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筋トレ・運動の知識

理解で筋トレ効率UP『拮抗筋』とは?役割〜鍛えるメリット&方法まで徹底解説!

2020年10月04日

拮抗筋は、意識することで筋トレ効率がUPする重要な筋肉です。主動筋との関係や、役割などを分かりやすく解説します。フォームの安定やパフォーマンス向上に欠かせない拮抗筋の鍛え方や、主動筋とのペア一覧など、スーパーセット法にも必要な知識が満載です!

【監修】パーソナルトレーナー Riku

法政大学スポーツ健康学部出身。パーソナルトレーナー兼ミラーフイットコンテンツディレクター。2021年6月にパーソナルトレーニングジム『SPICE GYM』を中目黒・恵比寿エリアにて開業予定。
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拮抗筋とは?役割は?

拮抗筋を学ぶときに、必ず対になって出てくる言葉が「主動筋」です。主動筋とはメインとなって力を発揮する筋肉のことを言います。たとえば、アームカールを行うときは、上腕二頭筋が主動筋です。主動筋が収縮するとき、関節の裏側では伸びて伸張する筋肉があり、それを「拮抗筋」と言います。アームカールでは、上腕三頭筋がそれです。

また、肘関節が伸展するときは、上腕二頭筋が拮抗筋となり上腕三頭筋が主動筋となります。このように、主動筋と拮抗筋はペアになります。ほとんどの場合、どちらかだけが働くということはありません。

拮抗筋の役割

関節を屈曲させるとき、拮抗筋はある程度、縮む方向にも力を発揮しながら伸びています。もし、拮抗筋が伸びっぱなしなら、急激に関節が屈曲して関節が外れてしまい、拮抗筋が固く伸びにくければ、関節を屈曲させる動きは鈍くなります。このように拮抗筋は、縮む力と伸びる力が上手に働くことで、スピードを調節しながら関節をスムーズに動かしているのです。

また、スポーツなどで素早く関節を伸ばす動きでは、拮抗筋は関節が伸びすぎるのを止める働きがあります。たとえば、ボールを蹴るときは膝関節が伸展し、ハムストリングが拮抗筋となります。ボールが足から離れて膝が完全に伸展する瞬間に、ハムストリングは動きを止めるように力を発揮し、膝関節をケガから守っているのです。

拮抗筋を鍛えるメリット

拮抗筋を鍛えておくことで得られるメリットは、通常の役割以上に体づくりにおいて大切なことが多くあります。それは、拮抗筋を疎かに考えていると損してしまうことが多くある、とも言えます。ここから紹介するメリットを読めば、今まで足りなかったものが見えてくるかもしれません。

1.安定した筋トレのフォームが獲得できる

筋トレは、関節の屈曲と伸展を反復させる運動です。関節を屈曲させるときに拮抗筋として働いていた筋肉は、伸展の動作では主動筋に変わります。アームカールにおいて、上腕二頭筋ばかりを鍛えていても、上腕三頭筋のトレーニングが疎かになっていれば、肘を伸ばすときに負荷を支えきれなくなります。

大胸筋を鍛える腕立て伏せでは状態を床に近づける動作、また、大腿四頭筋を鍛えるスクワットではしゃがみ込む動作で体を支えられないと感じたら、拮抗筋のトレーニング不足の可能性があります。拮抗筋を鍛えることで、しっかりと反復動作が行なえるようになり、フォームが安定します。

2.主動筋のパフォーマンス向上

拮抗筋を鍛えて筋トレのフォームが安定すれば、主動筋のパフォーマンスが上がります。筋トレの基本は、主動筋が動作を始める始点から主動筋が最後まで収縮する中間点、そして元に戻る終点までを、なるべく長い距離を取って、それぞれの点で静止させることが大切です。

アームカールでの上腕三頭筋がしっかりと鍛えられていれば、終点で静止し、次の動作での始点からきっちりと負荷を与えて上腕二頭筋を鍛えることができます。上腕三頭筋の筋力が不足していると、静止させることができません。すると、無理にでも次の動作につなげるために反動をつけてしまうのです。それでは上腕二頭筋の力は十分には発揮できません。

スクワットや腕立て伏せでは、拮抗筋の力が弱いと上体を落としきれずに浅い動きでの反復になりやすいです。メインの主動筋にしっかりと力を発揮させるには、拮抗筋を鍛えることが大切です。

3.バランスの取れた体づくり

主動筋と拮抗筋は、大まかに言うと表と裏の位置関係です。厚い胸板や割れた腹筋を目指して筋トレするのは良いことですが、姿勢を支える背筋の筋トレが疎かになると、見た目のバランスが悪くなるだけでなく、姿勢が悪化にもつながります。筋肉には重みがあるため、一方ばかりの筋量が増えると関節への負担も大きくなるでしょう。

スポーツにおいても、例えばボクシングでのパンチの威力には大胸筋などの体の前面の筋肉が大きく関わります。しかし、素早く腕を引き戻すには広背筋などの背面の筋肉が必要です。見た目や健康のため、スポーツや日常動作のためにバランスよく体を鍛えるようにしましょう。

4.主動筋の柔軟性アップ

主動筋が収縮するとき、拮抗筋は伸張します。このとき拮抗筋は、主動筋が収縮する動きに合わせて連動的に協調して動くように神経支配がなされています。これを相反神経支配といいます。つまり、片方の筋肉を収縮させると、自動的にもう片方が伸びるのです。

この仕組みを利用して、柔軟性を上げたい筋肉の裏側の筋肉を鍛え、しっかりと収縮できる力をつけておくと表側の筋肉が伸びやすくなるのです。試しに片腕を水平に伸ばして、もう片方の手で体に引き付けるストレッチを行ってみてください。肩の前面の筋肉にギュッと収縮させる力を入れることで、肩の背面がストレッチされている感覚はより強くなります。

主動筋と拮抗筋のペア一覧

ではここで、主動筋と拮抗筋のペアとなる主な筋肉を紹介します。普段鍛えている筋肉の拮抗筋が、どの筋肉なのかをチェックしておきましょう。

・【首】胸鎖乳突筋(主動筋) ⇔ 板状筋・半棘筋群(拮抗筋)
・【肩】三角筋前部(主動筋) ⇔ 三角筋後部(拮抗筋)
・【腕】上腕二頭筋(主動筋) ⇔ 上腕三頭筋(拮抗筋)
・【腕】橈側・尺側主根屈筋(主動筋) ⇔ 長・短橈側手根伸筋、尺側手根伸筋(拮抗筋)
・【胴】大胸筋(主動筋) ⇔ 広背筋(拮抗筋)
・【胴】腹直筋(主動筋) ⇔ 脊柱起立筋(拮抗筋)
・【脚】腸腰筋(主動筋) ⇔ 大殿筋(拮抗筋)
・【脚】大腿四頭筋(主動筋) ⇔ ハムストリング(拮抗筋)
・【脚】前脛骨筋(主動筋) ⇔ ヒラメ筋、腓腹筋(拮抗筋)

主動筋と拮抗筋をバランスよく鍛えるスーパーセット

拮抗筋を鍛える筋トレを行いあえて疲労させた後にすぐさま主動筋の筋トレを行う、という「スーパーセット法」と呼ばれるトレーニング方法があります。拮抗筋の働きは主動筋の動きを抑制させる邪魔なもの、という考え方から生まれたトレーニング方法です。

主動筋と拮抗筋の疲労と回復を繰り返し行うことで、両方がバランスよく鍛えられる効果があります。

(詳しいやり方については以下の記事を参考にしてみてください)

拮抗筋を理解して鍛えて筋トレ効率UP

拮抗筋の役割や、鍛えるメリットを理解しておくと、よりトレーニングが効果的に行えます。トレーニング初級者の方は特に効果を実感しやすいので、ますますトレーニングが楽しくなるでしょう。次にトレーニングするときは、「この筋トレでの拮抗筋はどれだろう?」と意識してみてください。また、拮抗筋の筋トレにも効果的なスーパーセット法にもチャレンジしてみましょう!