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筋トレは血糖値を下げて糖尿病対策になる?
有酸素運動を行うと筋肉に流れる血流が増えて、ブドウ糖が細胞に取り込まれます。すると、インスリンの効果が高まって血糖値が低下することが知られています。それでは、無酸素運動に分類される筋トレは、血糖値を下げて糖尿病対策になるのでしょうか。筋トレと糖尿病の関係について、詳しく見ていきましょう。
筋トレメニューからみたい方はこちら筋トレは血糖値を下げて糖尿病対策になる理由
有酸素運動と同様に、筋トレで筋力量を増やすことにも、血糖値を下げて糖尿病を予防する効果があります。筋肉にはブドウ糖を取り込む働きがあり、人間の器官の中で最もブドウ糖を多く取り込んでいます。そのため、筋肉量が減るとブドウ糖が消費されにくくなり、血液中のブドウ糖の量が増えるのです。つまり、血糖値が上がっている状態ですね。
糖尿病と筋肉の関係を研究した論文にも、筋肉にはブドウ糖を取り込んで血糖値をコントロールする働きと、ブドウ糖をグリコーゲンとして蓄える働きがあると記載されています。
また、年齢にともなって筋力量が低下することも、糖尿病の悪化に関連します。20歳代を筋肉量のピークとして考えると、80歳代には筋肉量が30%も低下します。さらに筋肉量は糖尿病患者の方が健常者よりも低下しやすいこともわかっています。ですから筋トレで筋肉量を増やし、ブドウ糖を消費しやすくする方法が効果的なのです。
(糖尿病と筋肉の関係に関する論文は、こちらをご覧ください。)
出典:糖尿病と筋肉の関係 リハビリテーション室 理学療法士 川村 直弘
筋トレが糖尿病の対策になるその他の効果
筋トレが糖尿病の対策になるのには、筋肉量が増える以外の理由もあります。ではどのような効果があるのか、見ていきましょう。
筋トレで脂肪が減るとインスリンが効きやすくなる
筋トレが糖尿病の対策になる理由としては、脂肪が減らせる効果も挙げられます。肥満になると、筋肉中の毛細血管に存在するインスリン受容体がうまく働かなくなり、インスリンが効きにくくなります。インスリンとは、膵臓から分泌されているホルモンの名前です。インスリンには糖の利用を助ける働きがあり、血糖値をコントロールするのに役立っています。
そのため、インスリン受容体がうまく働かないと糖尿病が悪化するのです。肥満になるとインスリン受容体の働きが悪くなり、血管が広がりにくくなることでブドウ糖が取り込めなくなるというメカニズムは、東京大学大学院の門脇教授らの研究によって解明されています。
筋トレによって肥満が解消されるとインスリンの働きがよくなるので、糖尿病の改善に役立つのです。糖尿病は完治はできませんが、正常範囲内に血糖値をコントロールできれば合併症が起こる可能性を減らせます。
(東京大学大学院の門脇教授らの研究についてはこちらをご覧ください)
出典:腸内細菌による食後血糖調節機構の解明
有酸素運動と組み合わせて行うとさらに運動の効果が高まる
ハーバード大学で行われた研究によると、有酸素運動と筋トレを組み合わせて行うと、さらに糖尿病を予防する効果が高まることがわかっています。週150分以上有酸素運動と筋トレを組み合わせて行うと、糖尿病が発症するリスクが59%も低下します。毎日運動をしなければいけないわけではなく、週当たりの時間で計算しても大丈夫です。
筋トレのみを行った場合は、週150分以上取り組むとリスクが34%減ります。有酸素運動のみの場合は、52%です。有酸素運動と筋トレを組み合わせて行った方が、運動の効果が高まって糖尿病のリスクをより減らせるわけですね。
2型糖尿病予防には有酸素運動が重要だと言われています。しかし、有酸素運動は時間もかかるので、いきなり始めるのが難しいと感じる人も多く、継続できないケースもよくあります。この研究で、筋トレでも有酸素運動の代わりになる可能性があることが分かったので、有酸素運動を始めるのはハードルが高いと感じる方は、筋トレから取り組むといいですね。
週に59分以下の筋トレでも、糖尿病の発症リスクは12%減らせます。週に2回トレーニングと行う場合で1日に30分程度、週3回トレーニングを行うなら1日に20分程度のトレーニングでも効果は期待できます。筋トレをする時間が1週間に60分増えるごとに、リスクが13%減少することもわかっています。これなら、取り組みやすいと感じるのではないでしょうか。
(ハーバード大学で行われた研究についてはこちらをご覧ください)
出典:日本生活習慣病予防協会 糖尿病予防 筋力トレーニングが効果的
糖尿病改善&予防の為の筋トレ方法
糖尿病改善や予防を目的として行う場合の筋トレは、1週間に2回から3回の頻度で行うと効果的です。有酸素運動は血糖値が上がる食後のタイミングに行うと効果的ですが、筋トレも同じように空腹の食前よりは血糖値が上がりやすい食後に取り組んだ方が効果が高まります。
下半身や体幹を使うスクワット・もも上げ・つま先立ち・腹筋・背筋・椅子に座っての足上げなどの筋トレが、糖尿病の改善には特に適しています。10回から15回を1セットとして、3セットから4セット行うようにしましょう。1セットやったら、休憩を挟みます。慣れないうちは、回数やセット数を減らしても構いません。
毎回スクワットだけをするといった感じではなく、違う種類の運動を行うよう意識するとより効果的です。運動の負荷が高すぎると血糖値の上昇が起きる可能性があるので、「ややきつい」と感じる程度の負荷で、呼吸を止めないよう意識しながら取り組みましょう。
筋トレの負荷が強すぎると血糖値の上昇が起きる可能性があるのは、筋肉を支えるためにブドウ糖を筋肉に送り続ける必要があり、体が高血糖を維持しなければいけなくなるからです。たとえばボディビルダーのように激しい筋トレをすると、筋肉を支えるために体内で高血糖の状態が続くので、「ややきつい」と感じる程度の運動でとどめておく必要があるのです。
ボディビルを行う人からは、プロテインが糖尿病の原因になっているのではと不安に思う声も聞かれます。しかし、プロテインはたんぱく質で糖質ではないので、血糖値の上昇には関係ありません。筋肉を支えるために高血糖を維持することで身体に負担がかかるため、そういった誤解が生じた可能性があります。
ただしプロテインドリンクやプロテインバーには糖質が含まれていますので、大量に摂取すると血糖値の上昇につながります。
糖尿病改善&予防に最適なメニュー
糖尿病改善と予防に最適なメニューを5種類厳選してご紹介しますので、できそうなものから取り組んでみてください。
スクワット
スクワットは下半身を使う運動なので、糖尿病の改善や予防に適しています。
▼スクワットのやり方
①足を肩幅くらいに開きつま先を前に向けて立つ
②椅子に座るようなイメージを持ちながら腰を落とす
③太ももと地面が平行になったら上がる
腰を落とすときは椅子に座るようなイメージを持つと、膝に負担がかかりません。太ももが地面と平行になるまでしっかり腰を落としてから上がると、効果的です。
▼スクワットのコツ&注意点
・膝がつま先より前に出ないよう気を付ける
・膝はつま先と同じ方向に曲げる
・太ももと地面が平行になるまで腰を落とし切る
・片足だけに力をかけず両足に均等にかける
膝がつま先よりも前に出ないよう意識しながら、膝をつま先と同じ方向に曲げるとひざに負担がかかりにくくなります。腰をしっかり落とし切ることで、トレーニング効果が高まります。片足だけに力が入ると怪我の原因になるので、両足に均等に力をかけましょう。
(スクワットについては以下の記事も参考にしてみてください)
【動画集】正しいスクワットの有益情報を厳選!家で音楽で楽しめるものまで!
出典: Slope[スロープ]
スタンディングカーフレイズ
スタンディングカーフレイズは、立ったまま踵を上げる方法で行う筋トレで、ふくらはぎなどの筋肉を鍛えられます。下半身を中心としたトレーニング法なので、糖尿病の改善や予防に向いています。
▼スタンディングカーフレイズのやり方
① 足を腰幅程度に開いてまっすぐ立つ
② かかとをゆっくり上げる
③ かかとをゆっくり下ろす
やり方はこれだけです。とても簡単なので、初心者でもすぐに取り組めますね。
▼スタンディングカーフレイズのコツ&注意点
・上半身をまっすぐ保つ
・上半身も引き上げるイメージで行う
・ゆっくりと動作をする
・呼吸を止めない
上半身もしっかり引き上げてまっすぐ保つイメージでゆっくり動作をすると、筋肉に負荷がかかりやすくなり効果的です。呼吸を止めずにトレーニングをしましょう。
(初心者でも取り組める筋トレについては以下の記事も参考にしてみてください)
【筋トレ入門メニュー完全版】自宅&ジム別に初心者も簡単な鍛え方のコツを解説
出典: Slope[スロープ]
腹筋(ノーマルクランチ)
腹筋も、糖尿病の改善や予防に役立つ筋トレ法として勧められています。ノーマルクランチは上体を丸くすることで行える腹筋で、簡単に取り組めるトレーニング法です。
▼ノーマルクランチのやり方
①床に寝ころび膝を立てる
②腹筋に力を入れながら息を吐きつつ背中を持ち上げる
③息を吸いつつ背中を下ろす
息を吐きながら背中を持ち上げ、吸いながら下ろすようにしましょう。
▼ノーマルクランチのコツ&注意点
・両手は頭の後ろまたは胸の前でクロスさせる
・手で反動をつけない
・勢いをつけて起き上がらない
勢いをつけて起き上がると効果が出ないので、正しく行いましょう。
(腹筋については以下の記事も参考にしてみてください)
通常の『腹筋運動』は意味がない?効果半減NG例〜正しいやり方まで解説!
出典: Slope[スロープ]
腹筋(シットアップ)
シットアップは上体を起こして行う腹筋で、腹筋全体を鍛えることが可能です。
▼シットアップのやり方
① 床に寝ころび膝を立てる
② 手を頭の後ろまたは胸の前に置く
③ おへそを覗き込むイメージで上体を起こす
④ 上体をゆっくり戻す
上体を起こすときは、おへそを覗き込むようなイメージで行います。勢いよく体を戻すのではなく、ゆっくりと戻しましょう。
▼シットアップのコツ&注意点
・腰が反らないようにする
・背骨を丸めて行う
腰が反らないようにしながら、背骨を丸めて行います。フォームが崩れると腰に負担がかかるので、正しいフォームで取り組みましょう。
背筋(ヒップリフト)
背筋も、糖尿病の改善や予防に役立つ筋トレとして推奨されています。ヒップリフトは仰向けになってお尻を上げるだけのトレーニングなので、手軽に行えます。
▼ヒップリフトのやり方
① 床の上に仰向け寝転ぶ
② ふくらはぎが床と垂直になるように膝を立てる
③ お尻を上げて背中の下部分を浮かせる
④ ゆっくり元に戻す
③の手順では、頭と背中は床につけたままトレーニングを行いましょう。布団の上などでも取り組めるトレーニングです。
▼ヒップリフトのコツ&注意点
・ふくらはぎと地面が垂直になるよう足を置く
・ゆっくり動作を行う
足の位置が遠すぎたり近すぎたりすると効果が出ないので、ふくらはぎと床が垂直になるよう意識しましょう。
(背筋についてはこちらの記事も参考にしてみてください)
背筋の鍛え方!25種の筋トレ&コツ!自重&ダンベル・バーベル・マシン別に解説
出典: Slope[スロープ]
筋トレで糖尿病が改善された人の体験談
筋トレで糖尿病が改善された人の体験談をご紹介します。
家で行う筋トレだけで糖尿病が改善
#ダイエット #糖尿病 と、診断され、三ヶ月で、糖尿数値、#動脈硬化 数値を、正常値に戻して驚かれた私ですが、残すは、中性脂肪:fire:運動不足もあるなー。基本、家から出ないしw家でできる、ゆるい筋トレするくらい。酒呑むしなあ:sweat_drops:昨日は、一ヶ月半ぶりの、禁酒日でしたw
— @Muu. (@tO8VQWwCb7FSBzw) December 8, 2020
こちらの方はハードな筋トレを行ったわけではなく、ゆるい筋トレを行った結果3ヶ月で糖尿病の数値が改善したとのことです。筋トレには、きちんと効果があることがわかりますね。
筋トレで糖尿病など複数の病気が改善
書いていて思ったけど
— ねこ@減量計画! (@iichikonomi) December 12, 2020
DASH食と高強度筋トレで糖尿病、便秘、痔も治ったって凄くない?:joy: https://t.co/1AWTKtrZX8
プロフィールによると、こちらの方はDASH食と王城メソッドと呼ばれる筋トレで糖尿病が改善されたそうです。114kgあった体重が90kg程度になり、数値も落ち着いています。王城メソッドとは、体の部位を分割しながらトレーニングを行っていく方法で、ダンベルなどを使ったトレーニングを行います。
食事療法と筋トレで1ヶ月で糖尿病が改善
先月12日に糖尿病診断された嫁。
— ごう@猫とメンタルケア (@gougou0219) December 11, 2020
ヘモグロビンa1c7.1
一ヶ月で運動、筋トレと食事療法のみで見事7キロ減量した。
今通院終わり結果報告。
ヘモグロビンa1cが6.2まで下がっていていた。
もう跳んでいくんかってくらい褒めちりまくった。やればできる子だ。#糖尿病#筋トレ#ダイエットモチベーション
こちらは、筋トレと食事療法を組み合わせて1ヶ月で糖尿病が改善したという体験談です。わずか1ヶ月程度で結果が出せるのはすごいですね。
筋トレを習慣化して血糖値上昇を抑えて糖尿病対策に!
糖尿病予防や改善のための筋トレは、有酸素運動と組み合わせて週に150分以上行うと効果的です。そのためには、筋トレを習慣化することが重要です。筋トレを日ごろの生活の中に上手に取り入れて筋肉量を増やし、血糖値の上昇を抑えて糖尿病対策に役立てましょう。