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筋トレ・運動の知識

筋トレでうつ病が治る?論文を元に予防&改善の効果〜治った体験談まで紹介

2020年11月08日

筋トレでうつ病が治る、って最近よく耳にしませんか?間違いではありませんが、ちょっと不正確な表現でもあります。筋トレが全てを解決するわけではありませんが、うつ病予防と改善に一定の効果があるのも確かです。学術研究の結果や体験談も交えながら解説していきます。

【監修】パーソナルトレーナー Riku

法政大学スポーツ健康学部出身。パーソナルトレーナー兼ミラーフイットコンテンツディレクター。2021年6月にパーソナルトレーニングジム『SPICE GYM』を中目黒・恵比寿エリアにて開業予定。
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筋トレがうつ病を治すって本当?

「運動するとうつ病が治る」という話、どこかで耳にしたことがありませんか?以前からあった話ですが、主に有酸素運動とメンタルの関わりの話が多く、筋トレについては注目されていませんでした。しかし、近年になって、筋トレがうつ病に良い効果があることが科学的に分かってきたのです。

うつ病は精神の病、メンタルヘルスの領域とされます。そのため、筋肉の働きと関わりがあるようには考えられないかもしれません。しかし、精神も筋肉もその働きは脳がコントロールしていることを考えれば、決して無関係ではないでしょう。

筋トレがうつ病を治す、とはどういうことなのか。順を追って説明していきます。

筋トレによるうつ病予防の効果

うつ病の原因のひとつとして、一説にはセロトニンの不足があるといわれています。セロトニンはホルモンの一種で、精神に幸福感や安心感を与える物質とされています。これが不足したり何らかの原因で働きが鈍ったりすると、うつ状態や不安障害などの精神疾患に繋がるといわれています。

そして、まだ分かっていないことは多いものの、筋トレなどの運動がうつ病の予防に効果があることが、様々な研究や調査で明らかになってきています。

筋トレのうつ病予防効果を調べた研究

ポルトガルのリスボン大学の研究者の調査によれば、強い筋力が抑うつ状態の予防になり、また抑うつ状態の軽減に繋がる可能性のあることが分かっています。

それは筋肉量や運動量に関係なく、筋トレをしたかどうかだけが関係していました。調査されたデータは、26カ国の18歳以上の成人のデータ8万7508人分。PRISMAガイドラインに基づき、システマティックレビューやメタ解析といった分析手法で調査されました。

また、アイルランドのリムリック大学の調査研究では、「精神疾患の有無に関わらず、不安を感じる症状が筋トレによって著しく改善した」とする結果が出ています。

うつ病予防の効果は?

うつ病予防や改善にはホルモンの働きも大きく関わっています。ホルモンは、筋肉の働きが精神に影響を及ぼすメカニズムの一端を担っています。

筋トレで分泌されるホルモンがあります。セロトニンやテストステロン、ドーパミン、ノルアドレナリンなどがそうで、これらのホルモンは脳の興奮状態や覚醒状態を適切にコントロールするためのものです。そうしたホルモンが筋トレで十分に分泌されることで、うつ病予防に繋がっているといわれています。

そうしたホルモンの働きや前述のような調査結果をみれば、うつ病でなくとも筋トレをすることで焦燥感などの不安な気持ちが解消されて、気持ちも上向く効果があり、うつ病予防には効果的だといえるでしょう。
(筋トレとホルモンの関係については以下の記事も参考にしてみてください)

筋トレによるうつ病改善の効果

実は、筋トレなどの運動がうつ病を治すというはっきりした証拠は、現時点ではまだ見つかっていません。しかし、様々な研究の結果によって、筋トレがうつ病の予防とともに改善にも繋がる可能性が示唆されています。

筋トレのうつ病改善効果を調べた研究

スウェーデンの細胞運動生理学の研究者たちの論文では、筋トレのうつ病改善効果に繋がる研究結果が出ています。マウスを使った動物実験で、筋肉の運動で発生する物質「PGC-1α1」による、アミノ酸の一種であるキヌレニン代謝の調整作用がうつ病の改善を助ける、というメカニズムが解明されたとのことです。

これがそのまま人間に当てはめられるかは確定していませんが、前述のリスボン大学やリムリック大学の調査研究結果などからも、筋トレはうつ病予防とともにその改善効果もある可能性が高いと考えられるでしょう。

うつ病改善の効果は?

確定的ではありませんが、うつ病予防の調査研究結果と同様に、筋トレをすることで分泌される物質やその働きによって精神状態が安定し、うつ病の改善にも一定の効果があるとされています。

また、筋トレなどの運動を行うと睡眠の質が向上するといわれています。良質な睡眠を適切な時間しっかり取ることは、メンタルヘルスケアの基本でもあります。不眠はうつ病の症状のひとつの典型ともいわれ、運動不足が原因になることもあります。程よい筋トレとよい眠りがうつ病の改善にも役立つことでしょう。

(筋トレと睡眠の関係については以下の記事も参考にしてみてください)

うつ病の方がすべき筋トレの負荷や頻度

うつ病でも筋トレには違いないので特殊な方法は必要ありませんが、押さえておきたいポイントがあります。前述した研究結果などが示しているように、うつ病予防や改善のためにはのトレーニングの量や頻度は関係ない、ということです。

多くの場合、うつ病の人が決まった時間や量の運動を定期的に実行して長く継続することは容易ではありません。習慣化しようとあまり意識し過ぎないようにしつつ、無理のない範囲で、できそうなことから少しずつ初めてみることがポイントです。

うつ病が軽い人の場合は?

うつ病の程度が軽い人やうつ病との診断までいってない人なら、筋トレする意欲も比較的持ちやすいでしょう。その場合は軽い筋トレなどを、これなら出来ると思える負荷や頻度で始めてみて下さい。オーストラリアの研究機関「Black Dog Institute」の研究によれば、運動の強度や量に関係なく週に合計1時間の運動だけでうつ病予防効果があるとのことです。

ただし、決まった負荷や頻度ということにこだわりすぎると精神的な重荷になることがあり、結果思うように筋トレをこなせなければ逆に症状悪化に繋がる可能性があります。最初は腕立て伏せやスクワットを1〜2分、週に1〜2回くらいといったごく軽いメニューから始めてみましょう。

無理な時はいったんトレーニングを止めてもかまいませんし、いけそうなら少しずつ負荷や頻度を増やしてみても大丈夫です。1日10分も行えば週1時間に届くので、目標としてなんとなく念頭に置いて行ってみて下さい。そうして徐々に負荷や頻度を増やせたり継続したりできた達成感が自信に繋がり、その点でもうつ病の予防や改善に良い影響を与えます。

うつ病が重い人の場合は?

うつ病の状態が重い人は、気力が出ないだけでなく体も思うように動かないことが少なくありません。症状の軽い人より体力も落ちている場合もあるため決して無理をしないでください。

それでも重いうつ状態で筋トレを行うという場合は、医師などの専門家や家族などの協力者に相談しながら、一緒に行うようにしましょう。その上で、症状の軽い人同様、その時点で出来る範囲の負荷と頻度で始めてみて下さい。

うつ状態が重い場合、多くは一人で出来ることが限られることが多いため、筋トレは治療と並行して行うことも念頭に置きましょう。

筋トレでうつ病が治った人の体験談

筋トレでうつ病が良くなった、治った、という声は少なくありません。SNSからいくつかご紹介します。

専門家としての実感



医療の現場でうつ病の患者さんに対応されている専門家も実感されているようですね。

うつ状態悪化の予防



うつ状態を長引かせないために筋トレをされているとのこと。運動嫌いでも効果を実感しているからこそ継続できるという意見は心強いですね。

精神疾患の改善



この方の場合、筋トレだけでうつ病が治ったわけではありませんが、生活習慣と合わせて筋トレも行うことで確実にうつ病の改善を実感されているとのことです。

筋トレでうつ状態が改善したことを実感される方は少なくないようです。患者さんを診て実感されているメンタルヘルス専門家の方の体験談もあります。無理のない範囲で筋トレを試してみることは、やはり一定の効果があるといえます。

(筋トレとメンタルの関係については以下の記事も参考にしてみてください)

うつ病気味なら筋トレをはじめてみよう

筋トレは、決してうつ病を治す万能薬というわけではありません。筋トレしなきゃ、という義務感が心の重荷になり、症状の悪化さえ招く可能性もあります。一方で、まだ手法が確立されていないものの、軽度のうつ病患者に運動療法を実施する医師もいます。そうした専門家に相談して治療を行うことも当然、大切なことです。

とはいえ、筋トレなど軽い運動を行うことがメンタルに良い効果を生むのも事実です。うつ病気味かなと感じたら、できる範囲で少しずつ筋トレを試してみて下さいね。