肩甲下筋の構造・作用
肩甲下筋は、肩甲骨にあるローテーターカフ(回旋筋腱板)という筋肉群に部類されます。肩甲下筋は脇の後ろに位置し、ローテーターカフは肩甲下筋のほかにも小円筋・棘上筋・棘下筋といったあらゆる筋肉で構成されているのです。
肩甲下筋は肩関節の動作をサポートし、伸展動作(腕を後ろに降ろす)・内旋動作(腕を内側に反らす)・内転動作(腕を下に降ろす)に必要な筋肉となります。そのため柔軟体操をするときや、ボールを投げる・物を振る動作を行うスポーツなど発揮される場面が多い筋肉なのです。
(ローテーターカフの筋トレについては以下の記事も参考にしてみてください)
ローテーターカフ(回旋筋腱板)の筋トレ!構造・作用〜鍛え方のコツまで解説
出典:Slope[スロープ]
肩甲下筋のストレッチ・筋トレをするメリット
肩回りの痛みのだるさを解消【肩甲下筋のストレッチ・筋トレをするメリット】
肩甲下筋を鍛えると、肩回りの痛みやだるさを解消することができます。肩関節と上腕骨頭の間が強化されて、肩関節に連なる怪我をする可能性が低くなります。
運動能力が向上する【肩甲下筋のストレッチ・筋トレをするメリット】
肩甲下筋を鍛えると運動能力を向上させることができます。肩甲下筋は「肩甲下筋の構造・作用」で説明したとおり、腕を動かす際に必要な筋肉です。そのため肩甲下筋を鍛えると、腕を振る動作が強化されます。上半身を使うスポーツ(野球、テニス、バレーボールなど)では特に重要な筋肉です。
肩甲下筋のストレッチメニュー
ストレッチを行うことで肩甲下筋を伸ばし柔軟性を高めることができます。肩甲下筋を鍛えるストレッチメニューは簡単に行えるものが多いので、自宅でも気軽に行えるでしょう。間違ったやり方で行うと筋肉を痛めてしまうので、しっかりと正しいフォームをマスターすることが重要です。
捻りストレッチ【肩甲下筋のストレッチメニュー】
捻りストレッチは、緩やかに捻る柔軟体操です。効率的にローテーターカフを含む肩関節付近の筋肉へ負荷を掛けることが可能です。捻りストレッチは単純そうに見えますが、正しい動作を意識することが難しい体操です。体操に馴染むまでは鏡を見ながらチェックをして取り組んでいきましょう。
▼捻りストレッチのやり方
①テーブルの横側に座る
②肩より後ろに肘を固定する
③小指側に手を緩やかに回転させる(痛みが出ない程度)
④馴染んできたら、前後に腕を振る
捻りストレッチの基準は左右5回程度ずつ行いましょう。
▼捻りストレッチのコツ&注意点
・手を上下に動かさない
・前のめりの姿勢にならない
・呼吸は一定のスピードで行う
・筋肉を柔軟に捻る様にストレッチを行う
・肩周辺の筋肉達に負荷が掛かっているのを気にしながら行う
肩甲下筋の捻りストレッチでは手を緩やかに捻ることが重要で、腕を捻るストレッチではありません。正しいフォームで肩甲下筋をしっかりとほぐしていきましょう。
福田翔馬パーソナルトレーナー
肩甲下筋が固い人は、この捻りを肘の動きで出しがちです。肩の筋肉のストレッチなので、しっかり肩を動かす意識を持ちましょう。
腿挟みストレッチ【肩甲下筋のストレッチメニュー】
腿挟みストレッチは、ローテーターカフ・肩関節周辺の筋肉へ均等に刺激を入れることができる体操です。椅子に座りながらストレッチできるので、外出先や仕事の合間などの隙間時間に行えます。
▼腿挟みストレッチのやり方
①椅子に腰をかけて座る(あぐらもOK)
②足は肩幅分ほど広げる
③右腕で左足の腿の外側を掴み、体を反対に倒して引っ張り合う
④30秒間維持する
⑤左腕も行う
腿挟みストレッチでは両側を30秒ごと行いましょう。肩の周辺にある筋肉に刺激が伝わっているのを感じながら、ゆっくり呼吸をしてください。
▼腿挟みストレッチのコツ&注意点
・呼吸を安定させる
・肩甲骨と背骨の間が伸びているのを感じながら行う
・必要な肩以外は動かさない
肩甲下筋の腿挟みストレッチでは、肩甲下筋だけでなくローテーターカフ全体的に刺激できます。肩関節周辺をほぐして柔軟な体を手に入れましょう。
福田翔馬パーソナルトレーナー
体を捻るときに太ももを持つ手に力が入りすぎると、ストレッチ効果が弱くなります。指を引っ掛ける程度にして、肩甲骨から体を捻るようにしましょう。
肘寄せストレッチ【肩甲下筋のストレッチメニュー】
肘寄せストレッチは、内転動作によって肩甲下筋やローテーターカフを伸ばしていく柔軟体操です。学校の体育の授業で取り組まれている肘の体操なため、多くの方々が馴染み深いでしょう。肘寄せストレッチも合間にできる体操なので、ぜひトライしてみてください。
▼肘寄せストレッチのやり方
①右腕を横に出して、左腕で肘よりも肩側にクロスする
②胸を張って引き寄せる
③右手のひらを上に向けて捻る(下には回さない)
④深呼吸を3回繰り返す
⑤左右交互に行う
肘寄せストレッチでは1日左右3回ずつ×3セット行いましょう。朝・昼・夜に行うことがおすすめです。
▼肘寄せストレッチのコツ&注意点
・目線は真正面を向く
・安定した呼吸を継続させる
・痛みの出ない範囲で行う
・腕が地面と平行になるようにする
肘寄せストレッチでは無理をせずに、痛みを我慢しないようにしてください。正しいフォームを意識して肩甲下筋をほぐしていきましょう。
福田翔馬パーソナルトレーナー
肘を寄せるときに体ごと動いてしまうと、肩のストレッチになりません。体は固定して、腕だけ動かすようにしましょう。
ストレッチポール【肩甲下筋のストレッチメニュー】
ストレッチポールを用いて体操をすることで肩甲下筋の柔軟性を高めることができます。肩や首のこりや張り・巻き肩なども解消するツボを刺激できるストレッチメニューです。
▼ストレッチポールのやり方
①ストレッチポールを縦に置く
②ストレッチポールの上に仰向きで寝る
③腕に力を入れずに両手を地面に接地させて、ぐるぐる円を描く様に回す
円を描く動作を30秒間程続けましょう。途中で反対回りの円を描くのも効果的です。
▼ストレッチポールのコツ&注意点
・肘を床につけて、浮かないようにする
・肩甲骨がゴリゴリ動いているのを感じながら行う
しっかりと肩甲骨が動いていることを実感することができれば、肩甲下筋をほぐせている証拠となります。
福田翔馬パーソナルトレーナー
胸を張って腕を動かすことで、肩甲下筋へのストレッチ効果が高まります。その時、腰を反る方が多いので注意しましょう。
(フォームローラーとストレッチボールとの違いについては以下の記事も参考にしてみてください)
フォームローラー・ストレッチポールの違いは?効果〜使い方の違いまで解説!
出典:Slope[スロープ]
肩甲下筋のトレーニングメニュー
①ダンベル・エクスターナルローテーション【肩甲下筋のトレーニング&鍛え方のコツ】
ダンベルを使ったトレーニングで肩関節を外旋させる部位に負荷を与え、肩甲下筋も鍛えることができます。フォームを意識してトレーニングに取り組みましょう。肩甲下筋をしっかりと強化し、巻き肩や前肩などの姿勢も改善できます。
▼ダンベル・エクスターナルローテーションのやり方
①横に寝そべる
②上側の肘を身体の横から少し斜め前に出した位置へ動かして、固定する
③肘を90度に反らした状況のまま、ダンベルを握り、前腕を上下に動かす
④-45度から45度の角度で、前腕を可動させる
筋力アップは1~6回、筋肥大は6~12回、筋持久力アップは15回~で限界がくる重量を用いて行いましょう。トレーニングに慣れていない方は週1回3セット、上級者の方は週2回6セット程度がベストです。
疲労した筋肉が回復するには48時間~72時間必要なので、毎日の筋トレは行いようにしましょう。無理をせずに行うことが大切です。
▼ダンベル・エクスターナルローテーションのコツ&注意点
・肘の位置を固定する
ダンベルを使ったトレーニングで肩関節を外旋させる部位に負荷を与え、肩甲下筋も鍛えることができます。フォームを意識してトレーニングに取り組みましょう。
ずーみー(泉風雅)
肘の位置は身体の真横から少しだけナナメ前に出した位置で固定します。身体と肘の間にタオルなどを噛ませてもいいかもしれません。ダンベルでも同様に肘の位置を固定したまま肘は90度に曲げて動作を行います。負荷のかかり方は違いますが、動作はチューブで行うものと同じです。
(詳しく見たい方はこちら)
エクスターナルローテーションの効果&やり方!ダンベル・チューブ別のコツを底解説
出典:Slope[スロープ]
②エクスターナルローテーション(チューブ)【肩甲下筋のトレーニング&鍛え方のコツ】
チューブを使ったインターナルローテーションはプロ野球選手も実践しているトレーニングメニューです。とてもシンプルな動作ですが、ローテーターカフ全体を効率よく鍛えられます。
▼チューブを用いたエクスターナルローテーションのやり方
①チューブを固定された箇所に結びつける
(肘くらいの高さ)
②身体の真横から少しだけ前側、かつ外側に移動させた所で固定する
(肘は90度に反らす)
③チューブを握り、刺激がくるところまで動かしていく
④前腕を直線な状態から-45度から45度の角度で左右に移動させる
基本的には15回~30回行いましょう。筋力アップは1~6回、筋肥大は6~12回、筋持久力アップは15回~で限界がくる重量を用いて行ってください。筋トレ初心者の方は週1回3セット、上級者の方は週2回6セット程度がおすすめです。
上級者のなかには毎日筋トレを行っている方もいますが、筋肉が疲労しているときに筋トレをしても逆に筋肉が落ちることもあるので注意してください。基本的には週3回以上の筋トレは避けましょう。
▼チューブを用いたエクスターナルローテーションのコツ&注意点
・体のブレを極力少なくする
・肘の位置を固定する
・高回数を意識する
正しいフォームを意識してローテーターカフを鍛えていきましょう。
ずーみー(泉風雅)
負荷が大きすぎるとフォームが乱れ、アウターの三角筋などを使ってしまう傾向にあります。しっかりとインナーマッスルであるを狙うには高数回行いましょう。
③ダンベルフライ【肩甲下筋のトレーニング&鍛え方のコツ】
ダンベルフライは別名チェストフライとも呼ばれています。大胸筋を刺激しながら肩甲骨を動かす動きがあるため、ローテーターカフが鍛えられます。
▼ダンベルフライのやり方
①ダンベルを両手に持って仰向けに寝そべる
②ダンベルを向き合わせ、持ち上げる
(八の字型でもOK)
③肩甲骨を寄せながらダンベルを身体の真横へ緩やかに降ろしていく
筋力アップが目標の場合は1~6回、筋肉を大きくする目標の場合は6~12回、筋持久力アップは15回以上を限界が来る重量で行いましょう。
初心者は週1回約3セット、上級者は週2回約6セットが目安です。筋トレで疲労した筋肉は48時間~72時間で回復するので、毎日の筋トレは逆に筋肉の質が下がってしまうので避けてください。
▼ダンベルフライのコツ&注意点
・ダンベルは強く握りすぎない
・しっかりと肩甲骨を寄せて胸を張る
・ダンベルを下ろす時は肘を少し曲げる
・肘を伸ばしながらダンベルを降ろさない
・動作中は息を止め、ダンベルを上げきったところで息をする
ダンベルを降ろす際に肘を真っ直ぐにしていると、怪我のリスクが高まるので注意してください。ベンチプレス系は慣れていないと肩を痛めることもあるので、まずは軽量のダンベルで始めてみましょう。
ずーみー(泉風雅)
三角筋が疲れてしまわないようにするコツとしてはしっかりと大胸筋を動員するために鎖骨の中心から胸を開くように肩甲骨を寄せ、体幹の横アーチを意識することが重要です。
(詳しく見たい方はこちら)
ダンベルフライのやり方!大胸筋に効かせるフォーム〜重量・回数など効果UPのコツを解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
④手首持ち上げトレーニング【肩甲下筋のトレーニング&鍛え方のコツ】
手首持ち上げトレーニングは腕を後ろに回すことで肩甲下筋を強化することができます。筋トレ器具を必要としないので、自宅でも簡単に取り組めることがメリットです。
▼手首持ち上げトレーニングのやり方
①背中に右手を回す
②反対の手で右手首を抑える
(手のひらは下に向ける)
③肘が反る程度に上へ引っ張る
④静止する
⑤左腕も行う
手首持ち上げトレーニングの目安は10秒を1回として、10回×1セット程行いましょう。
▼手首持ち上げトレーニングのコツ&注意点
・肘を曲げすぎない
・力を入れすぎない
・腕は背中の真ん中付近まで持って行く
肩の前側、肩甲骨周辺が浮いてくるイメージを持って行うとより効果的です。このトレーニングを行うことで疲労による肩甲下筋の痛みを改善し、きちんと強化することができます。
⑤ダンベルを使った簡易トレーニング【肩甲下筋のトレーニング&鍛え方のコツ】
ダンベルを使った簡易トレーニングをご紹介します。肩甲下筋は上腕三頭筋と連携しているため、ボールを投げるスポーツでは安定した肩のコントロールを手に入れることができるでしょう。
▼ダンベルを使った簡易トレーニングのやり方
①片手にダンベルを持ちながら仰向けになる
②野球ボールを投げるような位置にダンベルを持ってくる
③逆の手で肩甲骨と肋骨の中(脇の下付近)に指を入れて押さえる
④肩を内側に反るようにする
⑤反対の手も行う
左右それぞれ15回を行ってください。3~5セット程度行うことを目安にしましょう。
▼ダンベルを使った簡易トレーニングのコツ&注意点
・脇の下(肩甲骨と肋骨の中)にグッと指を入れる様に押さえる
・肩を反る時は、脇の下にある筋肉が動いているかを感じながら行う
肩を捻って痛めている方は、しっかりと脇の下を押さえた状態で行いましょう。
(肩を鍛えられるアップライトロウのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
アップライトロウのやり方!三角筋・僧帽筋に効く肩をデカくするコツ!ダンベル・ケトルベル版など
出典:Slope[スロープ]
肩甲下筋を鍛えて肩回りを柔軟にしよう
肩甲下筋はあまり聞きなれない筋肉部位ですが、鍛えることで肩関節を柔軟にすることができるのです。肩甲下筋はローテーターカフのなかでもかなり主要な筋肉部位であり、肩甲下筋を強化することで運動能力アップへと繋がります。
肩甲下筋は疲労しやすいので、日頃からストレッチで柔軟性をキープすることをおすすめします。筋トレで肩甲下筋に刺激を加えて、肩回りの痛みやだるさの解消に努めていきましょう。