短内転筋の構造・役割
この記事では、短内転筋(たんないてんきん)の鍛え方として、さまざまな筋トレメニューを紹介します。詳しいトレーニング方法の前に、短内転筋がどのような筋肉なのかを確認しましょう。筋肉の付着部である起始停止や支配神経などの構造と、どのような動作の際に使われるのかという筋肉の役割を解説します。
短内転筋の構造
短内転筋は大腿内転筋群に含まれている小さな筋肉のひとつです。内太ももと骨盤の恥骨を繋ぐように形成されており、起始は恥骨下枝の前側で、長内転筋の起始のすぐ下に位置しています。停止は小転子の下の大腿骨粗線内側唇です。支配神経は閉鎖神経です。
短内転筋の役割
股関節の内転・外旋や股関節の折り曲げに作用しています。内転とは、ここでは太ももを内側に入れたり足を閉じたりする動作です。外旋は太ももやつま先をを外側に開く動き、股関節の折り曲げとは足を上げる動きが該当します。
筋トレメニューからみたい方はこちら短内転筋の筋トレ・ストレッチをするメリット
短内転筋は、足を開いたり閉じたり、上げるといった動きに作用する筋肉であることを解説しました。これらの動きは、さまざまなスポーツや筋トレ種目はもちろんのこと、日常生活でも非常によく使う動作です。短内転筋は骨盤の安定性を保つことに深い関係があり、この筋肉が弱ると歩行にまで支障をきたすことがあるとされています。
そのため、短内転筋の筋トレ・ストレッチによってけがを予防し、スムーズな動きがしやすくなるでしょう。また、短内転筋が鍛えられていないとO脚になりやすくなります。O脚は腰痛や下半身太りの原因にもなることから、短内転筋の筋トレ・ストレッチによって腰痛予防や脚痩せにもつながります。
短内転筋の筋トレメニュー&鍛え方のコツ
短内転筋の構造・作用と筋トレやストレッチをするメリットを確認したところで、さっそく短内転筋を鍛えるためにおすすめの筋トレメニューを見ていきましょう。次の5種目について、やり方やコツを解説します。
・サイドランジ
・自重アダクション
・ワイドスクワット
・ダンベルワイドスクワット
・アダクション(マシン)
マシンを使った種目だけでなく自宅でできる種目も紹介しているため、ジム通いできない方もチェックしてみてください。
短内転筋の筋トレメニュー①サイドランジ
サイドランジは横に大きく足を開いて、内太ももの筋肉を効果的に鍛える筋トレメニューです。股関節を外転するときに使われる筋肉に強い負荷をかけられるため、短内転筋を鍛えたいときに最適な種目です。
▼サイドランジのやり方
①バーベルを肩に担いで肩幅程度に足を開く
②片方の足を横に大きく開く
③足を開くと同時に深く腰を下ろす
④踏み出した足の膝角度が90°になったら元の位置に戻る
筋力アップを目的とする場合は1~6回、筋肉を肥大させたい場合は6~12回を目安に取り組みましょう。ここではバーベルを持ったサイドラウンジを紹介していますが、バーベル等が無い場合は胸の前で手を握った状態でも行えます。
▼サイドランジのコツ&注意点
・踏み出した足の膝角度が90°になるまで身体を下ろしましょう
・一連の動作は上体を起こした姿勢で行う
効果的に鍛えるためのコツは、足を大きく開いたときにしっかりと腰を下すことです。踏み出した足の膝角度が大体90°になるように身体を深く沈めることで、目的部位に強い負荷をかけることができます。注意することは上体をまっすぐ起こした状態で行うことです。踏み込んだときに上体が前のめりになってしまうNGフォームに気を付けましょう。
ずーみー(泉風雅)
サイドランジは股関節を適切に動かすための練習にも利用できます。さらに、外向きの力に対してブレーキをかける練習としても良く用いられています。
(バーベルスクワットについては以下の記事も参考にしてみてください)
バーベルスクワットのフォーム!種類別のコツ&効果!重量・回数などもプロが徹底解説
出典:Slope[スロープ]
短内転筋の筋トレメニュー②自重アダクション
自重のアダクションは身体を横にして足を横に上げ下げする動作を繰り返す筋トレです。マシンを使った方法も後ほど紹介しますが、こちらは器具も使わないので自宅でも気軽に始めることができます。
▼自重アダクションのやり方
①まず横向きに寝そべり、上側の脚を上の画像のように立てる
②下側の脚を上に挙げる
③脚を元の位置に降ろす
このアダクションは自重トレーニングのため、正しいフォームを意識して限界を感じる回数で取り組みましょう。
▼自重アダクションのコツ&注意点
・両方の腕は身体の前に出し、上側の手を地面について身体を支える
・身体が曲がらないよう気を付ける
強い負荷をかけたい場合は、チューブなどのアイテムを使用することもおすすめです。筋肉の肥大を狙う場合は8~12回で限界を感じられるように負荷を調節します。
ずーみー(泉風雅)
腹斜筋を使って代償してしまうことで起きる現象のため、骨盤や腰が動かないように体幹を固めて股関節を使って動かすことを意識すると良いです。すると、中殿筋などの股関節を外転させる筋肉に負荷をかけられます。
(アダクションについては以下の記事も参考にしてみてください)
アダクションやり方!短期間で美脚GET!脚痩せ効果UPのコツをマシン・自重別に解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
短内転筋の筋トレメニュー③ワイドスクワット
ワイドスクワットは足を大きく開いたフォームでスクワットを行う筋トレ種目です。通常のスクワットよりも足幅を広げることで、内転筋群や股関節伸展筋群など内側の太ももに強い負荷がかかります。その結果、短内転筋を含む内太ももが効果的に鍛えられます。
▼ワイドスクワットのやり方
①バーベルを肩に担いで肩幅より広く足を広げて立つ
②上体を倒しながら深く腰を下す
③上体を起こしながら元の位置に戻る
ワイドスクワットは目的に合わせて筋トレ回数を決めてください。筋力アップならば1~6回、筋肥大ならば6~12回がおすすめです。筋持久力を高めるならば15回以上で限界を感じる重量を選びます。1部位あたり週に1回3セット、もしくは週に2回6セットがセット数の目安です。
▼ワイドスクワットのコツ&注意点
・しゃがむときに上体を前に倒す
・腰を曲げない
・膝が内側に入らないよう気を付ける
腰を下すときに上体を軽く倒し、スタートポジションに戻るときに上体を起こす動作が効果的に鍛えるコツです。内転筋群は中間位までは伸展動作にも関わっているため、上体の動きを加えることで効果が最大限に発揮されます。だからといって上体を意識しすぎて、腰が曲がってしまわないようにしましょう。上体を倒すときは背中をまっすぐにした状態で行います。
ずーみー(泉風雅)
ボトムポジションにおいて、股関節屈曲可動域が十分でないと腰が曲がってしまい、股関節の屈曲を代償する運動が出てしまいます。股関節で骨盤と大腿骨のかみ合わせが悪いことでも起きる問題です。こういった場合は股関節を適切に外旋して、膝を割るようにしゃがむことで解決します。
(ワイドスクワットについては以下の記事も参考にしてみてください)
ワイドスクワットのやり方!脚痩せ効果UPのコツ!短期間で内もも・お尻が引き締まる!
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
短内転筋の筋トレメニュー④ダンベルワイドスクワット
ダンベルワイドスクワットは、肩幅よりも広く足を開いたワイドスタンスで取り組むことが特徴です。足を広くすることで、内転筋群などの内太ももの筋肉に効果的に刺激を与えられます。
▼ダンベルワイドスクワットのやり方
①ダンベルなどのウエイトを胸の前で握る
②足を肩幅よりも広く開いて立つ
③膝が90°になるように腰を下す
④元の位置に戻る
ダンベルワイドスクワットをトレーニングメニューに取り入れる場合は、自身の目的に合わせて回数を選んでください。筋力アップは1~6回、筋肥大は6~12回、筋持久力アップは15回以上で限界を感じる重量が目安です。
▼ダンベルワイドスクワットのコツ&注意点
・膝とつま先の方向を一致させる
・無理に重量を上げない
ダンベルワイドスクワットの効果を最大限に発揮するために、膝とつま先の方向を一致させたフォームを崩さないようにしましょう。バラバラの方向を向いていると効果が発揮されません。さらに、膝関節内側側副靭帯の損傷など怪我のリスクが高まってしまいます。無理をしない重量で正しいフォームを心掛けましょう。
ずーみー(泉風雅)
膝とつま先の方向を一致させて、膝を外側に割っていくような意識で取り組むと良いです。
(ダンベルスクワットについては以下の記事も参考にしてみてください)
ダンベルスクワットのフォーム!重さ・回数など初心者でも下半身に効くコツを解説
出典:Slope[スロープ]
短内転筋の筋トレメニュー④アダクション(マシン)
アダクションでは専用のマシンを使用して股関節を内転させる動作を繰り返し、内転筋群に強い刺激を与えて鍛えます。内側に向かうときに筋肉を使うため、内転筋群をピンポイントに狙える筋トレ種目です。自宅で行える方法はすでに紹介したため、ここではマシンを使ったトレーニング方法を紹介します。
▼アダクション(マシン)のやり方
①股関節を動作軸上にセットするようにマシンに座る
②膝関節を内転させて足を閉じる
③足を開いて元の位置に戻る
マシンを使ってアダクションを行う際の回数や重量は目的別に決めます。筋力アップでは1~6回、筋肥大では6~12回が目安になります。トレーニング回数はトレーニングの経験値で決めるのですが、週1回3セットもしくは週2回6セット程度がおすすめです。
▼アダクション(マシン)のコツ&注意点
・膝がつま先よりも内側に入れない
・マシンの広げすぎに注意しましょう
効果的に鍛えるためのコツは、膝とつま先の向きを同じにすることです。内太ももで挟む内転動作でトレーニングすることが大切なため、膝とつま先が同じ方向を向いていることを確認しながら一連の動作を行ってください。
ずーみー(泉風雅)
マシンを使う際、パッドをあまり広げすぎてしまうと股関節に痛みが出てしまう可能性があります。痛いと感じない程度で無理なく初動で力が籠められる場所でセットしましょう。
短内転筋のストレッチメニュー
最後に、短内転筋に効くストレッチメニューを2つ紹介します。短内転筋は股関節にもつながる筋肉のため、ストレッチをすることで股関節や内太もも周りの緊張がほぐれ、足を大きく開きやすい下半身を作ることができます。
短内転筋のストレッチ①
短内転筋を含む内転筋群を伸ばすストレッチ方法で、内転筋の緊張をほぐすと共に骨盤のゆがみを整える効果が期待できます。寝転んで行えるため、日常生活の隙間時間にも取り入れやすいストレッチです。
▼短内転筋のストレッチ①のやり方
①ストレッチマットを用意して仰向きになる
②両足を揃えて膝を立てるように曲げる
③片方の足を外側へゆっくりと開きキープする
④足をゆっくりと元の位置に戻す
この内転筋を伸ばすストレッチは、10秒~30秒キープを片足3~5回繰り返します。
▼短内転筋のストレッチ①のコツ&注意点
・一連の動作はゆっくりと繰り返してください
・心地よいと感じる程度の開きで行いましょう
・開いている足とは逆の足を動かさない
ストレッチはゆっくりと取り組むことが大切です。人によっては股関節の硬く、うまく画像のように足を開けない場合があります。そのときは無理せず、自身が心地良いと感じる場所で10秒~30秒維持しましょう。
福田翔馬パーソナルトレーナー
短内転筋は股関節屈筋としての側面も持ちます。そのため、短内転筋のストレッチでは膝の位置をお尻から離し、股関節の屈曲角度を浅くするとより効果的にストレッチが可能です。
短内転筋のストレッチ②
四つん這いの姿勢で内転筋群を伸ばしていくストレッチ方法です。内転筋だけでなく股関節にも作用しているため、内転筋や股関節の硬さに悩んでいる方はチャレンジしてみましょう。
▼短内転筋のストレッチ②のやり方
①四つん這いのポーズになり、上半身を下半身よりも高くする
②できるだけ膝を大きく開く
③スタートポジションが決まったらしばらく静止する
④お尻を後方に下げる
⑤心地よい伸びを感じたら元の位置に戻す
▼短内転筋のストレッチ②ストレッチのコツ&注意点
・ゆっくりとストレッチをしましょう
・心地よいポイントで止めましょう
・腰痛がある場合は行わない
内太ももが心地よい伸びを感じるポイントで止めるのがコツです。痛みを伴う場合は自身のキャパシティを超えていることになります。
福田翔馬パーソナルトレーナー
足を外に開くときに股関節が固いと、背中が丸くなりやすく効果が弱くなります。痛みがあっても丸くなりやすいので、痛みのない範囲で行うことと、背筋を伸ばすことを意識しましょう。
短内転筋を引き締めて理想の太ももへ
短内転筋を効率よく鍛え筋トレ・ストレッチメニューを紹介しました。短内転筋を含む内転筋群は、鍛えることで下半身の安定や太ももの引き締め効果が期待できますが、太ももの内側にあるためなかなか鍛えづらい部位です。そのため、狙って鍛える必要があります。この記事で紹介したメニューのなかで、自分に合った種目を選んでジムや自宅で実践してみてください。