目次
筋トレで免疫力が上がるって本当?
筋トレと免疫力の関係は以前から注目されています。しかし「筋トレをすると風邪っぽくなる」「筋トレすると免疫が下がる」などと考えている人も多いようです。しかし、正しい方法で筋トレを行うと免疫力は上がります。今回は、健康的に筋トレを続けるためにもエビデンスに基づいて筋トレと免疫力の関係について説明していきましょう。
筋トレ後に体温が上がるのは正常?免疫力低下も?熱風との見分け方など解説
出典:Slope[スロープ]
筋トレで免疫力が上がる理由
それではさっそく筋トレによって免疫力が上がる理由を説明していきます。まずは健康維持に必要である免疫力とは一体何なのかについてです。
免疫力とは
そもそも免疫とは、ウイルスや細菌から体の健康を守るために人間が持つシステムのことです。人間の血液中には白血球という細胞があり、これらが形を変えたりあるいは物質を作ったりすることでウイルスや細菌から身体を守ってくれます。免疫力を高めるには、免疫に関わる白血球の数と活性する力が重要になるのです。
白血球とは
免疫に関わる白血球の種類にはリンパ球というものがあり、これはさらにB細胞、T細胞、NK細胞に分類できます。NK細胞は誰もが生まれた時から持つ免疫細胞で体内に侵入したウイルスや細菌を攻撃します。B細胞は病原体が侵入すると抗体を作って病原体を攻撃します。T細胞は一度侵入した病原体を記憶し、2度目以降にすばやく対応することができます。
運動による免疫細胞の増加
風邪などで菌が体内に入ってきたときには、免疫細胞が働き病原体を攻撃しますが、筋トレで免疫力があがる理由の1つ目として挙げられるのが、運動によりこれら白血球やリンパ球などといった免疫細胞が増加することです。以下の論文を一部を挙げます。
運動により血中白血球数は増加するが、この応答は運動の強度と持続時間に依存する。1時間以内の比較的短時間の運動では、運動強度に依存してリンパ球、特にナチュラルキラー(NK)細胞が増加するほか、好中球、単球、好酸球も一過性に軽度増加する。
引用元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/1/1/1_1_31/_pdf/-char/ja
このように免疫細胞が増加することで免疫力が上がるというのが、免疫力アップの1つの理由です。しかし強度が強すぎると悪影響もあり、運動強度をただ上げればよいというものでもありません。これについて詳しくは次章で説明します。
出典:日本補完代替医療学会誌 第1巻 第1号
習慣的な運動は免疫力をあげる
筋トレによって免疫力があがる理由の2つ目が、習慣的にスポーツなどの運動をすることによる免疫力への効果です。これについても論文を見てみましょう。
一つめは、運動による血液循環系の増強ということです。末梢への循環が活性化されることで免疫系による監視のシステムが強化されると考えられます。第二には、代謝系の改善により、骨髄における造血系の活性化:造血系サイトカインの産生増加がおこることです。三つ目とてしては、ストレスによる免疫抑制の解除ということが挙げられます。スポーツをするとういことによって日常的に循環系・代謝系を高めストレスを抑制することが非常に大きな意味をもっているのではと考えられます。
引用元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/58/1/58_1_13/_pdf/-char/ja
サイトカインとは、感染が起きている部分の細胞を活性させ異物除去に働く物質です。筋トレを含む運動はストレス発散効果がありますが、上記の論文によると、運動により血液循環がよくなってサイトカインが増え、ストレスによる免疫低下を抑える作用が働くことで免疫力のアップが認められ健康維持につながることがわかります。
出典:全日本鍼灸学会雑誌,2008年第58巻1号,13-31
筋トレで免疫力低下の可能性も?
ここまで、運動によって免疫細胞が増えることがわかりました。しかし、方法を間違えると逆に免疫力が低下してしまって風邪を引きやすくなったり健康に害が及ぶこともありますので注意が必要です。
トレーニング強度に注意
運動強度を上げると免疫細胞が増えますが、これはある一定の強度までの話なのです。そもそも強度の高いトレーニングは身体にとってストレスであるためコルチゾールなどのストレスホルモンを分泌し、白血球を減らして免疫力を低下させてしまうことがあります。また、急に強度を上げたりすることもストレスホルモン分泌のきっかけになります。
運動を過度にすることにより、免疫が下がって風邪症状が出てしまったという実験検討の結果を持つ論文があるのでここで引用します。
適度な運動は免疫能を高め感染や癌の予防に有効とされる一方、競技スポーツに見られる過酷なトレーニングは免疫能を弱め易感染になるとされており、(中略)激しいトレーニングを継続するスポーツ選手はURTIの頻度が一般人より3倍も高い。
引用元:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcam/1/1/1_1_31/_pdf/-char/ja
URTIとは上気道感染症のことで、喉や鼻に現れるいわゆる風邪症状のことです。この場合、主にマラソン選手や球技などのスポーツ選手が例とされていますが、体力を消耗するという点では強度の高い筋トレも同様のことが言えるでしょう。トレーニングには適度な強度が重要なのです。
筋トレのセット数・回数の最適解はコレ!目標別に成長効率を上げるコツを解説!
出典:Slope[スロープ]
運動直後は免疫低下に注意
免疫細胞の中でも特に、運動により増加するNK細胞がウイルスを攻撃する力を傷害活性と言いますが、これは運動が終了すると低下してしまうと言います。
NK細胞は濃度の増減にともなって傷害活性も変化する。つまり、運動強度が高いほど傷害活性は高くなるが、運動が終了すると速やかに低下する。有酸素運動のような強度が低い運動の場合には運動中の増加の程度低く(ただし有意ではある)、運動後の低下も小さなものである。(中略) Pedersenらはこの抑制状態を「オープンウインドウ」と称し、この時期に病原に暴露すると感染の危険性が増加するという考え方を示した。
引用元:https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/14630/1/jinbunkagakuronshu_57_37.pdf
運動強度が高いもの、つまりここでは有酸素運動に対する無酸素運動を指していますが、無酸素運動の場合のほうが運動後の免疫抑制状態が高いという内容です。筋トレ直後からしばらく、特に数時間は免疫力が低下し風邪などを引きやすいので、十分に注意して感染リスクを下げる行動をとったほうがよいでしょう。
出典:人文科学論集 第57輯(2011.3)
免疫力UP目的で筋トレを行うポイント
風邪などに負けない免疫力を高めるために大切なポイントは、適度な運動です。この理由はトレーニングと言っても筋トレの強度が強すぎると、逆に免疫力を下げてしまうからでした。それでは健康のために適度な運動とはどの程度の強度、頻度を指すのか、詳しく見ていきます。
適切なトレーニング頻度とは
免疫力を下げないためには、筋トレが身体にとってのストレスにならないようすることが必要です。そのためには、トレーニング頻度の間隔をあまりあけない方がよいでしょう。具体的には週3回以上が推奨されています。
筋トレのスケジュールの組み方!効率の高い頻度〜1週間メニュー例について解説!
出典:Slope[スロープ]
適切なトレーニング負荷とは
免疫力を高めるためのトレーニングではポイントは、何よりも高負荷になりすぎないことです。最大レベルの50~60%の軽めのトレーニングに留めるのが良いです。最も良いのは負荷がかかりやすいマシントレーニングよりも、自重トレーニングに重点を置くことです。
適切なトレーニングメニューとは
具体的なトレーニングメニューとしては、高い負荷のマシントレーニングよりも、プランクやスクワットなどの自重トレーニングがおすすめです。これらの自重トレーニングでも、やり方を正しく行うことによって筋トレの効果を上げることができます。
(自重トレーニングについては以下の記事も参考にしてみてください)
自重トレーニングメニュー20選!筋肥大・ダイエットなど目的別のコツも解説
出典:Slope[スロープ]
適切なタイミングとは
適切な筋トレのタイミングは、一般に筋トレで推奨されている時間と同じ、午後から夕方です。午前など、まだ体温が上がっておらず身体も目が覚めていない状況で筋トレを行うと、身体がトレーニングをストレスとして捉えてしまう可能性があるからです。
(筋トレの時間帯については以下の記事も参考にしてみてください)
筋トレの時間帯はいつが効果的?朝・夕方・夜?食事とのタイミングの関係についても解説
出典:Slope[スロープ]
免疫力UPの為に筋トレと同時にすべきこと
免疫力を上げるために筋トレをするのであれば、トレーニングの内容や方法だけでなく意識して行うべきことがあります。それは食事で栄養を摂取することと睡眠を十分に取ることです。免疫力を維持するためには、適度な運動・栄養・睡眠の3つのポイントがそろっていることが重要ですので、食事や栄養・睡眠についても詳しく解説していきます。
バランスのいい食事で十分な栄養を
まずは身体を作るために必要なタンパク質を食事から摂取しましょう。免疫細胞や抗体を作るにもタンパク質は重要です。タンパク質が不足すると身体のバランスを整えてくれるビタミンやミネラルなどの免疫力アップに良いとされる他の栄養素を摂取しても、うまく働かなかないこともあります。タンパク質は豆腐や納豆や乳製品、肉類、魚類に含まれます。
次に意識したいのがビタミンです。その中でもビタミンC、D、Aも免疫を高めるうえで重要とされます。ビタミンCは果物などに多く含まれ、白血球の機能を高めます。ビタミンDはきのこや牛乳、鮭などに含まれ、免疫細胞のバランスを整え骨を強くする作用もあります。ビタミンAは緑黄色野菜やうなぎに含まれ、鼻や喉の粘膜を保護してくれます。
最後に、肉類・魚類や小麦粉、海藻やトマトなど多くの食物に含まれるグルタミンも食事で摂取しましょう。グルタミンは身体に多く含まれているアミノ酸の一種で、免疫に重要な働きをします。免疫力が低下するとウイルスから身体を守るためグルタミンの必要量が増え、筋肉を分解してグルタミンに変えてしまうのです。下記引用を参考にしてください。
50%強度で持久運動を行うと、血中グルタミン濃度は、初期には若干上昇するが、その後は減少に転じ、運動後 1時間で運動前のレベルを下回り、4時間の運動後は,運動前のレベルに回復するには 5時間以上を要する。(中略)減少したグルタミンレベルでは全身の免疫機能が抑制され風邪などの感染症罹患のリスクが高くなるとともに、腸管機能も抑制され下痢などを起こす可能性もある。一方,骨格筋では,全身へのグルタミン供給が優先され,筋タンパク合成・グリコーゲン合成は抑制されてしまう。
引用元:https://www.juntendo.ac.jp/hss/albums/abm.php?f=abm00008083.pdf&n=vol3-supple_kouenyoyaku.pdf
このように、グルタミン不足だと筋肉は育ちません。食事では多くの種類の食物を摂るようにし、栄養バランスの取れた食事を心掛けてみてください。
出典:順天堂スポーツ健康科学研究 第3巻Supplement 2012年3月
十分な睡眠を
もう一つのポイントである睡眠についてです。現代人は忙しくどうしても睡眠不足になってしまいがちです。しかし睡眠中は免疫力に重要なホルモンや物質が分泌される大事な時間ですので、しっかり睡眠をとらなければなりません。睡眠時間の目安は7時間以上です。また、睡眠のゴールデンタイムと言われる22時から2時に寝ていることも重要になります。
まず、疲労回復を促し筋肥大をサポートする成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンは、傷ついた細胞をメンテナンスしてくれる役割をもちます。筋肥大が促されるのもこのホルモンのおかげです。
また、ウイルスや細菌を攻撃するのに必要な物質であるサイトカインも、睡眠中に放出されます。サイトカインが放出されると体温が上がり、熱に弱いウイルスを抑えてくれます。これらの理由から、しっかりと眠ることはウイルスや細菌に負けない体をつくるうえでとても大切なのです。
休息をとることも大切
睡眠も重要ですがトレーニング中の休息も重要です。休憩について検討した事例では、1日2回の練習の場合、6時間に比べ3時間と短い休養を取った事例では、運動時のストレスホルモンや白血球数の変動が大きくなり、易感染状態となることが明らかになっています。
これは逆に考えると、同じトレーニングの内容でも休養を取って行えば急性のストレス応答は小さいということです。免疫力を上げるための筋トレでは、しっかり休憩をとるようにしたほうが良いということがわかります。
筋トレは休息日が大切!日数〜プロテインの必要性・食事など過ごし方まで解説!
出典:Slope[スロープ]
筋トレで免疫力UPを実感した人の体験談
ここまで筋トレと免疫力の関係を見てきましたが、実際に筋トレで免疫力アップを実感できるのでしょうか?筋トレを行って免疫力が上がった、身体の調子がよくなったという人の体験談を少し見てみましょう。
1年の筋トレで生活は大きく変わる!
個人ブログ20代
それ以外の体の変化もまとめてみました。
・モリモリ食べても脂肪で太らない
・便秘改善!毎日同じ時間に出ます
・体が常に温かい
・寝つきが良い
・朝スッと起きれる
・風邪ひかなくなった(風邪を引いた旦那と一緒に寝てもうつりませんw)
・化粧ノリが良い
いや〜、やっぱ筋トレ最高です。
この方はもともとはダイエットのために筋トレを始めたそうですが、筋トレを続けることで上記のような効果を感じることができたと言います。風邪ひかなくなったというのは、免疫力がついた証拠ではないでしょうか。
スクワットで風邪知らず!
個人ブログ
効果があるのが【ランジスクワット】見た目よりかなりハードなこの運動。
これこそ、倒れそうになります・・・(笑)しかし、運動を初めて約2年、風邪をひかなくなりました・・・。
腰痛で仕事が出来無かったこともありましたが、それも無く、元気に過ごしております。
この方はスクワットをかなり2年半という長期間続けられています。やはり継続は力なりというものでしょうか。また、腰痛もなくなり健康的に過ごされています。
筋肉で風邪は治る!
筋トレしはじめて思ったのは「体の免疫力が上がったなぁ」ってのがある。
— 柾木@呉鎮守府 (@masaki_kamui) March 10, 2020
風邪をひく前兆で「鼻の奥が腫れて痛い」とか「口内環境が悪化する」ってのがあったんだけど、この前兆が来ても市販の薬飲んで一晩寝たら治ってるんだよね。
今までだと効かずに悪化してたんだけど、今は治る。
筋肉はいいぞ。
この方は、風邪のひき始めでもすぐに対処することで大きな風邪症状を伴うことなく過ごせているようです。このように、体内の免疫細胞が働きやすい環境が筋肉によって作られるのですね。
筋トレで風邪を引かない身体へ
午前中は子供たちを遊ばせるために公園へ。
— はなわはりきゅう整骨院 (@HanawaSeikotsu) April 16, 2020
その間にわたしは筋トレ。週3〜5で筋トレ始めて2年が経ち変わった事は風邪をほとんど引かなくなったってこと。
自粛要請が出ているジムは休館中なので野外筋トレ頑張ってます。#筋トレで免疫力アップ#出張マッサージ#出張整体#出張鍼灸 pic.twitter.com/YWWD8TaOkX
この方も子育ての間でもコツコツと筋トレを行い、風邪をひかなくなったとのことです。子供は風邪を引きやすく親は風邪をもらうことも多いですが、それがないのは免疫力が上がっていることがわかります。
気づきにくいところでも効果は出ている
フォロワーさんと話してて気づいたけど、私この1年間(3歳児と一緒に暮らしてるのに)風邪を一切ひいてない!笑 ということは、筋トレして 知らず知らずのうちに体力が安定して免疫力も上がったということ…?思ったより筋トレの効果出てるのかも:thinking:
— satomi_body make (@st_bodymake) August 27, 2019
この方のようになかなか免疫力アップの効果に気づきにくい人もいるようです。免疫力に関しては「そういえば最近風邪ひいていないな」と改めて気づくものですので、他の方も数年単位で効果について述べているのはそのためかもしれません。しかし実際に効果はあるということがわかります。
筋トレを習慣にして免疫力をつけよう!
論文などのエビデンスに基づいて、筋トレと免疫力の関係を解説してきました。筋トレに特化した論文は少ないですが、免疫力の向上には身体に負荷を与えすぎない適度な運動と、栄養や睡眠をしっかりとることが重要です。正しくトレーニングを行って、コロナウイルスをはじめとするウイルスや細菌に負けない身体づくりをしてみてください。