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ランニングによる脳への刺激を理解しよう
ランニングをすると、足の裏が地面に接地した際の衝撃が、全身に伝わります。実はこの振動は脳にとっては刺激となり、適度な振動の量であれば、いくつかのプラスの効果を得られることが、最近の研究により解明されました。
また、ランニングは有酸素運動であることから、脳への酸素供給量も増やすことになります。脳の栄養となる酸素の供給量が増えるということも、脳にとってプラスの効果です。
この記事では、ランニングによる脳への刺激と血流の増加によるメリット、適度な刺激の与えるランニングの方法を解説していきます。
ランニングは脳に刺激を与えて良い効果が出る?
国立障害者リハビリセンターや東京大学などによる研究チームは、「ジョギングやウォーキングによる効果は脳への衝撃によるもの」、「頭部への衝撃が脳機能を調節・維持することが明らかになった」と、発表しました。
研究内の実験では、適度な刺激を「頭部へのジョギング程度の振動を30分」とし、適度な刺激を加えたラットのグループと加えないラットのグループの脳の反応を比較し検証が行われました。実験の結果、刺激を加えたラットのグループの方が、前頭葉の一部である前頭前野による調節機能が、より効果的に働いていることがわかりました。
この研究は、運動により頭部へ衝撃が加わると、脳内の圧が局所的に変化し、間質液が流動して脳内の細胞に刺激を与えるということを解明するものです。ランニングによる適度な脳への刺激は脳機能を維持・向上させる働きがあるのです。
ランニングが脳に与えるメリット
適度なランニングを行うことにより、脳には振動による刺激が加わります。また、ランニングは有酸素運動ですので、血流は増加し脳に運ばれる酸素量も増加します。その結果として次のような脳へのメリットが生まれます。
ワーキングメモリの増強
ランニングを行うと、前頭前野が刺激され、記憶力、集中力、決断力が向上します。前頭前野は人が行動するためのプランニング、判断、実行、記憶などをつかさどる、いわばワーキングメモリとしての機能を持ちます。
前頭前野が活性化されることにより、ワーキングメモリが増強されるのです。ビジネスの場面では、記憶力、集中力、決断力といった能力をフル活用しています。ビジネスパーソンにとってランニングは、優れたパフォーマンスを発揮するための、効果的なトレーニングとなるでしょう。
脳内のネットワークの増強
ランニングを行うと、シナプスを通して脳内のネットワークが活性化し、発想力が向上します。発想するために必要な過去の経験や知識は、脳内の様々な箇所を使って記憶されています。
脳が活性化されることにより、脳内の様々な箇所に保存されている過去の経験や知識の記憶と、新しく得られた情報が、シナプスを通じて結びつきます。その結果新たな発想を生みだすことができるのです。脳をクリエイティブな状態にするためにも、ランニングは大きなメリットがあると言えるでしょう。
「幸せホルモン」の働きの向上
ランニングを行うと前頭前野が刺激され、感情の調節機能も向上します。前頭前野は神経伝達物質のうち、いわゆる「幸せホルモン」である、セロトニン、ドーパミン、エンドルフィンの働きを調節する機能を持ちます。
セロトニンは心を整え、ドーパミンはやる気や快感を生み、エンドルフィンは神経を鎮め多幸感を生みます。前頭前野が活性化されることにより、これらの「幸せホルモン」の働きも向上するのです。また、エンドルフィンは脳内麻薬とも呼ばれるように鎮痛・鎮静作用もありますので、ランニングそのものにもメリットがあります。
うつ状態など心の不健康を防ぐだけでなく、ストレス耐性を高め精神的に健康で豊かな生活を送るためにも、ランニングは大きなメリットがあると言えるでしょう。
筋トレでセロトニンを分泌!活性化の理由〜幸せホルモンの効果を徹底解説!
出典:Slope[スロープ]
脳細胞の増加
ランニングを行うと脚の筋肉が収縮することにより、血液に対してポンプの役割を果たし、血流を全身に送り届けられるようになります。有酸素運動であるランニングで取り込んだ酸素を、勢いを増した血流にのせて、脳にも多く届けることができるのです。
結果として、脳全体の働きを活性化させることはもちろん、新たな脳細胞が生成されて脳の容量も向上させることができます。脳の容量が向上すると記憶力も向上することは、もはや言うまでもないでしょう。
脳の健康の維持
ランニングを行うと、海馬や大脳が刺激され、脳の健康を維持するための効果も得られます。アセチルコリンという神経が活発になることで、脳内部の血管が広がって血流がよくなります。すると脳を守るためのタンパク質が生成され、神経の働きが高まるため、神経細胞へのダメージが軽減されることが確認されています。
これは脳の神経細胞の死を減らす効果があり、海馬や大脳の脳血流の低下によって起こる、アルツハイマー型認知症の予防にもつながるとされています。
脳を適度に刺激するランニングのやり方
前述の研究では、脳を適度に刺激するランニングのやり方として、ジョギング程度のペースで30分続けることとしていました。では、ジョギング程度のペースとは実際どの程度のスピードのことを指すのでしょうか。
国立健康・栄養研究所によるとジョギングの身体活動強度は7.0メッツとされており、7.0メッツのジョギングは時速約7キロメートル程度とされています。ちなみに、メッツとは身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツです。
このことから、時速7キロメートル程のペースで30分程続けるランニングが、脳を適度に刺激するランニングのやり方と言えるでしょう。ちなみに、時速7キロメートルとは、1キロを8分30秒程で走るペースです。逆に強度の強すぎるランニングは、脳にダメージを与えてしまうこともありますので、注意が必要です。
(ジョギングをする際の注意点はこちらもご参照ください。)
スロージョギングはデメリットもある!効果を低下させない対策まで詳しく解説!
出典:Slope[スロープ]
ランニングを習慣にして定期的に脳に刺激を与えよう
ランニングによる脳への刺激と血流の増加によるメリットと、脳に効果的なランニングの方法をご理解いただけたでしょうか。ご紹介したメリットは一時的に得てもあまり意味はありません。ランニングを習慣化することで、実行力とクリエイティブさがみなぎり、「幸せホルモン」が活発な脳の状態を継続的に得ることができるのです。
ぜひランニングを習慣にして、脳を活性化しつつ、心と体を健康に保っていきましょう。