目次
クリーンアンドジャークとは?
ウエイトリフティングはいくつかの種目に分かれていますが、そのうちオリンピックの種目として正式に採用されているのはクリーンアンドジャークとスナッチの2つです。オリンピックでは2種目をそれぞれ3回の試技で行い、ベストの重量を合計してメダルが争われます。フォームの違いなどに注目して、2つの種目を順に見ていきましょう。
クリーンアンドジャーク
クリーンアンドジャークは、両手で肩の高さまでバーベルを上げる「クリーン」と、両足を揃えてバーベルを頭上まで持ち上げる「ジャーク」という2つの動きを一連で行う種目です。
ウェイトリフティングの種目の中で最も重い重量を持ち上げ、競技の勝敗を左右するとされます。実際の競技では、制限時間内にバーベルを持ち上げて静止して、3人の審判のうち2人からダウン(下ろせ)の合図が出るまでバーベルを下ろすことができません。合図の後にプラットフォームと呼ばれる競技スペース内にバーベルを下ろして試技成功となります。
スナッチ
スナッチは、地面に置かれたバーベルをスクワットの体勢から1つの動作で一気に頭上まで持ち上げる種目です。クリーンアンドジャークよりもバーベルの持ち手の間隔を空けて握ります。スナッチではクリーンアンドジャークと比べてさらに技術面を求められますが、クリーンアンドジャークよりは記録が出ません。
競技では、クリーンアンドジャークと同じくスナッチも試技は3回までです。スナッチが先に行われますが、3回の試技で記録が出せなかった場合はクリーンアンドジャークに進むことができないというルールがあります。
(スナッチについては以下の記事も参考にしてみてください)
スナッチの効果&やり方!全身に効くフォームのコツを種類別に!ダンベル・ケトルベルなど
出典: Slope[スロープ]
クリーンアンドジャークで得られる効果
クリーンアンドジャークでは、体のいろいろな部位の筋肉を鍛えることができます。鍛えられる筋肉と、鍛えることでどんな効果があるのかを見ていきましょう。
クリーンアンドジャークで鍛えられる筋肉は?
クリーンアンドジャークは腕力ばかりにフォーカスがちですが、実は全身を使った運動です。
クリーンアンドジャークで上半身の筋肉が鍛えられるのは言うまでもありません。クリーンの動作でバーベルを引き上げる時、体を支えるために使われるのは大胸筋です。ジャークでは僧帽筋や三角筋などが鍛えられます。
さらに、ジャークの動作で瞬発的に脚力を使ってバーベルを持ち上げるパワーに連動させることから、クリーンアンドジャークは下半身の筋トレになると言っても差し支えありません。股関節周りが刺激され、特に大殿筋やハムストリングスが鍛えられます。
(大胸筋の鍛え方ついては以下の記事も参考にしてみてください)
大胸筋の筋トレ20選!急激にデカくなる鍛え方のコツをプロが解説
出典: Slope[スロープ]
クリーンアンドジャークで得られる効果【①瞬発力アップ】
クリーンアンドジャークは、デッドリフトやベンチプレスの4倍以上パワーが発揮されると言われます。実際にウエイトリフティングの選手の基礎筋力は凄まじく、ある調査では、他のどの競技の選手よりも垂直跳びの記録が優れていたとの結果が出ました。このことだけでも、ウエイトリフティングを取り入れた筋トレが瞬発力強化に優れた効果があると言えるでしょう。
クリーンアンドジャークでは、下半身のあらゆる関節を素早く稼働させます。これは、多くの競技で行われるスピードやスプリント、ジャンプや方向転換などと同じです。よって、クリーンアンドジャーク1つ行うだけで瞬発力強化のトレーニングになると言っても過言ではありません。
(ハムストリングスの鍛え方ついては以下の記事も参考にしてみてください)
ハムストリングスの鍛え方!15種の筋トレ&コツ!自宅でできる自重メニューも多数!
出典: Slope[スロープ]
クリーンアンドジャークで得られる効果【②他のトレーニングが不要】
クリーンアンドジャークでは、体のいろいろな部位の筋肉が鍛えられると前述しました。ですので、クリーンアンドジャークをさまざまな競技の筋トレメニューとして組み込めます。クリーンアンドジャークで強化した体力を、各種競技の場で還元することができるのです。
また、クリーンアンドジャークを行えば、同時にいろいろな部位のトレーニングになります。このことは筋トレの時間短縮につながりますので、練習メニューが作成しやすくなるでしょう。空いた時間を休養に充てたり、技術練習に費やすことなどが考えられます。
さらには、クリーンアンドジャークは他の筋トレと異なり、楽しさややりがいのある種目です。持ち上げる重量が5キロ上がった、回数が1か月で倍になったなど、自己記録を更新した時の喜びは格別でしょう。クリーンアンドジャークを取り入れることにより、筋トレへのモチベーションを高められます。
(三角筋の鍛え方ついては以下の記事も参考にしてみてください)
三角筋の鍛え方!肩が急激にデカくなる筋トレメニュー&ストレッチの方法を解説
出典: Slope[スロープ]
クリーンアンドジャークで得られる効果【③パフォーマンス向上】
クリーンアンドジャークを取り入れることにより、全身の筋肉が協調しながら瞬発的な力を発揮する能力が上がります。このことは、あらゆる競技でのパフォーマンス向上に欠かせません。
また、クリーンアンドジャークで力が伝わる正しい順番の習得ができます。下半身の脚力を使うことで始まり、体幹を経て肩から腕という具合です。これは、用具を使う時の力の出し方や、瞬間的な動作のオンオフの切り換えにもつながります。
さらに、クリーンアンドジャークは重いバーベルを使用した筋トレであることを忘れてはいけません。バーベルを上げてから下ろすときには、バーベルを受け止める力が必要です。バーベルを減速させる力や柔軟性、バランス感覚などが強化されます。これにより、クリーンアンドジャークは筋トレばかりでなく、体幹トレーニングにもなるのです。
(僧帽筋の鍛え方ついては以下の記事も参考にしてみてください)
僧帽筋の鍛え方!自重〜器具使用の筋トレメニュー&背中をデカくするコツを解説
出典: Slope[スロープ]
クリーンアンドジャークの正しいやり方
では、クリーンアンドジャークの正しいやり方を、動画を見ながら覚えていきましょう。
▼クリーンアンドジャークのやり方
①足を肩幅くらいに開いて中腰になります。
②曲げた膝の外側からバーベルを握りましょう。
③膝を伸ばします。
④③と同時にバーベルを肩まで引き上げましょう。
⑤バーベルを肩の高さで構えます。
⑥いったん態勢を整えましょう。
⑦脚力を使ってバーベルを頭上まで持ち上げます。
まずはフォームを身につけてから、初心者は5キロずつ増やしていく形でクリーンアンドジャークを10回、慣れてきたらセット数や重量を増やします。中級者の場合、10回が限度の重量を3セット行うようにしましょう。
クリーンアンドジャークのコツ&注意点
ここで、クリーンアンドジャークのコツや注意点を、場面ごとに分けて紹介していきます。
地面に置いてあるバーベルを持つ時
この時の姿勢は、背筋が丸まらないよう一直線にしましょう。頭も下げないようにします。腰が曲がったままではバーベルを持ち上げにくく、さらにはケガの恐れがあるので気を付けましょう。
腕力だけで持ち上げるのは厳禁
クリーンアンドジャークは、実際には足の力でバーベルを持ち上げます。腕で引き上げるのではなく、足でバーを跳ね上げて、バーの下を「潜る」イメージです。腕力だけで持ち上げるのは、膝や腰などを痛める原因となります。足→体幹→腕と流れるように動かすイメージを持ちましょう。
バーベルを頭上へ持ち上げる時
足は開いた状態で、バーベルを上げたら頭より少し後ろで構えるようにしましょう。持ち上げる時は、一気に行うのがコツです。ゆっくりでしか持ち上げられない時は、フォームが悪いか実力に見合わない重量の可能性があります。何が悪いのかをしっかりチェックして、正しいやり方で行いましょう。
クリーンアンドジャークができない場合の練習方法
それでは、クリーンアンドジャークができない場合の練習方法を、動画を交えて紹介します。初心者の人は、まずはここで紹介する練習をした上でクリーンアンドジャークに取り組んでください。
初心者がクリーンアンドジャークを行う場合、いきなり負荷をかけて行うのは危険です。正しいフォームを身に付けることを前提に、ウエイトを付けずにバーのみでフォーム固定の練習を反復します。足はジャンプしながら腰幅から肩幅に開く、バーは親指を中に入れて握るなど、この時点でフォームをしっかり固めてしまいましょう。
クリーンアンドジャークを自己流で行おうとしても、正しい練習方法はわからないはずです。さらに、自己判断で重量を上げていくことは、ケガにもつながりますので決して行ってはいけません。必ずウエイトリフティングの上級者である指導者が付き添うという条件のもと、正しい練習方法でトレーニングしましょう。
クリーンアンドジャークの平均重量・世界記録は?
初心者がクリーンアンドジャークで上げる重量は、自分の体重の半分とされます。体重70キロの人でしたら、当初の目標は35キロです。これが3~6か月になると体重と同じくらいまで上げられるようになりますので、その後は体重の1.5から2倍を目指しましょう。体重70キロの人だと2倍なら140キロですので、開始当初からだと4倍、プラス105キロとなります。
ところで、人はクリーンアンドジャークでどれだけの重量を上げられるのでしょうか。2004年のアテネ五輪では、イランのホセイン・レザザデ選手が世界記録を更新し、その記録はなんと263キロでした。しかも、その記録は15年以上破られていません。成人男性の3、4人分を補助なくして1人で持ち上げてしまうのは驚きです。
クリーンアンドジャークに挑戦してみよう
クリーンアンドジャークは腕力だけで行うイメージを持たれがちですが、実は全身のバネや筋肉を必要とする運動です。いろいろな部位の筋肉を鍛えられますので、多くの競技でトレーニングとして取り入れられています。
クリーンアンドジャークは、オリンピックでも行われる種目です。そして、以前は上げられなかった重量を上げた時の達成感は、他の競技では味わえません。初心者がいきなり行うには危険が伴いますが、指導者のもとでの正しい練習をすれば効果的なトレーニングとなります。同じメニューの筋トレに飽きたなら、クリーンアンドジャークを筋トレに導入しましょう!