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クイックリフトとは?
ウエイトリフティングでも行われるクイックリフトは、『スナッチ』『クリーン』『ジャーク』と呼ばれる3つの種目の総称です。爆発的な加速を伴いながら重いバーベルを持ち上げることにより、瞬発力を高めるなどのさまざまな効果を得られます。
さらに、バーベルの他にダンベルやケトルベルでもクイックリフトを行うことができ、自宅トレーニングにも最適でスポーツ選手を筆頭に人気の種目です。それでは、クイックリフトで得られる効果や、トレーニングのやり方を具体的に確認しましょう。
クイックリフトで得られる効果
クイックリフトによるトレーニングを行うと、筋肉を鍛える目的を持つ一般的な筋トレだけではつきにくい瞬発力が身につき、パワーを高めるなどのさまざまな効果を得られます。では、どのような効果が期待できるのか、具体的にご紹介します。
パワーを高める効果
クイックリフトには、パワーを高める効果があります。発揮できるパワーを求める公式は【筋力×速さ速】です。つまり、筋肉を鍛えて筋力を高めることができても、速さが低い状態だと高いパワーが発揮できません。筋肉の強さと速さをどちらも合わせて高めることがパワーを高めるためのコツなので、瞬発力を高めるクイックリフトを取り入れる方法が効果的です。
格闘技も含めたさまざまな種類の競技で、高いパワーが必要とされます。そのため、筋肉の強化と合わせてクイックリフトを筋トレに取り入れてパワーを高めることによって、さまざまな競技のパフォーマンス向上が期待できます。
下肢の瞬発力を高める効果
クイックリフトは下半身の筋肉の力を使って重いバーベルを素早く上げる筋トレの種目なので、下肢の瞬発力やパワーを高める効果を得ることができます。さらに、クイックリフトを行う際のスピードや動きは、競技の中で行われる方向転換・ジャンプなどの動きに似ています。そのためクイックリフトは、ダッシュ力やジャンプ力を高めるのにも効果的なのです。
フォーム解説から見たい人はこちら怪我に強い体作りにも役立つ
クイックリフトでは落ちてくるバーベルを受け止めるので、バランス能力・柔軟性が高まります。バーベルをまっすぐ受け止めるために、体幹も鍛えられます。それらの効果で、怪我をしにくい体ができあがります。クイックリフトは着地の際の衝撃が小さく抑えられるので、体に負担がかかりにくい点でも怪我をしにくい筋トレの方法だと言えます。
複数の種類のトレーニングが不要で効率的
クイックリフトでは、パワーを高めるなどのさまざまな効果が得られるので、複数の種類のトレーニングが不要で効率的なトレーニングが行えます。多くの効果を得るなら、通常はそれぞれの効果が得られるトレーニングを複数行わなければいけませんが、クイックリフトを取り入れれば複数の効果を一つのトレーニングで身につけられます。
さらにクイックリフトは3回から5回のトレーニング回数で十分なので、長い時間をかけなくてもトレーニングできる種目でもあります。クイックリフトを取り入れることで短時間で効果的なトレーニングができるため、さらに別のトレーニングをする余裕も持てます。その結果、効率的に競技パフォーマンスを高めることも可能です。
長生きにも役立つ
ヨーロッパで行われた研究では、瞬間的に発揮できる筋肉の力が高い人(パワーが高い人)の方が長生きするという結果が出ています。それによって、筋肉の大きさよりもパワーが重要だと確認されています。従来の筋トレでは筋肉の大きさが重視されてきましたが、クイックリフトで瞬発力を鍛えてパワーを高めると、長生きにもつながります。
クイックリフトの種類&やり方【①スナッチ】
クイックリフトの種類の一つであるスナッチは、高い位置までバーベルを挙上するトレーニング方法です。バーベルを頭上まで上げるので、瞬発力や爆発力の向上が期待できます。重量設定に注意しながら、トレーニングを行いましょう。
▼スナッチのやり方
①足を腰幅より少し広く開く
②バーベルを握る位置を決める
③フックグリップでバーベルを握る
④頭上に向かってバーベルを一気に持ち上げる
⑤胸を張ってひじを伸ばす
スナッチでは、バーベルを広く握ります。目安は、バーベルを持ち上げて腕を下ろしたときにポケットの上あたりにバーベルが来る位置です。フックグリップとは、親指を中に入れてほかの指を重ねる握り方です。
▼スナッチのコツ&注意点
・最初はハイハングから始める
・ハイハングでバーベルを上げる感覚をつかむ
・腕で上げるのではなく足の勢いで押し上げる
・バーベルの下にもぐるイメージで
・バーベルを真上に上げる
床からバーベルを持ち上げる時に姿勢が崩れやすいので、最初はハイハング(ポケットくらいの位置)から練習を始めて、頭上にバーベルを上げる感覚をつかむことがポイントです。慣れてきたら、だんだんバーを下げて練習しましょう。バーベルは、腕の力ではなく足の勢いで押し上げます。押し上げたら、バーベルの下にもぐるイメージでキャッチしましょう。
(スナッチの効果&やり方については以下の記事も参考にしてみてください)
スナッチの効果&やり方!全身に効くフォームのコツを種類別に!ダンベル・ケトルベルなど
出典:Slope[スロープ]
クイックリフトの種類&やり方【②クリーン】
クリーンには、ハイクリーン(パワークリーン)・クリーン・ハングクリーンの3種類のトレーニング方法があります。そこで、それぞれのやり方をご紹介します。
ハイクリーン(パワークリーン)
ハイクリーン(パワークリーン)は床からバーベルを持ち上げ、しゃがみ込むのではなく肩の位置でバーベルをキャッチする方法です。クリーンと比べて高い位置でバーベルを受け止めるので、ハイ(high)という名称がついています。通常のクリーンよりも難易度が低いので、慣れていない人でも試しやすいことが特徴です。
▼ハイクリーン(パワークリーン)のやり方
① 足は腰幅に開く
② グリップは肩幅より少し広めに
③ フックグリップでバーベルを握る
④ デッドリフトより少しお尻を下げる
⑤ 背中をそらすような意識で胸を張り顎を上げる
⑥ 足裏でしっかり踏む
⑦ スクワットのような意識でまっすぐ上げる
⑧ ひざ下→ひざの上→ポケット部分へと上げる
⑨ ポケット部分まできたらジャンピングに入る
⑩ 足を肩幅に広げながら肩の位置でキャッチ
フックグリップは、親指を中に入れほかの指を巻き付ける握り方です。バーベルはひざ下(ローハング)→ひざの上(ハング)→ポケット部分(ハイハング)の順に持ち上げますが、ハング後に上体を起こしてハイハングへ移行するとスムーズです。この時、ひざは少し曲げ、背中はまっすぐ起きている状態にしましょう。バーベルをキャッチする位置は肩のあたりです。
▼ハイクリーン(パワークリーン)のコツ&注意点
・必ずフックグリップで行う
・正しい姿勢で行う
・バーベルを上げる時に腰を先に上げない
・バーベルをキャッチするときに足を広げ過ぎない
・バーベルをキャッチするときは肩に乗せる
・バーベルをキャッチする時はひじを引く
正しく握り正しい姿勢で行うと、背中に力が入るので効果的です。バーベルを上げる時に腰を先に上げると、バーベルが振られて筋トレの効果が正しく得られません。バーベルをキャッチするときは、足を肩幅程度に広げます。足を広げ過ぎるとひざを痛める原因になりますしフォームも崩れます。キャッチする時は肩にバーベルをしっかり乗せ、ひじを高く上げましょう。
(パワークリーンのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
パワークリーン(ハイクリーン)の効果&やり方!できない人向けの練習方法も解説
出典:Slope[スロープ]
クリーン
クリーンは床からバーベルを持ち上げ、バーベルをキャッチするときにしゃがみ込むことが特徴です。バーベルをあまり高く上げないので、重量を重くできます。ただしキャッチするときにしゃがみ込むため、難易度の高い方法です。
▼クリーンのやり方
① 手順⑨まではハイクリーンと同じ
② しゃがみ込みながらバーベルをキャッチする
バーベルをキャッチする時は、足を少し開きます。バーの下に潜り込むようなイメージで行いましょう。
▼クリーンのコツ&注意点
・しゃがむときはバーベルをまっすぐにする
・足をしっかり使う
バーベルを上げるまでの注意点は、クリーンと同じです。しゃがむときにバーベルをまっすぐして足をしっかり使うと、力が入ってバーベルを支えやすくなります。
ハングクリーン
ハングクリーンは床からではなく、バーベルを膝の上まで持ち上げてから始めます。クリーンよりもやりやすいため、初心者に向いています。クリーンは床から引き上げる動作が難しく、きちんとできないとトレーニング効果がうまく得られない場合もあります。瞬発力を高める目的であれば、ハングクリーンだけでも効果が期待できます。
▼ハングクリーンのやり方
① 足は腰幅に開く
② フックグリップでバーベルを握る
③ 一度バーベルを腰くらいまで持ち上げる
④ すねの中くらいまで下ろす
⑤ そこからバーベルを引き上げてキャッチ
足の裏をしっかり床につけ、足を腰幅から肩幅程度に開きます。ひざとつま先をやや外側に向けるようにしましょう。持ち上げたバーベルを少し下ろして、そこから一気に引き上げてキャッチします。
▼ハングクリーンのコツ&注意点
・背筋を伸ばして体をまっすぐにする
・バーベルを少し下ろすときに背中を丸めない
・肩の位置は股関節より下げない
・バーベルを上げる時は地面をしっかり踏む
バーベルを持ち上げる時は、背筋をしっかり伸ばします。バーベルを下ろすときに背中が丸くなると、筋肉がうまく使えません。背中がまっすぐなるよう意識し、肩の位置を股関節より下げないようにしましょう。地面をしっかり踏んでバーベルを押し上げます。
クイックリフトの種類&やり方【③ジャーク】
ジャークは、肩まで持ち上げて静止させたバーベルを、足を前後に開く動作と共に頭上に持ち上げる動きのことです。競技の場合は、クリーンと組み合わせて行われます。では、ジャークのやり方を詳しく見ていきましょう。
▼ジャークのやり方
① バーベルを肩まで持ち上げ静止させる
② 上体をまっすぐにしたまま少し膝を曲げる
③ 勢いよく足を伸ばす
④ その勢いでバーベルを頭上に押し上げる
⑤ 腕を伸ばしてバーベルをキャッチする
足を前後に開いて押し上げる、スプリットポジションと呼ばれる方法もあります。どちらの足を前に出せばいいかわからない場合、バーベルなしで両方やってみて、やりやすい方で練習しましょう。
▼ジャークのコツ&注意点
・上半身はまっすぐ
・ひじを下げない
・腕ではなく足の勢いでバーベルを押し上げる
・バーベルの下に素早く潜り込む
足首と骨盤、そしてバーベルが一直線上にあるイメージで行うと、姿勢がきれいに保てます。ひじが下がると、バーベルが鎖骨から滑り落ちてしまいます。腕の力ではなく、足の力でバーベルを押し上げましょう。
クイックリフトの種類&やり方【④クリーン&ジャーク】
クリーン&ジャークは、クリーンとジャークを合わせた方法です。ウェイトリフティングの公式種目でもあります。それでは、やり方をご紹介します。
▼クリーン&ジャークのやり方
①クリーンのポジションを取る
②少し膝を曲げる
③素早く頭上にバーベルを上げる
④ひじをまっすぐ伸ばしてバーベルを固定する
バーベルを頭上に上げる時には、足を前後に開きます。
▼クリーン&ジャークのコツ&注意点
・下半身の力を使ってバーベルを持ち上げる
・しっかり地面をける
クリーンもジャークも、腕の力でバーベルを持ち上げとうまく力が伝わりません。しっかり地面をけって、下半身の力を使ってバーベルを上げましょう。
(クリーンアンドジャークについては以下の記事も参考にしてみてください)
クリーンアンドジャークとは?スナッチとの違いは?効果・やり方まで解説!
出典:Slope[スロープ]
クイックリフトはダンベル・ケトルベルでも出来る
クイックリフトをダンベルやケトルベルを使って行う方法も、見てみましょう。この筋トレなら、自宅でも行いやすいですね。
ダンベルスナッチ
ダンベルスナッチはシンプルな動作で行えるので、効率よくトレーニングができます。使用するダンベルは1つです。
▼ダンベルスナッチのやり方
①ダンベルを足の間に置く
②片手でダンベル持って一気に頭上まで上げる
③ダンベルを床に下ろす
③手を交互に替えながら続ける
ダンベルを床に下ろすときは、ダンベルの両側を床につけましょう。床に下ろした時点で手を替える方法が簡単です。床で手を替えるとスピードが落ちるので、頭の上で手を替える方法もあります。大会に出る目的でダンベルスナッチを行っている場合、大会のルールで頭上で持ち替えられない場合もありますが、トレーニング目的であれば頭上で持ち替えて構いません。
▼ダンベルスナッチのコツ&注意点
・手をまっすぐに上げる
・反対の手で補助しない
手が外に逃げないように、一直線を意識して手をまっすぐに上げます。空いている手で補助すると、効率的に筋肉を鍛えることができません。ダンベルを持たない側の手は、フリーな状態にしておきましょう。
(ダンベルスナッチのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
ダンベルスナッチのやり方!両手・片手別!バーベルに無いメリットまで解説!
出典:Slope[スロープ]
ダンベルハングクリーン
ダンベルハングクリーンは簡単にできるうえに、瞬発力の強化に役立ちます。使用するダンベルは2つで、両手に持って行います。
▼ダンベルハングクリーンのやり方
①足を肩幅程度に開きつま先を少し外に向けて立つ
②体を折り曲げる
③体を一気に伸ばしダンベルを押し上げる
③ダンベルの下にひじを入れる
体を折り曲げる時は、股関節から曲げます。持ち上げた後は、ダンベルを肩に担いだような感じになります。ダンベルを押し上げた後、下にひじを入れるイメージで行いましょう。
▼ダンベルスナッチのコツ&注意点
・お腹を意識する
・親指を巻き付けてダンベルをしっかり握る
・背筋を伸ばして行う
お腹を意識しながらトレーニングをすると、姿勢が安定して効果が高まります。しっかりダンベルを持ち、背筋を伸ばしてトレーニングをすることがコツです。
(ダンベルクリーンのやり方はこちらも参考にしてみてください)
ダンベルクリーンのやり方!種類〜バーベルにないメリットも!家での筋トレに最適!
出典:Slope[スロープ]
ケトルベルスイング
ケトルベルスイングは、床をしっかり踏みしめる感覚をつかむために効果的なトレーニング方法です。床を蹴る感覚をつかむことで、パフォーマンスアップが目指せます。
▼ケトルベルスイングのやり方
① 足を肩幅くらいに開く
② 体から少し離れたところにケトルベルを置く
③ お辞儀をするイメージで足のつけ根から曲げる
④ 両手でケトルベルを持つ
⑤ ケトルベルを両足の間にくぐらせる
⑥ ケトルベルを前に出す
⑦ 繰り返す
ケトルベルを前に出すときに、息を吐きながら前にお尻を一気に突き出します。
▼ケトルベルスイングのコツ&注意点
・背中をまっすぐにする
・手の力ではなくお尻の力でケトルベルを前に出す
背中を曲げずに自然にS字カーブができている状態をイメージしながら、トレーニングをするのがコツです。背中だけを曲げると、怪我のもとになります。手の力を使うのではなく、お尻の力を使いましょう。
(ダンベルを使ったダンベルスイングのやり方はこちらも参考にしてみてください)
ダンベルスイングの効果&やり方!全身強化できて有酸素運動にもなり最強!
出典: Slope[スロープ]
ケトルベルスナッチ
ケトルベルスナッチは、ケトルベルスイングを発展させたトレーニング方法です。正しく行うことで、さまざまな筋力を向上させる効果が期待できます。
▼ケトルベルスナッチのやり方
①ケトルベルから1歩下がる
②片手でケトルベルを持つ
③ ケトルベルを足の間から後ろにスイングする
④ケトルベルを上に振り上げる
手が肩よりも後ろに行かないよう、真上に持ち上げるようにしましょう。
▼ケトルベルスナッチのコツ&注意点
・ケトルベルを上に上げたときひじを伸ばす
・背中を丸めない
ケトルベルを振り上げたときにひじが伸びていないと、ケトルベルが落ちてきて怪我の原因になります。背中をまっすぐ伸ばしてトレーニングをしましょう。
クイックリフトを取り入れて身体能力を向上しよう
クイックリフトは瞬発力を高める効果を持った種目で、パワーを高めるために役立ち、競技パフォーマンスの向上にもつながります。バーベルを使ったトレーニングが難しい場合は、ダンベルやケトルベルでも代用できます。自分に合った方法でクイックリフトを筋トレに取り入れて、ぜひ身体能力を向上しましょう。