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エキセントリックトレーニングとは?
筋トレと言えば、従来は重い物を持ち上げて筋肉に負荷をかけることにより、筋肥大を促すことが常識とされてきました。しかし、エキセントリックトレーニングは全くの逆、重い物を下ろすことで筋力が付くというものです。
筋トレでは、筋肉の長さを短くしながら収縮する「ポジティブ動作」と、筋肉の長さを伸ばしながら収縮する「ネガティブ動作」を交互に行います。エキセントリックトレーニングは、このネガティブ動作を行うことによって筋肥大や筋力増加の効果が期待できるものです。
1980年代に、関節や脊柱に対する高ストレスを避けながら筋肉に対して強度の高い筋トレを実践するため、エキセントリックトレーニングの一種であるTMRトレーニングというものが開発されました。サッカーの名門クラブであるFCバルセロナがこのTMRを取り入れるなどで今も注目を集めています。
そもそもエキセントリック収縮って何?
筋肉の活動には3つのフェーズがあります。力を発揮しながら筋肉が短縮している状態(コンセントリック)、力を発揮しながらも筋肉の長さが変わらない状態(アイソメトリック)、そして力を発揮しつつも筋肉が収縮しながら引き伸ばされている状態(エキセントリック)の3つです。
エキセントリック収縮は、運動する際の動作の変化や減速、バランスを崩した時の姿勢の抑制などで発生します。コンセントリック収縮がアクセルとすれば、エキセントリック収縮がブレーキと考えればわかりやすいでしょう。
(コンセントリック収縮については以下の記事も参考にしてみてください)
コンセントリック収縮とは?筋肉痛になりづらい?トレーニングのやり方も!
出典: Slope[スロープ]
エキセントリックトレーニングの効果
例えば5キロのダンベルを持ち上げるには、5キロ以上の物を持ち上げることのできる筋力が必要です。これが従来の筋トレで、コンセントリックトレーニングと呼びます。一方エキセントリックトレーニングでは、そこまでの筋力は必要ありません。逆にダンベルを下ろす動作がトレーニングになるからです。
エキセントリックトレーニングを行うと、少ない力でも筋力増強と筋肥大の効果を期待できます。さらに、エキセントリックトレーニングは筋トレ中の体への負荷が少なくて済むため長続きしやすく、筋肥大の効果が大きいのです。トレーニング初期の筋肉痛さえ我慢できれば、筋トレ初心者でもエキセントリックトレーニングは取り組みやすいと言えるでしょう。
エキセントリックトレーニングのメニュー&やり方
それでは、エキセントリックトレーニングのメニューを7つピックアップして、それぞれのやり方を紹介します。どの動きがネガティブ動作で、エキセントリックトレーニングになるかも見ていきましょう。筋トレにちょっと抵抗がある、筋肉痛はイヤだという人でも、器具なしで簡単にエキセントリックトレーニングを試すことができます。
プッシュアップ
▼プッシュアップのやり方
①両手を開き、指先は開いて向きは外側です。
②体をまっすぐ保ったまま胸を床に近づけます。
③そのまま太腿を床に下ろしましょう。
④楽な体勢になってから腕を伸ばし、お尻を上げて元の体勢に戻ります。
6~12回で1セットとして、1日に1~3セットを週2回程度おこなうようにしましょう。
▼プッシュアップのコツ&注意点
・両手はできれば肩幅の1.5倍に開きましょう。
プッシュアップは、大胸筋に効果があるトレーニングです。胸を床に近づけるところがネガティブ動作になります。
リバースプッシュアップ
▼リバースプッシュアップのやり方
①両手で椅子の座面の縁をつかみ、足を伸ばしてつま先を立てて浅く腰かけます。
②膝を曲げ、お尻を前にずらして宙に浮かせたら、リバース・プッシュアップを始める体勢です。
③背中を椅子から離さないで肘を曲げていきましょう。
1セット6~12回で自分が行える限界の回数を設定してください。1日に1~3セットおこない、週2回程度の頻度で繰り返しましょう。
▼リバースプッシュアップのコツ&注意点
・椅子が動いて転倒しないように気をつけてください。
・肘を曲げた後は片足を手前に引き、脚力で体を持ち上げられればなお良いでしょう。
リバースプッシュアップは、上腕三頭筋に効果があるトレーニングです。肘を曲げていく動きがネガティブ動作となります。
(リバースプッシュアップについては以下の記事も参考にしてみてください)
リバースプッシュアップのやり方!二の腕(三頭筋)に効くコツで効果UP!初心者も簡単!
出典: Slope[スロープ]
アブドミナルカール
▼アブドミナルカールのやり方
①床に仰向けになり、両膝を立てて、足を肩幅に開きます。両手は後頭部です。
②一度お尻を持ち上げて、お尻を床に落とした反動で上体を引き上げます。
③そこからゆっくり上体を床に落としましょう。
6~12回で1セットとして1~3セット行うのが効果的です。毎日やるのではなく週2回程度にしましょう。
▼アブドミナルカールのコツ&注意点
・上体を引き上げる高さは肩甲骨が床から離れる程度で十分です。勢いで持ち上げ過ぎてはいけません。
アブドミナルカールは、腹直筋を鍛えるトレーニングです。ゆっくり上体を床に落とす動きがネガティブ動作となります。
バックエクステンション
▼バックエクステンションのやり方
①床にうつ伏せになり、重ねた両手の上に顎を乗せ、爪先は床に立てます。
②腕で床をぐいっと押し、お腹を床につけたまま上体を反らしましょう。
③両手を顎の下に置いてゆっくりと上体を床に下ろします。
回数は、6~12回を目安として、慣れてきたら3セット行えるようにしましょう。
▼バックエクステンションのコツ&注意点
・動画中のモデルの両腕は宙に浮いていますが、初心者の方は腕で床をぐいっと押し、お腹を床につけたまま行いましょう。
バックエクステンションは、脊柱起立筋を鍛えます。動画では50秒辺りからです。ゆっくりと上体を床に下ろすところがネガティブ動作となります。
(バックエクステンションについては以下の記事も参考にしてみてください)
バックエクステンションの効果&やり方!姿勢が短期間で改善されるコツ&腰痛予防も!
出典: Slope[スロープ]
レッグレイズ
▼レッグレイズのやり方
①床に仰向けになり、手のひらを体の横で床につけます。
②両膝を立ててから片方の足を伸ばしてください
③伸ばした足をゆっくり下ろします。
④再び両膝を立てて、逆の足も同様に行いましょう。
左右の足それぞれ6~12回上げ下ろしします。多くても1日に3セット、2~3日間をあけて行うようにしてください。を週2回程度
▼レッグレイズのコツ&注意点
・膝の高さは左右で揃えてください。
レッグレイズは、腸腰筋に効果があるトレーニングです。伸ばした足をゆっくり下ろす動きがネガティブ動作となります。
(レッグレイズについては以下の記事も参考にしてみてください)
レッグレイズのやり方&効果!短期間で腹筋を割るコツ!自宅で簡単!
出典: Slope[スロープ]
ヒップレイズ
▼ヒップレイズのやり方
①床の上に仰向けになり、両膝は立てます。
②両足で床を押してお尻を持ち上げてください。
③片方の膝を伸ばし、3~5秒かけてゆっくりお尻を床に近づけます。
④足を変えてもう一度同じ運動をしましょう。
左右の足それぞれ6~12回で1セット、1日に1~3セットを週2回程度おこなうとよいでしょう。
▼ヒップレイズのコツ&注意点
・動画では片膝を高く上げてから下ろしていますが、筋力が付いてからにしましょう。
ヒップレイズは、大臀筋とハムストリングスに効くトレーニングです。ゆっくりお尻を床に近づけるところがネガティブ動作となります。
(ヒップレイズについては以下の記事も参考にしてみてください)
ヒップレイズの効果&やり方!ぽっこり下腹改善のコツ〜似た種目との違いまで解説!
出典: Slope[スロープ]
ニーエクステンション
▼ニーエクステンションのやり方
①まず両膝立ちをします。
②肩の高さまで両手を前に伸ばし、そのまま3~5秒かけて上体をまっすぐにしたまま後傾しましょう。
③かかとにお尻を乗せたら両手を太腿の上に置いて、上体を前傾させて元の体勢に戻ります。
自重トレーニングですので、自身の限界まで正しいフォームが行うことが大切です。目安としては6~12回で1セット、1日に1~3セットおこなえるとよいでしょう。
▼ニーエクステンションのコツ&注意点
・クッションなどの上で両膝立ちすると良いでしょう。
・動画では15秒辺りから行っていますが、初心者はあそこまで後傾する必要はありません。無理のない範囲で行ってください。
ニーエクステンションは、大腿四頭筋を鍛えるトレーニングです。後傾するところがネガティブ動作となります。
エキセントリックトレーニングのコツ&注意点
それでは、エキセントリックトレーニングのコツや注意点を紹介します。ケガや過度の筋肉痛を予防するためにも、是非覚えてください。
エキセントリックトレーニングは短い時間で大きな効果
短い時間で大きな効果を得る、忙しい現代を生きる私たちにとってこれほどありがたいことはありません。これは筋トレにも当てはまります。エキセントリックトレーニングは、1つの動作が長くて10秒程度で、これを6~12回で1セットです。1日に1~3セット行えばよく、2セット以上行う場合はインターバルを30秒~90秒おきます。
たったこれだけですので、1つの種目に10分とかかりません。しかもエキセントリックトレーニングは週2回のペースで行えばいいので、他のトレーニングと組み合わせても長くなることはなく、とても効率的です。
エキセントリックトレーニングのコツとは
エキセントリックトレーニングには欠かせないコツが2つあるので紹介しましょう。
まずは、エキセントリックトレーニングだけでは効果が薄いということです。エキセントリックトレーニングのみを行っても筋肥大にはつながらず、コンセントリックトレーニングなどと組み合わせた方が筋肥大の効果が見られるという研究結果があります。筋トレをサボらないようにするためにも、エキセントリックとコンセントリックをバランスよく行いましょう。
もう1つは、筋トレ後には十分な休養を取ることです。エキセントリックトレーニングでは筋トレ後の筋力低下が大きく、回復するまでに時間がかかります。前にも述べたとおり、エキセントリックトレーニングは週2回でも効果は十分です。休むこともトレーニングだと割り切って、エキセントリックトレーニングを適度な回数で行いましょう。
エキセントリックトレーニングによる筋肉痛を予防するには
エキセントリックトレーニングに慣れていない人がいきなり大きな負荷をかけて行うと、どうしても筋肉痛が避けられません。しかし、2回目、3回目になると起こりにくくなります。これは実験で証明されており、最大筋力の10パーセント程度の負荷で始めて徐々に上げていくと、筋肉痛が全く起こらないという結果が出ました。
他にも、トレーニングのスピードを落としたり関節の動きを小さくして筋肉をあまり伸ばさないようにすることで、筋肉痛を防ぐことができます。筋肥大のためには筋肉痛が欠かせないという考えは誤りです。筋肉痛がなくても筋肥大の効果はあるので、正しいトレーニング方法を覚えましょう。
(エキセントリックトレーニングについては以下の記事も参考にしてみてください)
エキセントリック収縮が筋肥大に効果的!筋肉痛の要因?やり方&メニューまで紹介!
出典: Slope[スロープ]
エキセントリックトレーニングは効果的
エキセントリックトレーニングは、ケガの予防につながるトレーニングです。ジャンプした後の着地や方向転換、投げる・蹴る・打つなどの動作に続くまた別の動き、バランスを崩したときの姿勢の制御などで筋肉への負担は大きくかかります。スポーツでは、こういったプレーの最中にケガをするリスクが容易には避けられません。
エキセントリックトレーニングでこれらを想定した負荷をかけることにより、筋肥大や筋力増強の効果があるのはもちろん、プレー中の予期せぬケガを予防する効果があるのです。プライオメトリクスという筋肉の瞬発力を高めるトレーニングがありますが、その中でもエキセントリックトレーニングが取り入れられています。
エキセントリックトレーニングにはこれらの効果が期待されるので、今や必須であることは間違いありません。