目次
ストレスで白髪が生えるって本当なの?
「最近、白髪が目立ち始めた」「頻繁にストレスを感じていて白髪が増えることが心配」「すごくショックなことがあって、一気に髪が真っ白になったらどうしよう…」そんな悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。
確かに強いストレスがかかると体調を崩したり肌が荒れる人も多くいますし、白髪が増えるという話もよく耳にします。苦労した政治家が数年のうちに白髪になった様子を見ると、単なる加齢だけが原因ではなさそうな気もしてきます。
実際、ストレスで白髪が生えるというのは本当の話です。アメリカのハーバード大学で幹細胞を研究するYa-Chieh Hsu氏のチームはHow stress causes gray hairの中で「ストレスがかかると白髪が増える」というメカニズムを解明したと発表しました。これはマウスでの実験結果ですが、ヒトの身体に与える影響にも因果関係があるとされています。
(白髪については下記の記事も参考にしてみてください)
白髪の原因は?何歳からが正常?すべき対策〜抜くと増えるなどNG行為まで解説
出典: Slope[スロープ]
ストレスで白髪が生えると言われる理由
では、なぜストレスで白髪が生えるのでしょうか。若い20代〜30代でも影響があるなら心配ですよね。一度白髪になった髪が治るものなのかについても、気になる人は多いのではないでしょうか。
ここではストレスと白髪の関係を、実際の研究結果から紐解いていきます。
(白髪については下記の記事も参考にしてみてください)
30代で白髪は早すぎ?数本抜くのが急に増える原因に?適切な対策まで解説!
出典:Slope[スロープ]
はじめに:ストレスは全身に影響するもの
今回ハーバード大学の研究チームが報告したのはストレスが頭髪に与える影響の部分についてでした。そもそもストレスは全身に作用するものですが、目に見えづらい内臓組織よりも、頭髪は外見からも見えやすく研究対象にしやすかったということもあるでしょう。
科学誌『Nature』に掲載された実験結果「Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells」によれば、急性ストレスが毛包内の色素幹細胞に不可逆的なダメージを与えることが報告されています。
この記事を読んでいる方の中でも、すでに「ストレスを抱えていると腹痛を起こしやすい」「ストレスのせいでじんましんが出た」というような経験をしたことがある人もいるかもしれません。考えてみれば当然ですが、ストレスは肌や内臓だけでなく、全身つまり頭皮や髪にも影響するということなのです。
免疫細胞・コルチゾールとは無関係
一時期は、ストレスにより免疫細胞が影響を受けて白髪になるという説もありました。しかしこの説は誤りであったことがわかっています。研究チームの実験において、免疫細胞をなくした状態のマウスでも、ストレスをかけると白い毛が現れたのです。
また、コルチゾールというストレスホルモンが白髪発生に関係するのではないかという説も否定されました。同じく、コルチゾールが作られない状態にしたマウスの実験においても、ストレスによって白い毛が生えることがわかったのです。
これらの実験により、過去に白髪の原因でないかと考えられていた免疫細胞や、コルチゾールホルモンは白髪化とは無関係ということが明らかになりました。
交感神経系が真の原因
そこで注目されたのが交感神経系の活性についてでした。確かにストレスと感じると交感神経が活発になり、鳥肌が立ったり心臓の鼓動が早くなったりします。
交感神経系が活性化すると、神経伝達物質のノルアドレナリンが出ます。これにより「闘争逃走反応」を引き起こすのですが、ノルアドレナリンは心拍数を上昇させ、考えるより先に危険に素早く反応できるようにする働きがあります。
しかし、ノルアドレナリンが出すぎると、髪色の元になる色素幹細胞に害を及ぼすことがわかりました。急性ストレスによって交感神経が活性化されると、色素幹細胞の集団全体を枯渇させてしまうという実験結果が出たのです。
多量のノルアドレナリンで色素幹細胞がなくなる仕組み
身体に強いストレスがかかると交感神経が活発になり、放出されたノルアドレナリンが毛包にある色素幹細胞に取り込まれます。
通常であれば色素幹細胞の一部がノルアドレナリンによってメラニン細胞に変換されるのですが、過剰に活性しすぎると色素幹細胞のすべてがメラニン細胞に変わってしまうのです。
色素幹細胞がすべてメラニン細胞になってしまうと、髪に色素をつける元の供給源である色素幹細胞がなくなってしまうため、それ以上黒髪が生えることはなくなってしまうのです。
一度失われた色素幹細胞は元には戻らない
今回の実験で、マウスに物理的・心理的ストレスを与えたところノルアドレナリンの影響で、毛包にある色素幹細胞が永続的に枯渇することがわかりました。マウスの場合、過度なストレスを感じた数日後には色素幹細胞が消失してしまったと言います。
しかも残念なことに、一度なくなってしまった色素幹細胞が蘇ることはありません。結果、その毛包からは白髪しか生えないことになります。
髪の毛以外にも現れるストレスの影響
これまでも、抹消神経が臓器機能や毛管・免疫などの調節をすることは知られていましたが、幹細胞の調節方法は証明されていませんでした。今回の研究チームの発表は、末梢神経がストレスによって幹細胞とその機能をコントロールでき、毛髪の色素幹細胞への影響を示しています。
また、髪の毛に限らず体内にあるその他の組織の幹細胞も、少なからずストレスの影響を受けると考えられています。それだけストレスは人体にも悪影響を与えるということなのです。「たかがストレス」と放置していてはいけません。