漸進性過負荷の原則とは?
効果的に筋肉をつける方法として、漸進性過負荷の原則という言葉があります。これは、筋トレで効果を出すためにどれくらいの強度で行えばよいかという指標になる理論です。漸進性過負荷の原則は研究もされており、アスリート指導の現場でもよく使われています。
筋トレを続けているけどなかなか腹筋が割れない、なかなか見た目が変わらないということがありませんか?それは、現在のトレーニングが漸進性過負荷の原則に則っていないことが考えられるため、一度漸進性過負荷の原則に立ち返ってトレーニングを見直す必要があります。逆に、漸進性過負荷の原則に則れば、自重トレーニングでも成果を出すことができるのです。
この記事では、漸進性過負荷の原則はどのような内容なのかという詳しい解説や、漸進性過負荷の原則に則ったトレーニングのやり方、漸進性過負荷について研究された論文の内容を紹介します。
過負荷の特徴〜与える方法
漸進性過負荷の原則には漸進性と過負荷の二つの原則にわけられます。筋肉を効果的に鍛え肥大させるには、まず過負荷の原則が必要となります。過負荷とはどういうものか、内容を詳しく見ていきましょう。
過負荷とは
過負荷とは、日常的に身体が受けている刺激よりも強い刺激を与えることです。筋力をアップさせるために過負荷が必要な理由としては、日常的に受けている刺激では身体が慣れてしまい、筋肉が刺激されず成長しないためです。
例えば、毎日スクワットを30回行っているとします。同じ強度・同じ回数のスクワットを続けているだけでは、脚の筋力アップにはつながりません。長く続けても脚の形や筋肉量に変化は見られないでしょう。そこで、より筋力を肥大させるには、日常的に行っているスクワット30回よりももっと強い過負荷を与える必要があります。
過負荷を与える方法
ジムでのマシンを使ったトレーニングではもちろん、自重で行うトレーニングでも過負荷を与えることは可能です。漸進性過負荷の原則に則って筋肉に効果的な過負荷を与えるにはどうすればよいのでしょうか?過負荷を与える方法としては具体的に次のようなものがあります。
・重量を上げる
・回数を増やす
・動作する時間を長くする
・自重で行う場合、より負荷のかかる姿勢にする
・セット間や種目間の休憩時間を短くする
・セット数を増やす
・トレーニングの頻度を増やす
この方法を順番に試していけばよいというわけではなく、どの方法を試すかは、鍛えたい筋肉の種類によって異なります。例えばスクワットで脚の筋力を肥大させたい場合、同じ重量で回数を増やすのではなく、回数を変えずに重量を5kg増やすといった過負荷を与える方が効果的です。重量が限界魔で上がったら回数をこなし、さらに重量を上げるのが良いでしょう。
漸進性の特徴〜与える方法
続いて、漸進性過負荷の原則のもう一つの原則である漸進性について解説します。効果的な筋トレにおいて日常で行っている刺激より強い過負荷が必要ですが、一度過負荷を与えたとしても、段々身体はその負荷に慣れていきます。刺激に慣れてしまうと筋肉の成長はそこで止まってしまい、再び停滞してしまいます。
そこでさらに鍛えるため、必要となるのが漸進性です。それでは、漸進性の内容を見ていきましょう。
漸進性とは
漸進性は、少しずつ進めていくという意味があります。筋トレを始めて過負荷を与えても、長く続ければ身体が慣れてしまいます。鍛え続けるには過負荷を大きくしなければいけません。しかし、過負荷を上げる際一気に重量を10kg増やしたり回数を100回増やしても、身体は適応することができないでしょう。悪くすれば身体を壊したり怪我をする恐れもあります。
そこで、一気に過負荷を上げるのではなく、トレーニングの度に少しずつ過負荷を大きくしていくということが漸進性のポイントとなります。
漸進性を与える方法
漸進性過負荷の原則に則った漸進性の与え方としては、例えばベンチプレスの重量を5kgずつ増やす方法が一つです。重量を増やすと回数は減りますが、毎回のトレーニングで増やした重量に慣れ、元の回数をこなせるようになります。身体が慣れたら、更に一定の重量を増やすのがポイントです。漸進性には、主に以下のような方法があります。
・重量を増やす
・回数を増やす
・より負荷がかかりやすい姿勢にする
・グリップを握る幅を広くする
・難易度の高いトレーニング種目を取り入れる
難易度を上げる例としては、バーベルのグリップを握る幅を広くしたり、自重のスクワットで脚幅を広げてワイドスクワットにするという方法などです。漸進性の割合は筋力の付き方やトレーニングの種類、その日の栄養や睡眠による体調の状態などによって異なるので、見極る必要があります。ジムのトレーナーと相談して一緒に決めていくと、より効率的です。
漸進性過負荷の原則が筋トレで重要な理由
漸進性過負荷の原則は、トレーニングにおいて大原則といわれるほど重要な理論です。ではなぜ、この漸進性過負荷の原則が重要と言われるのでしょうか?その理由について解説します。
①適度なストレスが必要だから
一つ目の理由は、筋肉を成長させるには適度なストレスが必要になるためです。同じ刺激を与え続けてストレスに慣れてしまうと、筋肥大はそこで止まってしまい、成長しなくなります。更に成長させるには、新しい刺激をかけ続けなければならないのです。
②身体に負担をかけすぎず成長させるため
過負荷が必要だからといっていきなり強い刺激を与えてしまっても、身体は適応できず目標達成できなかったり、怪我をする場合もあります。そのため、少しずつ強度を上げていくという漸進性も重要となります。漸進性過負荷の原則のどちらかが欠けていても、効果的なトレーニングにはなりません。
トレーニングで行き詰った時や、思ったような成果が出ない時には、この漸進性過負荷の原則に立ち返ることで、効果的なトレーニングに取り組めるようになります。ジムでも自宅での自重トレーニングでも当てはまる根本的な原則です。
漸進性過負荷の原則に関する研究論文の内容
漸進性過負荷の原則を意識したトレーニングを行うことで、本当に筋肉の肥大化ができるのかと思う人もいるでしょう。しかし、漸進性過負荷の原則は研究も進んでおり、筋肉を効果的・効率的に鍛えられる方法として論文もあります。漸進性過負荷の原則に関する研究の論文内容も紹介します。
過負荷の原則についての研究内容
2017年に発刊された「筋力増強運動の基本と実際」という学術記事では、通常使われる筋力内での運動では筋力増強は見込めず、高い負荷をかける必要があると言及されています。本書で解説されている筋力増強に必要な負荷のかけ方は次の通りです。
①現在の1RMを計測する
②筋力維持をするには1RMに20~30%の負荷をかける
③筋力増量には40~50%以上の負荷をかける
さらに、筋収縮持続時間についても、最低15~20秒、最適な時間は45~60秒の間収縮しているのが良いとされています。
(詳しい内容については以下の記事も参考にしてみてください)
出典:J-STAGE
漸進性について
鹿屋体育大学スポーツトレーニング教育研究センターの研究で、自転車競技の未経験者を対象に、3年間のトレーニングの末インターハイに出場したという研究と成果を発表しています。この研究では、2年間のトレーニングで運動強度を最大まで引き出した後、さらにハードなトレーニングを加えることで最大運動強度を上げることができたとされています。
運動強度が上がった要因として、細かい目標タイム設定を行うなどの更なる過負荷を与えたほか、目標クリアできたトレーニングには量を増やしたり目標タイムを厳しくするなどの漸進性に則って内容を変化させたことが言及されました。
この研究からも、同じトレーニングの繰り返しでは目標タイムや筋力は伸びず、漸進性を持たせて新しい内容・新しい刺激を与え続けることで成果が見られています。
(詳しい内容については以下の記事も参考にしてみてください)
高校生自転車競技選手を対象とした 3 年間のトレーニング効果
出典:スポーツパフォーマンス研究
漸進性過負荷の原則を理解して筋トレに励もう
トレーニングの大原則となる漸進性過負荷の原則について紹介しました。結果を出したり身体を変えるには、現状よりも負荷を強くする過負荷と、少しずつ負荷を上げる漸進性の両方が重要です。筋トレでなかなか成果が出ないと感じる人は、是非この漸進性過負荷の原則に立ち返ってトレーニングに励んでみてください。