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超人体質『ミオスタチン関連筋肉肥大』とは?メカニズム〜有名人の例まで紹介

2020年11月05日

生まれつき常人の倍以上に筋肉が発達するミオスタチン関連筋肉肥大。人間だけでなく牛や犬など動物の例もあります。ミオスタチン関連筋肉肥大は日本人の格闘家や有名人にもいるのか、後天性や関連するサプリ、アニメキャラにまでいるって本当?といった疑問についても解説します。

【監修】パーソナルトレーナー 高津諭

トレーニング指導歴22年。大阪・兵庫を中心に活動するパーソナルトレーニングを提供しています。現在、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会のマスタートレーナーとして、またJOTスポーツトレーナー学院の校長として後進の育成、指導にも尽力している。HP / ブログ / Twitter

そもそもミオスタチンとは?

出典:https://science.sciencemag.org/content/296/5572/1486/tab-figures-data

みなさんは「筋トレしてもなかなか筋肉が付かない」と悩んだ経験はありますか?その原因にはミオスタチンが関係しているかもしれません。筋肥大というとテストステロンなどの男性ホルモンを連想するかもしれませんが、このミオスタチンも筋肥大に関わる重要な役割を持つ物質なのです。

ミオスタチンは筋肉の発達を抑制するタンパク質の一種。このミオスタチンの血中濃度の違いで筋肉の付き方が変わることが医学的に分かっています。その生成量は生まれつき遺伝子的に決まっており、同じ運動をしても人により筋肉の付き方に差が出る要因ともされています。

ではミオスタチンを増やせば簡単にムキムキになれるのではと考えてしまいそうですが、あまりにミオスタチンが濃いと、ミオスタチン関連筋肉肥大という筋肉の異常発達を招く病気になることがあるのです。ここから、もう少し詳しく見ていきましょう。

ミオスタチン関連筋肉肥大のメカニズム

筋繊維の周りには筋サテライト細胞という細胞が存在し、これが分裂して増殖することで筋肉が発達します。ミオスタチンにはその分裂・増殖を抑制する働きがあります。通常はその抑制が程よく機能して筋肉の異常発達に繋がることはありません。何らかの原因でこの抑制の働きが過度に阻害されると筋肉肥大が進み過ぎ、ミオスタチン関連筋肉肥大に繋がります。

この病気の発症要因は、主に次の二つのタイプがあるとされています。遺伝子の変異による場合と、筋肉の細胞がミオスタチンを拒絶する場合です。

前者は遺伝子の変異が原因でミオスタチンの産生が極端に少なくなるもので、まれなケースです。これにより、筋肉量が通常の2倍にまで異常発達する可能性があります。後者は筋肉の細胞がそもそもミオスタチンを受け付けてくれず、結果として筋肉の異常発達を招きます。そのため筋肉量が異常発達する可能性があり通常の1.5倍にもなる場合があるでしょう。

ミオスタチン関連筋肉肥大は危険なデメリットも?

一見楽に筋肉増強できそうですが、一方では危険なデメリットがあり喜ばしいことばかりでもありません。例えば、肥大した筋肉の維持のために1日に常人の何倍ものカロリーが必要となることです。そのため、十分に食事できない環境ではすぐに栄養失調に陥る危険がつきまといます。

また、体脂肪量が極端に少なくなるデメリットもあるでしょう。体脂肪はホルモンバランス調整など健康維持のため一定量必要です。そのため、摂取したエネルギーがすぐ使い果たされて体脂肪が付きにくくなると、別の疾患に繋がる危険性が出てくるのです。特に乳幼児では中枢神経に損傷をきたす危険があるとされています。

ミオスタチン関連筋肉肥大の治療法は?

現時点では、ミオスタチン関連筋肉肥大の治療法は確立されていません。ミオスタチン関連筋肉肥大自体が後天性というよりも遺伝性の先天的なものであり、ある種の体質でもあることから、治療は難しいといえます。

ただ、ミオスタチンの研究に関連して、筋ジストロフィーなどの筋肉が萎縮する病気の治療に役立てる研究も行われています。

また、クレアチンやHMBなどのミオスタチンの働きを阻害して筋肉増強を助けるとされる成分の入ったサプリメントも多数販売されています。筋トレ効果の向上を期待して使用する人が多いでしょう。

ミオスタチン関連筋肉肥大の有名人

出典:https://japaneseclass.jp/img/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%96%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%82%AF

ミオスタチン関連筋肉肥大で知られている日本人、有名人は存在するのでしょうか?まだ世界で見つかっている数は数千万人に一人か二人の割合という状況でもあり、今のところは格闘家や芸能人など日本の著名人の中で知られている人物は見当たりません。

ただし、両親共に遺伝子が筋肉倍加する突然変異体である確率は4万分の1程度と比較的高く、ミオスタチン関連筋肉肥大の子供が生まれる確率はそう低くはないといわれています。そうであれば、自分も周りも「ミオスタチン関連筋肉肥大と気付いていないだけ」という人も少なくないといえます。オリンピック選手などを調べればもっと見つかることでしょう。

ここではミオスタチン関連筋肉肥大で有名になった人物について紹介します。

グエン・ホアン・ナム

出典:https://www.clarin.com/internacional/10-anos-musculos-asombran-chico-vietnamita-padece-sindrome-superman_0_QhDJc2yGm.html

グエン・ホアン・ナムはベトナムに暮らす普通の少年です。プロのボディビルダーがFacebookでたくましい体の写真を上げている彼を見つけて交流を始めたことから話題になり、その後世界中のニュースにも取り上げられました。

出典:https://voz.vn/t/cuoc-song-cua-cau-be-10-tuoi-mac-hoi-chung-superman-hiem-gap-tai-viet-nam.117685/

彼は現在10歳ですが、すでに筋肉の顕著な発達があった6歳の時に病院で染色体の異常が確認され、遺伝子要因のミオスタチン関連筋肉肥大との診断が下されました。