小胸筋とは?
小胸筋(しょうきょうきん)とは、肋骨の上から3本目~5本目から片側に向かって肩甲骨の烏口突起(うこうとっき)と言われている部分まで伸びている胸の筋肉のことをいいます。起始が肋骨側で停止が烏口突起になります。
大胸筋と比べて小さく奥の方についている目立たない筋肉ですが、肩甲骨の動きや肩の関節の動き、呼吸の際の肋骨の動きに大きく作用している筋肉です。ここの筋肉が癒着したり固くなると、姿勢や肩から首にかけてやっかいなトラブルを誘発してしまいます。
しかし、逆に言えばこの小胸筋をしっかりほぐし、ちゃんとしたケアをしていくことで肩や肩甲骨周りの痛みや姿勢の改善も可能といえます。効果的なストレッチや筋トレを覚えて対策してしていくのがおすすめです。
(小胸筋の筋トレメニューについては以下の記事も参考にしてみてください)
小胸筋の筋トレメニュー!鍛えるメリット〜鍛え方のコツ、ストレッチも紹介!
出典:Slope[スロープ]
小胸筋の作用
小胸筋は主に肩甲骨を動かすときの筋肉になります。メインで動く筋肉ではありませんが、さまざまな筋肉の動きをサポートしていくのが小胸筋の作用になります。
主役でないと言っても侮れないのが小胸筋です。他の筋肉と連動しているということは、小胸筋がうまく作用しなければ他の筋肉にも影響が出るということになりますので、しっかりとしたケアが必要になります。
小胸筋の作用を理解することで、後に紹介するストレッチや筋トレをする際にも参考になりますから、覚えておいて損はないでしょう。
肩甲骨の外転
まずは肩甲骨の外転(がいてん)です。肩甲骨が内から外にスライドする動きのことを言います。外側と言っても、外「転」と書いてあるとおり、身体の前の方へ回転するように稼働します。わかりやすく言うと、パンチングする時に腕を前出す際に動く箇所です。
また、この外転の動きは、デスクワークやスマホの操作の際に前かがみになるときの動きでもあります。ですから、小胸筋が凝り固まると前傾姿勢、いわゆる猫背になりやすくなると言われています。
この肩甲骨の外転には前鋸筋(ぜんきょきん)という筋肉も作用しています。小胸筋と前鋸筋の両方の筋肉で肩甲骨の外転を担っているわけです。
(前鋸筋については以下の記事も参考にしてみてください)
前鋸筋の筋トレ&ストレッチメニュー!構造・作用〜鍛え方のコツまで徹底解説
出典:Slope[スロープ]
肩甲骨の下方回旋
次に肩甲骨の下方回旋(かほうかいせん)です。この動きは左右の肘を背中で近づける動きになります。日常的な動きでいうと、洗濯物を洗濯槽から取り出す際の動きになります。ちなみに、洗濯槽に手を入れる動きは上方回旋(じょうほうかいせん)といって、この上方回旋と下方回旋の動きはセットになる場合が多いです。
また、この動きをする際には小胸筋のほかに菱形筋、肩甲挙筋が作用しています。日常の動作ではとても使用頻度が多い動きになりますので、この周辺の筋肉が固まったり癒着すると肩甲骨の動きが悪くなってしまうので注意が必要です。
肩甲骨の下制
肩甲骨の下制は文字通り肩甲骨を下におろす動きになります。この肩甲骨の下制は主に僧帽筋が作用するのですが、小胸筋はそれをサポートする役割を担っています。
この肩甲骨の下制の動きは、肩を落とすときや、重い荷物を持って腕が下の方に引っ張られるときなどに作用する動きになります。長い時間荷物を持ちながら移動をしていると、筋肉がこわばって肩こりの原因などになります。
メインで動く僧帽筋が凝り固まると小胸筋にも負荷がかかりやすくなるので、僧帽筋のストレッチをしておくことが小胸筋をカバーすることにもなります。
(僧帽筋のストレッチについては以下の記事も参考にしてみてください)
僧帽筋のストレッチメニュー!一瞬で肩こりも解消する伸ばし方のコツも解説!
出典:Slope[スロープ]
小胸筋をストレッチ・筋トレするメリットは?
最近はスマホの使いすぎや、デスクワークでのPC作業などで姿勢が悪くなり、肩こりや、首肩の痛みなどに悩んでいる人も少なくありません。
小胸筋をはじめとした、肩甲骨周りの筋肉が萎縮・癒着すると、猫背や巻き肩になり、肩の痛みや凝りなどを誘発してしまいます。
ですから、普段から小胸筋をストレッチや筋トレすることで、それらを解消・予防することが快適な生活をする上での大きなメリットになります。
メリット①猫背の予防と解消
肩甲骨が外転して、小胸筋が縮んだ状態で固まってしまうと猫背の原因になると言われています。猫背になると背骨を通っている神経も圧迫されるますから、腰痛などのリクスも高くなってしまいます。
ですから、小胸筋をストレッチなどでほぐしてあげることで猫背の原因を防ぐことが重要です。
すでに、小胸筋が凝り固まってしまって猫背になってしまった人も小胸筋を中心とした各筋肉をほぐすことで、猫背を解消することにも役立ちます。
メリット②巻き肩の予防と解消
巻き肩とは肩が耳寄り前に出て、顎が突き出た姿勢のことをいいます。パソコンで文字を打ちながら、画面を覗き込む姿をイメージするとわかりやすいでしょう。
肩甲骨が下方回旋しながら外転した時に小胸筋が縮んでいる状態ですから、この状態で筋肉が固くなると巻き肩になってしまうわけです。
小胸筋をストレッチなどで柔らかくすることで、肩甲骨が元の位置に戻りやすくなり巻き肩が解消されます。
(巻き肩改善が期待できる小胸筋のストレッチについては以下の記事も参考にしてみてください)
小胸筋のストレッチで巻き肩・肩こり・痛みが改善!壁・テニスボールを使ったメニューなど!
出典:Slope[スロープ]
メリット③バストアップと見栄えの向上
小胸筋は鍛えることで、バストアップの効果があると言われています。また肩幅を広げる作用もあるので、ボディービルダーなどの逞しい大胸筋や幅広い肩幅などは、小胸筋をしっかりと鍛えている効果です。
肩幅が大きくなってバストアップされると、ウエストが細く見えて身体のシルエットが綺麗に見えるようになっていくので、トレーニングのモチベーションアップにも効果的と言えるでしょう。
以上のことから、小胸筋はかっこいい筋肉ときれいなスタイルを身につけるために、非常に重要な筋肉だと言えます。
(バストアップが期待できる筋トレについては以下の記事も参考にしてみてください)
バストアップなら筋トレ!短期間で効果が出るメニューを自宅&ジム別に紹介!体験談あり
出典:Slope[スロープ]
小胸筋のストレッチメニュー
小胸筋のストレッチには大掛かりな器具や道具は必要ありません。以下に誰でも簡単にできるストレッチを紹介していきます。
肩こり解消に効果的なシキーダハンズアップ
最初に紹介するのは「シキーダハンズアップ」というストレッチです。小胸筋を柔らかくする初心者向けのストレッチになります。小胸筋が柔らかくなれば、肩こりの解消にもつながるので、最近肩が重い、首筋から肩にかけて痛いという人におすすめです。
▼シキーダハンズアップの手順
①脚を肩幅くらいに広げる
②両手を頭の後ろに組む
③2の姿勢から手をはなし、脇の下を通して身体に近づける
④手のひらを前に向けて、しっかり胸をあげる
⑤4の状態から、②の状態に戻して頭の後ろで手を組む
⑥1~5の動作を繰り返す
以上の動作をゆっくりと10回1セットで行ってください。はじめのうちは無理をしない程度に行いましょう。
▼シキーダハンズアップのコツ&注意点
・両手のひらは上ではなく正面を向ける
・肩や腕に痛みや途中で違和感がある場合はすぐに中止する
どのストレッチをするときもそうですが、慣れないうちはつい力が入ったり呼吸も止まってしまいがちになります。無理に反動をつけたり必要以上に伸ばしたりしないように、自然な呼吸で行うようにしてください。
テニスボールを使用した、小胸筋の筋膜リリース
小胸筋に限らず、全ての筋肉は筋膜という薄い膜で覆われています。この膜は薄くて柔らかいものなので、長時間筋肉を動かさないでいるとすぐに固くなってしまい、筋膜同士が癒着してしまいます。この固くなったり癒着した筋膜を柔らかくほぐすことを「筋膜リリース」と言います。100均などでも手に入りやすいテニスボールを使った筋膜リリースを紹介します。
▼テニスボールを使った小胸筋の筋膜リリース手順
①テニスボールを床に置いてうつ伏せになる
②肩と胸の間、押すと痛い部分にボールを置く
③両手を前に伸ばして床から浮かす
④3の状態から、ゆっくり脇を閉じる、伸ばすを繰り返す
リリースをする時間は、左右各60秒~90秒を目安に行ってください。また、余裕があるなら、硬めのボール(硬球など)で行うと更に効果がありますが、はじめのうちは無理をしないで様子を見ながらレベルアップしていきましょう。
▼テニスボールを使った小胸筋の筋膜リリースのコツ&注意点
・バランス取れない場合は手をついて行う
・布団やカーペットではなくなるべく硬い床で行う
・必要以上に痛みや違和感がある場合はすぐに中止する
はじめのうちはバランスが取れなかったりするので、慣れないうちは両手を床につけてやってみても大丈夫です。筋膜をほぐすためのものですから、痛みの度合いなど自分の身体に合わせて行うのがいいでしょう。
小胸筋の筋トレメニュー
小胸筋を鍛えるには、とにかく肩甲骨の動きを意識したトレーニングが効果的です。他の筋肉のトレーニングのように、筋肉に意識をむけるより、肩甲骨がどう動いているのか、といった具合にやるのがコツになります。
どのトレーニングも1セット10回を目安に、1~6セットとご自身のレベルに合わせて行ってください。また、痛みや違和感を感じたら、すぐにトレーニングを中止するようにしてください。
以下の動画で紹介されている2つの筋トレメニューについて紹介していきます。
プルオーバー
プルオーバーは広背筋や大胸筋下部の筋トレで行うことで有名ですが、小胸筋を鍛えるにも効果的です。
▼プルオーバーの手順
①ベンチのヘリに肩甲骨がくるように横になる
②1の状態でダンベルを胸の前にして持つ
③ダンベルを頭の上の方へおろしていく
④おろしたダンベルをゆっくり胸の方へ戻す
⑤2~4を繰り返し行う
小胸筋に作用するためのプルオーバーは肩甲骨を下制しながら持ち上げるといったことを意識すると、効果的に小胸筋が鍛えられます。ダンベルの持ち手は左右どちらが上下でも問題ありません。
▼プルオーバーのコツ&注意点
・ダンベルを持ち上げるというより肩甲骨の下制で移動させる感じ
・肘を使ってダンベルを持ち上げようとしない
プルオーバーは本来大胸筋を鍛える筋トレとしてメジャーなものです。小胸筋は大胸筋の裏に隠れている筋肉ですから、トレーニングの仕方にはちょっとしたコツが必要ですが、正しいフォームがわかっていれば、小胸筋に作用する筋トレの仕方が理解しやすくなります。
(プルーバーのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
ダンベルプルオーバーのやり方!大胸筋・広背筋に効くコツ!胸輪拡張効果も!
出典:Slope[スロープ]
ディップス
ディップスは本来大胸筋の下部を鍛えるのに行うトレーニングですが、小胸筋を鍛えるときのディップスは、肩甲骨の下制を意識すると効果的にトレーニングすることができます。
▼ディップスの手順
①肩幅より少し広めの幅でバーを掴む
②肘を伸ばし脚を床から離す
③肘を曲げ、両手首とみぞおちが同じ高さになるまで下がる
④2~3を繰り返し行う
ここでも、先程プルオーバー同様に肩甲骨の下制の際に負荷がかかれば小胸筋が鍛えられます。通常のディップスとは多少違ってきますが、手順通りに行えばちゃんと小胸筋に作用します。手順②の時は体がやや前傾姿勢になるようにしましょう。
▼ディップスのコツ&注意点
・通常のディップスよりも前傾姿勢を保つ
・肩甲骨を上下させるように意識する
・可動域は狭くても大丈夫
肘の曲げ伸ばしで行う運動ですが、肩甲骨の動きの方に意識しながら行うのがポイントです。ディップスは専用器具を使ってやるのが一番安全で効果的。椅子や机で代用することも可能ですが、バランスの悪い椅子やテーブルを使ってやると事故や怪我のもとになるので、自宅でのトレーニングではできるだけ安全に配慮して行うようにしてください。
(自宅でのディップストレーンングについては以下の記事も参考にしてみてください)
ディップスのやり方&効果!大胸筋&三頭筋をデカくするコツ!自宅・加重版も!
出典:Slope[スロープ]
小胸筋の構造&作用を理解しよう
小胸筋は英語でPectoralis minorと言葉の中にminor(マイナー)と付くくらい地味で目立たない筋肉ですが、その役割は重要です。ストレッチや筋トレをすることで肩甲骨周りのトラブルや痛みなどに作用していくものだと知ってもらえたことでしょう。
また、綺麗なスタイルと逞しく見える身体作りをしていく上でも、小胸筋の構造を理解し、その作用を知ることで効果的なトレーニングをしていくことも難しくはありません。
みなさんもぜひ小胸筋の構造と作用を理解して健康でカッコいい体つくりに役立ててみてはいかがでしょうか。