首の筋肉の構造
首は頭と体をつなぐ非常に重要な場所で、血管や神経はもちろんのこと、筋肉も細かいものが数多く存在しています。そしてそれぞれの筋肉は複雑に付いていながらも、それぞれの役割を持っています。そのため首は前後左右に自由に動かしたり、正しい位置で安定させることができるのです。
そしてそんな首を効率よく鍛えるためには、やはりそれぞれの部位について名前や作用を理解しておくことが重要となります。これから首にある筋肉について部位別に名前や作用を画像付きで詳しく紹介するので、筋トレのメニューをチェックする前に基本として確認しておきましょう。
首の筋肉の部位別の名前&作用
それでは首にある筋肉の内13種類をそれぞれの名前と作用と合わせて解説します。この解説で首にある筋肉について理解してから、最後に紹介する筋トレメニューに挑戦しましょう。
胸鎖乳突筋
胸鎖乳突筋とは首の表面にある筋肉で、側頭部から鎖骨・胸骨にかけて付いています。頭を前や横に倒したり、頭部の回旋させることがこの筋肉の主な作用です。
ちなみにこの胸鎖乳突筋が固まってしまうと、首回りの血行が悪くなります。そして血行が悪くなることで老廃物が溜まったり、それによって頭痛やめまいなどのトラブルが起こることも珍しくありません。そのため頭痛などで悩んでいる人はしっかりと首の筋トレやストレッチを通して、凝り固まるのを防ぐようにすると良いでしょう。
(胸鎖乳突筋のストレッチについては以下の記事も参考にしてみてください)
胸鎖乳突筋のストレッチ!短期間で首こり・肩こりが解消するコツを解説!簡単な筋トレも
出典:Slope[スロープ]
僧帽筋
僧帽筋は首の後ろ側から背中まで広がる大きな筋肉です。肩甲骨を上に挙げたり、内側に寄せたりする肩甲骨の動きに関わっています。また頭部を後ろや横に傾けたり、回旋させる時にも働きます。
この僧帽筋の特に上部は首と肩の付け根部分に広がっていることもあって、固くなってしまうと首こりや肩こりの原因となるのです。ただ、胸鎖乳突筋と同様に筋トレやストレッチなどで血行を良くしておくと筋肉が固まるのを防げます。
そのため首回りのコリなどに悩んでいる方は後ほど紹介する首の筋トレを参考に積極的に動かすようにすると良いでしょう。
(僧帽筋の鍛え方については以下の記事も参考にしてみてください)
僧帽筋の鍛え方!自重〜器具使用の筋トレメニュー&背中をデカくするコツを解説
出典:Slope[スロープ]
菱形筋
菱形筋は先ほど紹介した僧帽筋の深層部に位置する首の筋肉です。脊椎や頚椎などから肩甲骨の内側にかけて付いています。この筋肉は肩甲骨を内側に寄せたり、下に回旋させたりするのが主な作用です。
ちなみに巻き肩や猫背が気になる方はこの菱形筋が弱っている可能性があります。なぜなら菱形筋が弱ると肩甲骨を寄せられなくなって、巻き肩や猫背になってしまうからです。そのため姿勢を改善したい人は、この菱形筋を後ほど紹介する筋トレメニューでしっかりと鍛えておきましょう。
肩甲挙筋
肩甲挙筋は肩甲骨を挙上したり、下向きに回旋させたりするのを作用とする首の筋肉で、頚椎から肩甲にかけて付いています。何らかの理由で姿勢が崩れたことによって肩こりが起きた場合、この肩甲挙筋に痛みなどの違和感を覚えることが多くあります。
筋トレメニューからみたい方はこちら斜角筋群(前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋)
斜角筋群は上の解剖図の通り、前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋という名前の筋肉から構成されています。肋骨の上部と頚椎に付いていて、頭部を前や横に倒すのが主な作用です。また肋骨を引き上げて息を吸い込む時のサポートの役割も果たしています。
この斜角筋群が何らかの理由が固まってしまうと、首の筋肉の間を通る血管や神経を圧迫してしまいます。その結果、首こりや肩こり、腕のしびれ、筋力の低下など様々なトラブルを引き起こすことがあるのです。
大きな筋肉ではありませんが、他の首の筋肉と同様に固まらないようにケアをする必要があると言えるでしょう。
後頭下筋群(大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)
後頭下筋群は大後頭直筋・小後頭直筋・上頭斜筋・下頭斜筋によって構成されている首の後ろ側にある筋肉群です。頚椎や後頭部にかけて付いていて、頭部を上や横に向けたり、頸部を回旋させる作用を持っています。またこの筋肉群は目の動きと合わせて収縮する特徴も持っています。
そのためパソコンなどを長時間使って眼精疲労が起こると、この首の筋肉も連動して固まり、首こりや肩こりの原因になったりもするのです。そのためデスクワークなどで目を良く使う方にとっては重要視したい首の筋肉の1つだと言えます。
椎前筋群(頚長筋、頭長筋、前頭直筋、外側頭側筋)
椎前筋群は頚長筋・頭長筋・前頭直筋・外側頭側筋から構成されていて、頚椎などから後頭部にかけて付いています。頭部を前や横に倒したり、回旋させたりするのがこの筋肉群の主な作用です。この首の筋肉を筋トレやストレッチでアプローチすると、スマホなどが原因で起こる顎が前に出た姿勢の改善につながります。
舌骨下筋群(胸骨舌骨筋,胸骨甲状筋,甲状舌骨筋,肩甲舌骨筋)
舌骨下筋群は胸骨舌骨筋・胸骨甲状筋・甲状舌骨筋・肩甲舌骨筋から構成されている首の筋肉群です。顎の下側に付いている筋肉で、主に口を開いたり、頭部を前側に動かすのが主な作用です。
ちなみに先ほど紹介した椎前筋群と同じくこの筋肉が上手く使われずに固まってしまうと顎が前に出る姿勢の原因になります。そのためスマホなどを良く使う方はしっかりと首の筋トレやストレッチでケアをするように心がけると良いでしょう。
頭板状筋
頭板状筋は頚椎から後頭部にかけて付いている首筋肉で、左右合わせてVの形をしています。この筋肉は頭部を回旋させること、そして上を向かせるのが主な作用です。この頭板状筋が固まってしまうと特に頭頂部を中心とした頭痛の原因にもなります。
頸板状筋
頸板状筋は胸椎から頚椎にかけて付いている首の筋肉で、頭を上に向けたり、回旋させるのが主な作用です。この頸板状筋も先ほど紹介した頭板状筋と同じく固くなると頭痛の原因となったりします。特に下を向いて筋肉が収縮している時間が長いと固くなりがちなので、頭痛に悩む人は首の筋トレやストレッチで適切にケアしておくべきでしょう。
広頚筋
広頚筋は胸の上部から下あご付近にかけて広がるように付いている首の筋肉です。口角を下げるのがこの筋肉の主な作用です。また表情筋にも関わっている筋肉なので、筋トレで鍛えることで頬周りのたるみなどの改善が期待できます。
頭半棘筋
頭半棘筋は頚椎や胸椎などから頭と首の後ろ側の付け根付近にかけて付いている首の筋肉です。主に頭を後ろや横に倒したり、回旋させたりするのが主な作用です。この頭半棘筋の間には後頭部の感覚を司る神経が通っているため、筋肉が過度に収縮した状態になると神経を圧迫して頭痛などを引き起こすことがあります。
顎二腹筋
顎二腹筋は下顎や側頭骨などから舌骨中間腱にかけて、2つに分かれている首の筋肉です。舌骨を前上方や後上方に持ち上げたり、下顎骨を後下方に向かって引き下げるのが主な作用です。
この顎二腹筋が固くなってしまうと顎の骨が正常に動かなくなり、耳の下あたりの顎骨に痛みが出たりします。また口がスムーズに開かなくなる場合もあるため、場合によってはしっかりとケアをする必要があります。
首の筋肉の部位別の筋トレメニュー
ここからは首の筋肉を鍛えられる筋トレメニューについて紹介します。猫背や肩こりなどの悩みを軽減する効果のある筋トレメニューもあるので、ぜひ参考にしてください。
僧帽筋の筋トレメニュー:バーベルシュラッグ
バーベルシュラッグはバーベルを持った状態で肩をすくませる動作をする筋トレメニューです。主に僧帽筋の上部・中部を鍛えられます。
▼バーベルシュラッグのやり方
①バーベルを持って、腰幅程度に足を広げて立つ
②肩甲骨を上げ、首をすくめながらバーベルを挙げる
③ゆっくりと元の位置まで戻す
このメニューでは筋力アップが目的なら1回から6回、筋肥大なら6回から12回、筋持久力アップなら15回以上で限界が来る重さが適切です。セット数については初心者は週1回3セット、上級者は週2回6セットを目安に行うと良いでしょう。
▼バーベルシュラッグのコツ&注意点
・僧帽筋を収縮してバーベルを挙げる時に顎は上げない
・手幅はだらんと下げた状態か、少し広げた程度にする
僧帽筋だけを集中して鍛えるためにも、脚の力を使わずに挙げられる重量を扱うようにしましょう。
(バーベルシュラッグのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
バーベルシュラッグのやり方!僧帽筋に必ず効くコツをビハインド・フロント別に!
出典:Slope[スロープ]
僧帽筋の筋トレメニュー:アップライトロウ
アップライトロウとは直立になった状態でバーベルを上方向に引く動作を行う筋トレメニューです。首の筋肉である僧帽筋だけではなく、三角筋も鍛えられるので逆三角形の体型を目指す人にもおすすめできます。また僧帽筋の筋力が上がることで姿勢改善にもつながるため、猫背の人などにも向いていると言えるでしょう。
▼アップライトロウのやり方
①立ったままワイドグリップでバーベルを持つ
②身体に沿わせるようにしてバーを挙げる
③ゆっくりと元の位置まで戻す
このメニューでは筋力アップが目的なら1回から6回、筋肥大なら6回から12回、筋持久力アップなら15回以上で限界が来る重さが適切です。セット数については初心者は週1回3セット、上級者は週2回6セットを目安に行うと良いでしょう。
▼アップライトロウのコツ&注意点
・肘は30度ほどで外に広げるように動かす
・バーベルは左右対称に挙げる
・肩甲骨を動かしながら筋肉収縮させる
アップライトロウはバーベルではなくダンベルやケトルベル、ケーブルなどでも行えます。そのため自分の筋トレの環境に合わせて使う道具を変えて取り組んでみてください。
ずーみー(泉風雅)
アップライトロウはバーベルで行うサイドレイズのようなイメージの種目ですが、サイドレイズよりも僧帽筋を収縮させて構いません。
(アップライトロウのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
アップライトロウのやり方!三角筋・僧帽筋に効く肩をデカくするコツ!ダンベル・ケトルベル版など
出典:Slope[スロープ]
菱形筋の筋トレメニュー:ベントオーバーローイング
ベントオーバーローイングとは、体を前傾させた状態でダンベルやバーベルを使ってローイング動作を行う筋トレメニューです。菱形筋や僧帽筋下部、また広背筋なども効果的に鍛えられ、猫背改善も期待できます。
▼ベントオーバーローイングのやり方
①バーベルを持って立つ
②股関節を曲げて、前傾姿勢になる
③前傾姿勢のまま腹部にバーベルを引く
④ゆっくりと元の位置まで戻す
このメニューでは筋力アップが目的なら1回から6回、筋肥大なら6回から12回、筋持久力アップなら15回以上で限界が来る重さが適切です。セット数については初心者は週1回3セット、上級者は週2回6セットを目安に行うと良いでしょう。
▼ベントオーバーローイングのコツ&注意点
・腰を反ったり、丸めたりしない
・肩甲骨を寄せるようにしてバーを引く
・筋肉を収縮させやすくするためにバーを深く握る
浅い角度で行うと腰が反る運動になり、収縮感はありますが意味のない動きとなる可能性が高いです。そのためベントオーバーローイングでは上体の角度は45度以上になるまで倒しましょう。
(ベントオーバーローイングのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
ベントオーバーローイングやり方!広背筋に確実に効くコツをダンベル・バーベル別に解説
出典:Slope[スロープ]
斜角筋群の筋トレメニュー:バックエクステンション
バックエクステンションはうつ伏せの状態から上体を反る動作を行う筋トレメニューです。主に脊柱起立筋を鍛えられますが、同時に斜角筋群にも刺激を与えられます。猫背の改善にもぴったりな種目なので、猫背などの悪い姿勢で悩んでいる方はぜひトレーニングメニューに取り入れてみてください。
▼バックエクステンションのやり方
①うつ伏せになる
②背中を反らせる
③ゆっくりと元の位置まで戻す
このメニューでは正しいフォームを維持できる限界の回数をこなすのを基本としてください。セット数については初心者は週1回3セット、上級者は週2回6セットを目安に行うと良いでしょう。
▼バックエクステンションのコツ&注意点
・腰を過度に反らせて、上体を挙げ過ぎない
・みぞおちや胸のあたりから反らせる
バックエクステンションでは足が浮くことを気にする方もいます。しかし、上半身が浮く反作用で足が浮いてしまうのは仕方がないことですので、特に気にする必要はないでしょう。
(バックエクステンションのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
バックエクステンションの効果&やり方!姿勢が短期間で改善されるコツ&腰痛予防も!
出典:Slope[スロープ]
頸部深部屈筋のエクササイズ:四つん這い顎引き
四つん這い顎引きはその名前の通り、四つん這いで顎を引く動作を行うエクササイズです。頸部深部屈筋に刺激を与えられ、肩こりなどの改善なども期待できます。
▼四つん這い顎引きのやり方
①四つん這いになる
②顎を引く
③ゆっくりと元の位置まで戻す
このエクササイズは30秒を1セットとして、2~3セットを目安に取り組むと良いでしょう。
▼四つん這い引きのコツ&注意点
・目線は下向きのままを維持する
・背中は曲げずに直線の状態にする
四つん這い顎引きで痛みが出る場合は、痛みが出ない範囲で動作を行うだけでも十分な効果が期待できます。
ずーみー(泉風雅)
僧帽筋をほぐしながら頸部深部屈筋を鍛えることで、首のポジションを戻して肩こりを改善できます。
(四つん這い顎引きのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
ショルダーシュラッグのやり方!僧帽筋に効かせるコツ!肩こり・猫背が改善できる!
出典:Slope[スロープ]
頸部深部屈筋のエクササイズ:バランスボール片腕上げ
1つ前に紹介したエクササイズに慣れてきたら、このバランスボール片腕上げにもチャレンジしてみましょう。このエクササイズでも頸部深部屈筋の筋肉を鍛えられ、肩こりの改善などが期待できます。
▼バランスボール片腕上げのやり方
①四つん這いで、バランスボールに頭を付ける
②片側の腕を前方向に真っ直ぐ伸ばして、ボールに乗せる
③体重をボールに対してかけていく
このエクササイズでは頭に負荷をかけた状態で30秒を1セットとして取り組みましょう。セット数については最初は1セット、慣れてきたら2~3セットを目安に行ってみてください。
▼バランスボール片腕上げのコツ&注意点
・呼吸は自然に続けたまま動作を行う
・両腕に偏りが出ないように、バランスよく取り組む
このエクササイズで鍛えられる頸部深部屈筋は、長時間のデスクワークなどで弱りやすいです。姿勢や肩こりを悪化させないためにも時間を見つけてエクササイズに取り組むようにしましょう。
頸部深部屈筋のエクササイズ:バランスボール両腕上げ
このバランスボール両腕上げはバランスボール片腕上げのレベルをさらに上げたエクササイズです。頸部深部屈筋が十分に強化されている必要があるので、筋力がアップしてきてから取り組むようにしましょう。
▼バランスボール両腕上げのやり方
①四つん這いで、バランスボールに頭を付ける
②両腕を前方向に真っ直ぐ伸ばして、ボールに乗せる
③体重をボールに対してかけていく
このエクササイズでも頭に負荷をかけた状態で30秒を1セットとして取り組みましょう。セット数については最初は1セット、慣れてきたら2~3セットを目安に行ってみてください。
▼バランスボール両腕上げのコツ&注意点
・背筋を伸ばした状態を維持する
・呼吸は止めずに自然に続ける
バランスボール両腕上げにも慣れてきたら、今度は片膝立ちやつま先立ちなどの応用バージョンにも挑戦してみてください。
ずーみー(泉風雅)
僧帽筋は迷走神経という脳から直接出る神経で支配されていることから、肩こりが起こると気分が落ち込んでしまう原因ともなります。頸部深部屈筋のエクササイズで肩こりを解消し、快適な生活を送りましょう。
複雑な首の筋肉の名前&作用を完璧に覚えよう!
ここまで首にある筋肉の名前や作用、また筋トレメニューなどについて紹介しました。複雑な首の筋肉は名前・作用を理解することでさらに効率よく鍛えられます。そのため効果的な筋トレをしたい人はこれを機にしっかりと首の筋肉とそれぞれの作用について覚えてみましょう。