いましょう。クールダウンは緊張した筋肉をほぐしつつその回復促進に繋がるとともに、急激な血圧低下の予防効果があります。軽いストレッチなどでクールダウンを行うことで血圧低下も緩やかになり、めまいの予防になります。
また、筋トレ前のウォーミングアップも同様に最低5分以上行うのが理想的です。ストレッチやウォーキングなど、軽く汗ばむ程度のウォーミングアップを行うことで血中に十分な酸素が取り込まれ、酸欠によるめまいなどの症状防止が期待できます。
筋トレ間には適切にインターバルを挟む
筋トレを行う際、特にメニューを組んで行う際には、セットメニュー間にインターバル(休憩)を適切に挟むようにしましょう。筋トレの場合、一般的には1〜5分程度挟むのが良いとされています。例えば腕立て伏せの後でスクワットをやるとすると、腕立て伏せが終わったら1〜5分の休憩を挟んでからスクワットに移る、というやり方です。
しっかりと適切にインターバルを取ることで、疲労を回復しながら筋トレの持続性を高め、オーバートレーニング症候群と共にめまいの発生防止になります。
(筋肥大に最適なインターバルについては以下の記事も参考にしてみてください)
筋肥大に最適なインターバルは3分?短いと意味なし?論文を元に正しい時間を解説
出典:Slope[スロープ]
空腹時の筋トレは避けつつ、筋トレ3時間前には食事を済ませる
筋トレ中の体は糖質などのエネルギーをより多く必要とします。数時間以上何も食べてないような強い空腹状態での筋トレは低血糖症などに繋がりますので、避けましょう。だからといって、食事してすぐ筋トレに移るのも避けて下さい。食事は筋トレを始める3時間くらい前には済ませるようにするとよいでしょう。
(筋トレ時の食事については以下の記事も参考にしてみてください)
空腹時に筋トレはNG!満腹もダメ!食事前後の正しい対策を解説!
出典:Slope[スロープ]
症状の状態によっては医師に診断してもらう
対策を行っても改善がない、筋トレをしなくても症状が続くなどの場合は、自己判断せずに病院で診察を受けるなど必ず医師の診断を仰ぐようにしましょう。
めまいの筋トレ以外の要因のひとつとして既に紹介しましたが、例えば頚椎ヘルニアが発生している事に気付かず無理なスクワットを行うと患部の神経圧迫に繋がります。そして、それが症状の悪化や慢性化を招くことがあります。筋トレを止めることで一時的に症状が和らぐかもしれませんが、そこで真の原因に気付かず自己判断して筋トレを継続してしまうと危険です。
めまいが続くなど体の状態に違和感があれば、まずは医師に相談されることをお勧めします。下記リンク先の病院はあくまで参考です。
出典:近畿大学病院
筋トレ中のめまいは事前の対策が重要
筋トレ中のめまいが筋肉の運動に由来する一過性のものであれば、事前の対策で防ぐことはできるものです。めまいがしたり気持ち悪いと感じてからでは自然に治まるのを待つだけになり、筋トレ効果が落ちてしまうだけでなく、筋トレそのものが辛くなってしまいます。事前にしっかり対策をして筋トレに臨むことが重要です。
そして、もしめまいやしびれ、吐き気で気持ち悪いなどの体調不良が続いたりなど、異変を少しでも感じた場合は、迷わず医療の専門家に相談し、症状が治まらないまま自己判断で筋トレを続けたりしないよう心がけましょう。
しっかりとめまい対策、日々の体調管理を行って、効果的な筋トレを楽しみましょう。