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尺側手根伸筋の構造・作用
尺側手根伸筋(しゃくそくしゅこんしんきん)は、前腕伸筋群の中の一つです。まずは、その構造や作用について詳しく見ていきましょう。
尺側手根伸筋の構造
尺側手根伸筋は、前腕の小指側にある筋肉です。肘から小指の付け根あたりまで広がり、橈骨神経が支配しています。手の甲を上に向けたときに肘の近くにあることが確認できます。あまり知られていない筋肉ですが、手首を動かす際にはとても重要な役割を担っています。なお、肘の動作には関与していません。
尺側手根伸筋の作用・役割
尺側手根伸筋は、手首を反らせたり小指側へ曲げたりする作用があります。また、尺側手根屈筋と同時に作用して手首を内側に曲げる働きもします。
スポーツでは、手首のスナップを強く効かせるためには欠かせない筋肉になります。普段の生活の中でも物を持つ、蓋を開ける、雑巾を絞るなどの動作において使われている筋肉です。
尺側手根伸筋の筋トレをすると得られるメリット
尺側手根伸筋はあまりメジャーな筋肉ではありませんが、鍛えることで以下のような利点があります。
・スポーツや筋トレのパフォーマンスが向上する
・日常的な動作がスムーズになる
では、その内容について詳しく見ていきましょう。
スポーツや筋トレのパフォーマンスが向上する
尺側手根伸筋は手首を曲げる作用があるため、多くのスポーツで使用される筋肉です。テニスや卓球のようにラケットを使用する競技だけでなく、柔道、空手などでも重要な役割を担います。尺側手根伸筋を鍛えることで、幅広いスポーツでのパフォーマンスの向上が期待できるのです。
また、ダンベルやバーベルを使用する種目の動作も改善されます。手首が強くなることで動作がスムーズになるほか、腕が疲れたためにトレーニングを中止するということが減るので、他の筋肉を鍛える効率もアップするはずです。
日常的な動作がスムーズになる
前腕の筋肉はスポーツや筋トレだけでなく、日常的にも使われる筋肉です。鍛えることにより、手や腕を使う動作全般が楽になります。たとえば、重い荷物を持つ、固い蓋を開けるなどの作業がスムーズになるでしょう。また、手や腕が発揮できる力が上がることで、他の筋肉が凝ることが少なくなるというメリットもあります。
尺側手根伸筋の筋トレメニュー&鍛え方のコツ
前腕筋群の中のでも尺側手根伸筋は、主に手首関節の屈曲・伸展・回内・回外の動作に使われます。ここでは尺側手根伸筋にも効果のあるトレーニングとして、リストカール系の筋トレメニューを紹介していきます。
尺側手根伸筋のトレーニング①ダンベルリストカール
ダンベルリストカールは、ダンベルを使って手首を曲げる筋肉を鍛えていくトレーニングです。しっかりと上まで手首を巻き上げ、ボトムポジションで指先に引っ掛けるようなところまで降ろすと握力も鍛えることができます。
▼ダンベルリストカールのやり方
①ダンベルを持って手首をベンチ台から出す
②手首を巻き上げるようにダンベルをできるだけ高く持ち上げる
③ダンベルを指先に引っ掛けるようなところまで降ろす
ダンベルリストカールの最適な回数は、筋力アップを目的に行う場合は1~6回、筋肥大を目的に行う場合は6~12回、筋持久力を目的に行う場合は15回以上で、重量はその回数で限界になる重さのダンベルを使いましょう。セット数は、初心者の方は3セットを週1回、上級者の方は3セットを週2回が目安です。
▼ダンベルリストカールのコツ&注意点
・手首のケガやオーバーワークに注意してください
・ストレッチ時の負荷が大きいため、重い重量を扱うと手首を痛めることがあるので注意しましょう
ずーみー(泉風雅)
前腕部は血流が良く、回復も早いため毎日筋トレを行ってもいいという説が出回っていますが、これは間違いです。筋トレから回復するためには、他の部位と同様48~72時間の休息が必要です。
(リストカールについては以下の記事も参考にしてみてください)
リストカールで前腕を強化!手首を痛めないコツ〜回数・重さ、器具のおすすめまで解説
出典:slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
尺側手根伸筋のトレーニング②バーベルリストカール
ベンチなどに座って脚の上に腕を置き、バーベルを持って行います。ダンベルの場合と同じく、前腕の内側の力強いラインを作っていくことができます。
▼バーベルリストカールのやり方
①座った状態でバーベルを持ち、手首を膝の上から出す
②手首をしっかりと巻き上げる
②バーベルを降ろす
バーベルリストカールの最適な回数と重量は、ダンベルリストカールと同様にトレーニングの目的によって決めてください。筋力アップのためには1~6回、筋肥大のためには6~12回、筋持久力アップのためには15回以上が目安です。重量は、その回数で限界がくるものにしましょう。
バーベルリストカールの最適なセット数は、トレーニングのステータスによって変わります。初心者の方は3セットを週1回、上級者の方は3セットを週2回がおすすめです。
▼バーベルリストカールのコツ&注意点
・指先に引っ掛けるところまで降ろすと、指を曲げるための握力の筋肉も鍛えられます
・重い重量だと手首を痛めやすいため、重量設定は慎重に行いましょう
・バーベルが重く、角度を付けて手首を上げられないときは、ダンベルリストカールから始めましょう
ずーみー(泉風雅)
手首に痛みが出る方には、下で紹介しているビハインドリストカールがおすすめです。こちらは手首が反りかえらずに行うことができるため、手首の痛みが出にくい種目です。
尺側手根伸筋のトレーニング③ビハインドリストカール
バーベルを後ろ手に持ってリストカールを行う種目です。通常よりも可動域は狭くなりますが、手首が反りかえらずに行うことができるため、手首が痛くなりにくいというメリットがあります。また、リストカールよりも重い重量を扱えます。
▼ビハインドリストカールのやり方
①バーベルを後ろ手に持つ
②後方に向かってしっかりと手首を巻き上げる
③手首を降ろし、動作を繰り返す
ビハインドリストカールの最適な回数と重量は、他のリストカール同様、トレーニングの目的に応じて設定してください。セット数も同様に、トレーニングのステータスによって決めましょう。
▼ビハインドリストカールのコツ&注意点
・目的やステータスを把握して、高重量すぎるものを扱わないよう注意しましょう
ずーみー(泉風雅)
キツくなってきたら、脚の力を借りてチーティングもできるという利点もあります。
尺側手根伸筋のトレーニング④リバースカール
リバースカールは腕橈骨筋などの筋肉に効果が高い種目です。バーベルを順手で持ってカールの動作を行います。
▼リバースカールのやり方
①バーを順手で持ち、脚を肩幅に開いてまっすぐ立つ
②肘の位置を固定し肘を曲げてバーを胸まで持ち上げる
③ゆっくりバーを降ろす
リバースカールの最適な回数は、他のカールと同様に、筋力アップには1~6回、筋肥大には6~12回、筋持久力アップには15回以上を目安にしましょう。また、重量はその回数で限界になる重さに設定してください。軽い重量の高回数でも限界まで行えば同等の効果が得られます。
セット数は、初心者の方は週1回3セット、上級者の方は週2回6セットが目安です。
▼リバースカールのコツ&注意点
・肘が前に出ないように正しいフォームで行える軽い重量から始めましょう
・手首が下に曲がらず、チーティングを使わずに扱える重量で行うのが重要です
・親指を握りこまないでバーを握ると、前腕への刺激がより大きくなります
ずーみー(泉風雅)
ストレートバーとEZバーのどちらでも行える種目ですが、ストレートバーの方が前腕により大きな刺激を与えられます。
(リバースカールのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
リバースカールのやり方!プロ直伝の前腕・上腕筋を『極太』にするコツを解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
尺側手根伸筋のトレーニング⑤ダンベルリバースリストカール
ダンベルを順手で握り、カールの動作を行います。手首を手前に持ち上げることで前腕伸筋群を鍛えることができるトレーニングです。
▼ダンベルリバースリストカールのやり方
①ダンベルを持って手首を折り曲げて下に向けベンチ台から出す
②手首を反らせるようにダンベルをできるだけ高く持ち上げる
③ダンベルを元の位置まで降ろす
ダンベルリバースリストカールの最適な回数、重量、セット数は、他のカール種目と同様に、トレーニングの目的やステータスによって設定しましょう。トレーニングに慣れてきたら回数やセット数、頻度を増やしてください。ただし、オーバーワークにならないように、無理のない範囲で行うようにしましょう。
▼ダンベルリバースリストカールのコツ&注意点
・前腕部は固定したまま、手首を反らせるようにします
・高重量で行うと手首を痛めるので、初心者はまず軽めの重量から始めましょう
尺側手根伸筋のストレッチメニュー
尺側手根伸筋を含む前腕のストレッチは、テニスやその他スポーツなどで腕を痛めないための運動としても効果があります。手を使う競技では尺側手根伸筋を酷使しがちなので、ストレッチでほぐしておくと良いでしょう。
また、運動後のストレッチやアイシングでクールダウンすることも、筋肉疲労の蓄積や筋肉痛を抑え腱鞘炎を予防する方法として有効です。腱鞘炎になってしまうと可動範囲を制限されて、バーベルやダンベルを握るトレーニングができなくなります。無理をしていると手術をしなければならなくなりますので、早めに予防をしておきましょう。
尺側手根伸筋のストレッチ①床を使ったストレッチ
前腕筋群のスタティックストレッチです。
▼床を使ったストレッチのやり方
①床に膝をついて四つんばいのような態勢をとる
②両方の手を床につき、手の指先が自分の方を向ける
③お尻を後方に引きストレッチした状態で20〜30秒キープ
2〜3セット行うのがおすすめです。
▼床を使ったストレッチのコツ&注意点
・できるだけ手のひらが床から離れないようにしましょう
・ゆっくり伸ばしていくことが大切です
・過度に力をかけずに、気持ちいいくらいの位置でキープするようにしましょう
福田翔馬パーソナルトレーナー
腱鞘炎がある場合、体重をかけると痛みを感じることがあります。その場合、無理をせずに一旦中止して様子を見てください。
尺側手根伸筋のストレッチ②手を組んで行うストレッチ
前腕屈折群のストレッチです。パソコンで手首を動かす動作を繰り返し行っている方、テニス肘、ゴルフ肘に悩んでいる方におすすめします。
▼手を組んで行うストレッチのやり方
①腕を前に伸ばし親指を下に向けて手をしっかり組む
②上側の手の手首を反らすように曲げる(下側の手のストレッチになります)
▼手を組んで行うストレッチのコツ&注意点
・左右交代して行いましょう
・気持ちいい程度でキープしましょう
・角度を変えるとストレッチされる部分も変わるので試してみましょう
福田翔馬パーソナルトレーナー
伸ばす側の手首を、少し親指側に折るとより効果的です。尺側手根伸筋は小指側についている筋肉なので、親指側に曲げることでより伸ばすことができます。
尺側手根伸筋腱炎の見分け方&対処法
尺側手根伸筋腱炎は手首を動かす動作を繰り返し行うと起こりやすい腱鞘炎です。手首を酷使するスポーツ選手にも発生します。以下のような症状が現れたら、尺側手根伸筋腱炎の可能性があります。他のケガと似ていて判断が難しいこともあるので、痛みがとれないときは専門医に相談してください。
・手首を回したり、ものを持ち上げようとすると痛い
・手を伸ばした時にビリッとした痛みが走る
・手関節の小指側にある尺骨頭(手首外側の出っ張り)の部分が腫れる
・手首を回すとクリック音が鳴る
尺側手根伸筋腱炎の対処法としては、まず筋肉の使用頻度を減らすことが重要です。テーピングやサポーターを使用するという方法もあります。ただ、それでも痛みが軽減しない場合は抗炎症薬を外用したり、腱鞘内へのステロイド注射をしたりするほか、ひどい場合は手術を行うこともあります。
また、尺側手根伸筋を酷使することで、トリガーポイントが発生することがあります。それにより、手根管症候群や手首の関節炎などが引き起こされることもあるため、筋肉の使いすぎにはくれぐれも注意してください。
尺側手根伸筋を鍛えて筋トレ効果をUPしよう
尺側手根伸筋は、前腕の肘近くにある筋肉です。鍛えたことがわかりやすい部位のため、逞しい前腕を作るには欠かせない筋肉でもあります。スポーツでは頻繁に使用される筋肉なので、ぜひ鍛えてください。
バーベルやダンベルを使って全身を鍛える筋トレ種目においても、尺側手根伸筋は活躍しています。尺側手根伸筋が鍛えられていると、他の部位を鍛えるためのトレーニングでも効率アップが期待できます。尺側手根伸筋を鍛えて、より効果的に筋トレを行いましょう。