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筋トレの『ネガティブ』『ポジティブ』の意味とは?効果〜やり方まで解説

2021年05月17日

今回は筋トレでよく聞く「ネガティブ」と「ポジティブ」の言葉の意味からその効果、また懸垂などでのやり方なども解説します。ネガティブを意識した筋トレは筋肉痛になりやすいだけで意味ないと言われるので、本当の答えが気になる方などはぜひチェックしてみてください。

【監修】パーソナルトレーナー Riku

法政大学スポーツ健康学部出身。パーソナルトレーナー兼ミラーフイットコンテンツディレクター。2021年6月にパーソナルトレーニングジム『SPICE GYM』を中目黒・恵比寿エリアにて開業予定。
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筋トレで聞く『ネガティブ』『ポジティブ』とは?

筋トレについて勉強し始めると早い段階で「ネガティブ」と「ポジティブ」という言葉に出会います。この2つの言葉は以下のように筋肉が力を発揮する局面を説明するものです。

ネガティブ:筋肉が徐々に伸びながら力を発揮している局面
ポジティブ:筋肉が徐々に縮みながら力を発揮している局面

例えば、ベンチプレスではバーベルを降ろすとき、大胸筋は徐々に引き伸ばされながら力を出しています。この降ろす動作をネガティブ動作と呼びます。反対にバーベルを挙げる時は大胸筋が収縮しながら力を発揮するので、ポジティブ動作と呼ぶのです。

このようにネガティブとポジティブは対象となる筋肉が伸びながら力を出しているのか、縮みながら力を出しているのかを示す言葉なのです。

筋トレのネガティブトレーニングとは

「ネガティブ」や「ポジティブ」という筋トレ用語と関連する情報として、ネガティブトレーニングという筋トレ法があります。これからそのネガティブトレーニングの具体的な効果ややり方について解説します。

ネガティブトレーニングの効果

ネガティブトレーニングは後ほど具体的なやり方を解説しますが、簡単に説明するとネガティブ動作をメインにした筋トレ方法です。例えば、ゆっくりバーベルを降ろしたり、補助をしてもらってネガティブ動作だけをしたりなどの方法があります。

そこでまずこのネガティブトレーニングにはどのような効果があるのか、論文などのデータをもとに確認していきましょう。

(ネガティブトレーニングについては以下の記事も参考にしてみてください)

理論的には負荷を高めて、筋合成を促進させる

米国国立医学図書館の医学文献データベースで公開されている論文では、ネガティブ動作はポジティブ動作に比べて20%から50%ほど高い負荷でも力を発揮し続けられるとの結果が出ています。

この結果に関連する論文がJournal of Strength and Conditioning Researchという医学雑誌に載っています。その論文ではこのネガティブ動作で大きな負荷に耐えられることによって、より大きなダメージを筋肉に与え、それがさらなる筋合成の促進につながる可能性があるとしています。

このようにネガティブトレーニングは、理論的には筋肉へ与える負荷を大きくできるため、通常よりも効率的な筋肥大が起こると考えられるのです。ちなみにこれは筋肥大はトレーニングボリューム(重量×回数×セット数)と比例するという近年の主流の考え方にも適合しています。

(筋肥大については以下の記事も参考にしてみてください)

2017年に行われたメタアナリシスで効果が認められた

理論的には効果がありそうでも、現実で本当に効果が出るかはわかりません。そこでチェックしておきたいのが、2017年にニューヨーク州立大学で行われたメタアナリシスの結果です。メタアナリシスとは2つ以上の研究結果をまとめて、さらに高い次元から分析する手法のことで、最も信頼度のある根拠が得られます。

2017年のメタアナリシスではネガティブトレーニングでもポジティブトレーニングでも同様に筋肥大の効果があったことが確認されました。また同時に筋肥大の効果においてはネガティブトレーニングの方がポジティブトレーニングよりも若干高いこともわかったのです。

ただ注意したいのが、この結果はあくまでもネガティブトレーニングのほうが若干効果が高いというだけで、統計的な有意差があるほど違いがあったわけではないということです。つまり新しい研究結果などが出るまでは、多少効果があるかもしれないといった考えでネガティブトレーニングを扱う必要があると言えるでしょう。

ネガティブトレーニングの具体的なやり方

それではここからはネガティブトレーニングの具体的なやり方について解説します。いくつかのやり方を紹介するので、自分のトレーニング環境に合った方法を取り入れてみてください。

ネガティブ時にゆっくり動作を行うやり方

最初に紹介するネガティブトレーニングは上の動画のように5秒など長めの時間をかけてゆっくりネガティブ動作を行い、ポジティブ動作は一気に挙げるやり方です。この方法であれば動作のスピードをコントロールするだけで良いので、セーフティバーなどを使えば1人でも安全に行えます。

扱う重量は通常時と同じだと当然こなせる回数が減ります。しかし、筋肉が動いている時間としてはほとんど変わらないため、回数が減っても筋肥大の効果が落ちることはほとんどありません。また扱う重量を軽くしたとしても、筋肥大が目的なら限界まで追い込めば重いときと同等の効果が期待できます。いろいろと試して自分に合った重量を選べばよいでしょう。

ネガティブ動作のみを行うやり方

次に紹介するネガティブトレーニングは、ポジティブ動作は補助に付いてもらって、ネガティブ動作のみで力を発揮するやり方です。ネガティブオンリートレーニングとも呼ばれ、先ほど紹介した研究でもこの方法が採用されています。ただし、この方法は強度が高く、筋肉痛が強く出る場合もあるので、上級者向けとも言えます。

このやり方では先ほど解説したように20%~50%ほど高い負荷にも耐えられるネガティブ動作だけ行えば良いので、いつもよりも重い重量を扱うのが一般的です。実際、先ほど紹介した研究ではポジティブの時よりも25%重い重量を扱っており、他に40%を重い重量を扱った研究もあります。扱う重量がわからない方はこのあたりを目安にすると良いでしょう。

ただ、ネガティブ動作だけを行うこのやり方では限界の見極めが難しい場合があります。そのような時には最初に紹介した研究でも使われていた2秒以上かけて降ろせなくなった時点を限界とする考え方を採用してみてください。

自分で補助をするやり方

ネガティブトレーニングにはポジティブ動作時に自分で補助をするやり方もあります。例えば、上の動画のようにポジティブ動作は両脚で行い、ネガティブ動作を片脚で降ろすのです。また懸垂であれば、両脚でジャンプしてポジティブ動作を行い、自力でネガティブ動作を行うやり方でもできます。

このやり方であれば、1人であってもポジティブ動作ではあまり力を使う必要がありません。そのため先ほど紹介したネガティブオンリートレーニングに近い刺激を筋肉に与えられます。この方法は特にマシンを使う筋トレメニューで行いやすいので、ジムに通っている人はぜひ挑戦してみてください。

(懸垂のやり方については以下の記事も参考にしてみてください)

ネガティブ時にパートナーから負荷をかけてもらうやり方

トレーニングパートナーがいる場合、ネガティブ時にパートナーから負荷をかけてもらうやり方もおすすめです。例えば、ベンチプレスを行う時にポジティブ動作は自分で行い、ネガティブ動作時にパートナーにバーを上から押してもらうのです。懸垂であれば、ポジティブ動作は自分で行って、降ろす時にパートナーに下へ引っ張ってもらいます。

このやり方はバーベルなどよりも不安定性が増します。しかし、動きを安定させようとするため、バーベルなどを使う時とは違う筋繊維を刺激できるのです。パートナーがいる場合は、このやり方もバリエーションの1つとして取り入れてみても良いでしょう。

またこのやり方に限った話ではありませんが、ネガティブトレーニングでのネガティブ動作時は呼吸を止めがちです。確かに腹圧を高めて強い力を発揮するためには呼吸を止めるのが効果的ですが、この呼吸法は血圧が上がる欠点があります。心血管系のリスクがある方は呼吸は止めずに、自然と続けたまま動作を行うようにしてください。

(筋トレの呼吸法については以下の記事も参考にしてみてください)

ネガティブトレーニングは意味ないとも言われている?

筋トレをする人の中にはネガティブトレーニングは筋肉痛が強いだけで意味ないと主張する人もいます。その主張の理由はその人の個人的な経験だったり、先ほど紹介した統計的な有意差がないという結果だったりとさまざまです。

確かに上で紹介した2017年のメタアナリシスの結果でもあった通り、ポジティブとネガティブの間には統計的な有意差はありません。しかし、どちらも筋肥大においてはプラスの結果が出ているのです。また有意差はないものの、ネガティブトレーニングの方がやや効果的であることはわかっています。

そのためネガティブトレーニングは意味ないと誰かが言っていたとしても、そのまま鵜吞みにしてしまうのはもったいないです。少しでも良い結果に繋げるためにも自分なりに取り入れられないか、一度は考えてみることをおすすめします。

ネガティブトレーニングを実践している方達

それでは最後にネガティブトレーニングを実践している方を動画と併せて紹介します。素晴らしい身体を持つ人がネガティブトレーニングにどのように取り組んでいるのか、ぜひチェックしてみてください。

1人で背中のネガティブトレーニング

2019年のNPCJ(2020年よりFWJへ団体名変更)のフィジーク大会で優勝した経歴を持つニッシー、通称サラリーマッチョも上の動画の通り、ネガティブトレーニングを取り入れています。ニッシーの場合は先ほど紹介した両腕でハンドルを引いて、片手でネガティブ動作を行うやり方を採用しています。

人気筋トレYoutuberもネガティブトレーニングを実施

IFBBのPROカードを取得している人気筋トレYoutuberの1人であるJINもネガティブを意識したトレーニングを行っています。やり方は上の動画を見てもわかる通り、ネガティブを意識するとは言っても、ニッシーのスタイルと比べるとかなり早いペースでネガティブ動作を行っています。

(JINについては以下の記事も参考にしてみてください)

筋トレの『ネガティブ』『ポジティブ』について理解しておこう

今回は筋トレにおける「ネガティブ」と「ポジティブ」の言葉の意味やネガティブトレーニングの効果・やり方などを解説しました。効果的な筋トレを行うためには知っておくべき基本的な知識でもあるので、初めて聞いた人はこれを機にしっかりと「ネガティブ」と「ポジティブ」について理解しておきましょう。