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筋トレ・運動の知識

筋トレの健康効果がもはや薬!論文を元にメリット〜メニュー・負荷調整まで解説!

2020年11月11日

筋トレには体やメンタルの健康面でいくつもの科学的メリットがあります。しかし、毎日ハードなウエイトトレーニングをして体を酷使してしまうと効果も半減するでしょう。今回は、具体的な健康効果や効率的な自宅での自重トレになる筋トレメニュー、負荷調整などを解説します。

【監修】パーソナルトレーナー Riku

法政大学スポーツ健康学部出身。パーソナルトレーナー兼ミラーフイットコンテンツディレクター。2021年6月にパーソナルトレーニングジム『SPICE GYM』を中目黒・恵比寿エリアにて開業予定。
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筋トレには健康促進の効果があるって本当?

健康のために筋トレを始めたものの、風邪をひきやすくなる、体調を崩しやすくなる、などの噂を聞いて精神的な不安を持つ方も多いようです。しかし、筋トレが体に悪いというのは昔の話。近年では数多くの健康効果が科学的に証明されています。

今回の記事では、筋トレによる健康効果の論文・研究成果を要約して解説します。身体の健康をはじめ見た目やメンタルヘルスにもおよぶ、たくさんの効果を知ることで不安も解消されるでしょう。

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(筋トレのメンタルへの効果については以下の記事も参考にしてみてください)

筋トレが与える健康効果

近年の研究で「運動は第2の薬」とまで言われるようになりました。特に筋肉から分泌される数十種類のホルモンの健康効果が高く評価されています。これまで発表された論文・研究成果に基づいて、筋トレやホルモンが身体や精神に与える健康効果をみてみましょう。

大腸がんのリスクをおさえる

筋肉が分泌するホルモンの中でも代表的な「SPARC(スパーク)」は、大腸がんを抑制する効果がよく知られています。大腸がんは、がん全体の死因の多くを占め、女性ではトップ、男性でも3位です。

正常な細胞は、何らかのきっかけでACF(前がん細胞)に変化することがあります。そのACFがポリープとなってやがてがんへと進行するのですが、SPARCは細胞がACFの段階でアポトーシス(細胞死)を誘導し、結果として大腸がんのリスクをおさえることになるのです。

動脈硬化を防ぐ&脂肪燃焼

かつて脂肪細胞や肝臓から分泌されると思われていた「アディポネクチン」というホルモンは、筋肉でも作られていることがわかりました。アディポネクチンは、血管内の傷を修復したり、血管を拡張する働きがあり、それによって動脈硬化を防ぐ作用が期待できます。

さらにアディポネクチンは「痩せるホルモン」の異名を持ち、脂肪を燃焼させる働きもあります。脂肪から分泌されるアディポネクチンの量は、太った人ほど少ないので、気になる場合は筋トレなどで補うと良いでしょう。

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(脂肪燃焼効果があるマウンテンクライマーの効果&やり方については以下の記事も参考にしてみてください)

内臓脂肪を減少させる

筋肉から分泌されるホルモンで、内臓脂肪を減らす作用があるのは「IL―6」と「FGF―21」が有名です。IL―6は、肝臓で脂肪を分解、FGF―21は同じく肝臓で脂肪を燃焼させる働きがあります。

内臓脂肪の分解・燃焼によって見た目が劇的に変わることはありませんが、肥満や糖尿病を抑制する、肝硬変につながる脂肪肝を改善する、といった効果が期待できます。

筋肉の働きで記憶力が高まる可能性

2016年、アメリカ国立老化研究所の研究チームは「筋肉の働きで記憶力が高まる可能性がある」と発表しました。NHKスペシャルでも取り上げられた研究報告です。

記憶力を高める可能性を秘めたホルモンは「カテプシンB」です。筋トレなどの筋肉刺激で放出されるカテプシンBがより多く分泌される人ほど、記憶力テストの成績が良かったとのこと。記憶を司る脳の海馬に関わる可能性が示唆されています。

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(筋トレの脳の活性化効果については以下の記事も参考にしてみてください)

実験では20分の筋トレで記憶力向上

アメリカ・ジョージア工科大学の研究では、健康な若い成人46名を対象に記憶力に関する実験を行いました。被験者は、エクササイズマシンに座って足に負荷をかけた筋トレを行うグループと、ただ座ったままの2つのグループに分けられ、20分ほどパソコン上の写真を眺めます。

2日後、写真がどの程度記憶に残ったかを集計しました。すると、レッグマシンに座って筋トレを行っていたグループの方が、対照グループより記憶力が10%上回ったという結果となったのです。この実験は学術雑誌・Acta Psychologicaでも掲載されました。

(30分でも効果が出るメニューの組み方については以下の記事も参考にしてみてください)

認知機能を改善

カナダでは、認知機能に問題のない4,615名の高齢者に5年間の追跡調査が行われています。調査では、ウォーキングよりも高い強度の運動を週3回以上行う人は、運動習慣のない人より認知症の発症リスクが低かった、という結果になりました。

この他にも多くの実験で、比較的高い強度の運動による認知機能の改善が報告されています。改善に関与するホルモンは「Irisin(アイリシン)」「IGF―1」「アディポネクチン」などで、製薬メーカーの参入もあり、世界中でさかんに研究が行われているのが現状です。

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抗うつ剤と似た効果

ベルン大学・スポーツ科学センターの研究チームは、合計4万を超える人々を対象にした、運動が不安障害とうつ病に与える影響に関するデータをまとめました。

そこで確認されたのは「スポーツや身体活動は、抗うつ薬と同じ神経生理学的変化を引き起こす」こと。定期的な運動はうつ病の症状を軽減すると結論づけられました。

見た目がメンタルを支える

人は見た目で判断するな、と言われるくらい人は見た目を気にします。外見が整うことで得られるメリットは、メンタル面でも多いです。

筋肉は鍛え続けることで肥大化したり、体が引き締まったりします。盛り上がった筋肉やシックスパッドなど、憧れのボディが手に入れば自信につながるでしょう。また、健康的な見た目は周囲の人からの好感度もあげてくれます。

(筋トレで自信がつく理由については以下の記事も参考にしてみてください)

脳が分泌するメンタルにいい5つのホルモン

筋トレなどの運動をすると、脳内でもたくさんのホルモンが分泌されます。中でもメンタルに良いとされているホルモンの一例は以下の通りです。

・気分が向上「エンドルフィン」
・やる気や闘争心向上「テストステロン」
・精神安定、耐ストレス「セロトニン」
・脳や心が癒やされる「オキシトシン」
・モチベーション向上「ドーパミン」

厳しいトレーニングでメンタルを強化するといった精神論をよく聞きますが、適度な筋トレでもホルモンの助けによってメンタルヘルスの向上につなげることができます。

厚生労働省では生活習慣病予防に推奨

出典:https://www.mhlw.go.jp/index.html

筋トレの健康効果がさかんに研究され始めたのは2000年以降です。以後多くの成果が認められ、国の施策「健康づくりのための運動指針 2006-生活習慣病予防のために-」(厚生労働省:2006)でも筋トレが推奨されています。

ハードな筋トレは健康に悪い?

たくましい腕や厚い胸板など見た目をよくすることを意識して、ハードな筋トレを行っている人は多いです。しかし、ハード過ぎる筋トレは健康に害をおよぼす恐れもあります。

過度な運動は一時的に免疫力を下げる

「筋トレは不健康」と言われていた一番の理由は、運動後におこる一時的な免疫力の低下によるもの。免疫機能をもつ白血球が、トレーニングによって損傷した筋繊維などに集まって修復作業におわれるためです。

筋トレがハードなほど修復する力が必要になるため、適度な運動量であれば向上する免疫力も、過度な筋トレでは逆に低下してしまうのです。修復が終われば免疫力は戻りますが、それまでの間は、体を温めたりマスクを着用するなど病気への予防措置を忘れないようにしましょう。

ストレスホルモンが免疫力を下げる

ハードな筋トレは体に強いストレスを与えるため、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールやカテコールアミンの分泌が高くなります。これらのホルモンはストレスを軽減させる作用がありますが、一方で、免疫細胞の働きをおさえるため免疫力が下がるのです。

十分な休息を取ることで免疫力は回復しますが、無理をし続けると健康に害をおよぼす恐れもあります。ハードな筋トレをする場合は、体調管理もしっかり行ってくださいね。

(筋トレのやり過ぎの判断基準については以下の記事も参考にしてみてください)

健康効果を狙う筋トレの負荷調整・頻度・時間

では、健康効果を狙う場合の筋トレはどの程度行えば良いのでしょうか?筋トレの負荷調整・頻度・時間の順で確認していきましょう。

健康目的の筋トレの負荷調整は体と相談

最適な筋トレの強度は個人差が大きく出るところですが、健康効果を狙う場合は、比較的軽い強度の筋トレで良いでしょう。筋肉に刺激を与える程度でもホルモンの分泌は促されるので、肉体的にも精神的にも激しいトレーニングで自分を追い詰める必要はありません。

腹筋や背筋、腕立て伏せ、スクワットなどから、自分がなんとか20~30回できる筋トレを選びましょう。健康が目的なら、無理して重いダンベルを持ち上げることより、長く継続することの方が大事です。

(見た目を重視した負荷調整については以下の記事も参考にしてみてください)

健康目的でも頻度は週2回のペースで

筋トレは超回復の理論から、週2日のペースが効果的だとされています。全身を1度に鍛えるなら、週2日のペースでトレーニングしてそれ以外の日は休息にあてましょう。部分的に鍛えるなら、各部位を週2日にして毎日行ってもOKです。

例えば、月曜日と木曜日は腕を鍛える腕立て伏せや懸垂、火曜日と金曜日は足を鍛えるスクワット、水曜日と土曜日は腹筋といった具合です。

(超回復については以下の記事も参考にしてみてください)

筋トレの時間は30~90分

筋トレの時間は、インターバルを含め30分~90分が理想です。筋トレは筋肉を酷使する運動なので長時間行うことはリスクをともないます。90分を超えるトレーニングを行いたい場合は、専門知識をもったトレーナーに相談することをおすすめします。

時間帯については「午前中がいい」「午後が効果的」など専門家の間でもいろいろな見解があります。精神的に追い詰められないよう、ライフスタイルに合わせて続けられる時間帯を選びましょう。ただし、消化が悪くなるため食後30分~1時間はNGです。

健康効果が高い筋トレのメニュー

筋トレのメニューの選びでは、これが一番正しいというものはありません。自分にとって効果のあるものを選ぶことが大切です。そのためには肉体的にも精神的にも自分の限界を知っておくといいでしょう。

健康目的で始める筋トレメニューの組み方

健康目的で筋トレのメニューを組む場合、始めは自分が軽いと感じる筋トレで、筋肉を刺激し目覚めさせることをポイントにおきましょう。かっこいいからといって、いきなり無理して重いダンベルを持ち上げるのはNGです。

慣れてきたら、徐々に回数を増やしたり、メニューを変えたりしていきましょう。筋トレは、フラフラになりながら回数をこなすより、少ない回数でも正しいフォームで行う方が効果的です。肉体的にも精神的にも無理のない範囲でメニューを組みましょう。

スロートレーニング(スロトレ)で下腹部スッキリ!【クランチ】

スロートレーニングは、ひとつひとつの動きをゆっくり休みなく行うことで、筋肉を効率よく鍛えることができる運動方法です。軽い負荷の動きでも大きな負荷のトレーニングと同じような効果が得られます。重要なポイントは以下の3点です。

・数秒かけてゆっくり動く
・力を入れ続ける
・動きを止めない

この動画では腹筋を鍛えるクランチのやり方を紹介していますが、腕立て伏せやスクワットなど他の種目でも応用できます。回数は自分がきついと感じる回数。個人の体力に合わせることがコツです。

【初心者向け】1分30秒の大胸筋トレーニング!腕立て伏せができなくてもOK!

この動画で紹介されているのは、筋肉の中でも大きい部類の大胸筋です。健康効果もさることながら、堂々とした見た目をもたらすのにも効果的です。負荷の強弱も選べて初心者でも取り組みやすい解説になっています。

動画内に必要なタイマーが設置されていますので、お手軽に1分30秒のトレーニングができます。ちょっとした隙間時間におすすめです。

【筋トレ】スクワットの正しいやり方とよくある間違いを詳しく解説!

筋トレメニューの定番とも言われるスクワットは、カロリーの消費が大きい自重トレーニングです。お尻(大臀筋)、太もも(大腿四頭筋・ハムストリング)など主に下半身を鍛えることができます。

こちらの動画では、基本のスクワットを丁寧に解説しています。足の幅や膝を曲げる方向などの細かい点を参考にしましょう。基本をしっかりおさえることで、足幅などを変えたバリエーション種目にも取り組めます。

ウエイトトレーニングを行う際のコツと注意点

ウエイトトレーニングを行う際のコツと注意点はたくさんありますが、特に筋トレを始めたばかりの人に気を付けて欲しい点について紹介します。

・筋トレ前はウォームアップをする
・主なケガの原因は器具の重量が重すぎや間違ったフォーム
・呼吸は力を入れる時に息を吐いて力を緩める時に吸う
・大きな筋肉(大胸筋、背筋、腹筋など)から鍛える
・有酸素運動とセットにするとより効果的
・筋トレ後はストレッチでケアする

(筋トレ後のストレッチについては以下の記事も参考にしてみてください)

筋トレで健康効果が出るまでの期間は?

筋トレによる健康効果を実感するにはある程度の期間が必要となります。一般に普段の生活で動きが軽くなったり、階段の上り下りが楽になったりするのは1~2ヶ月くらい。健康診断の「血糖値」「血圧」などの項目で改善が見られるのは、3~6ヶ月が1つの目安です。

健康効果は、ライフスタイルや遺伝の影響を受けるため個人差が大きいです。上記の期間より長くかかる場合もありますが、めげずに頑張ってください。次の章では継続するポイントを紹介します。

(筋肥大までの期間については以下の記事も参考にしてみてください)

健康の為に筋トレを継続するポイント

筋トレが健康目的であれば、ここまでやったら終わり、という線引きはありません。精神面も含めて長く続けていくためにはいろいろと工夫が必要です。

筋トレ仲間を作ってメンタル面をカバーする

仲間を作ると、生活の中で筋トレの優先順位が上がり自然と継続しやすくなるでしょう。スポーツジムに通うほか職場や学校、ネットで同志を集うなど見つけ方はたくさんあります。

仲間と楽しく会話を楽しんだりライバルとして競い合ったりするなど、孤独になりがちなトレーニングをメンタル面で支えてくれますよ。

なりたい体を具体的にイメージする

筋トレを続けていると、見た目など体にいろいろな変化があらわれます。体の動きが軽くなったり、引き締まったり、メタボと呼ばれなくなったりする可能性もあるでしょう。

あなたはどんな体になりたいですか?なりたい体を具体的にイメージすると筋トレを続ける気持ちも少し出てきますね。

筋トレの記録を残す

筋トレで行ったメニューや自分の写真、健康の記録などをノートやアプリに残しておくと、それは1つの財産になります。長く続けるほど貴重になり、自分にも自信がついてくるでしょう。その自信がモチベーションの維持につながります。

(記録を残す効果については以下の記事も参考にしてみてください)

筋トレで健康効果を実感した人の体験談

では実際に、筋トレで身体やメンタルに効果があった人の体験談を見てみましょう。

筋トレで健康的に



こちらは健康と体重増量を目的に、トレーナーに見てもらったり、有酸素運動を取り入れたりしながら筋トレをしている実例です。その成果で腕回りなど見た目がたくましくなっている上に、精神の健全化なども達成しています。

健康にもリンク



筋トレが健康にリンクしているというのは、日頃の健康効果を実感しているからこそ出てくる言葉ではないでしょうか。こちらはプロフィールによると、自宅の庭【庭ジム】で筋トレしたり教えたりしているそうです。天気が良い日は屋外で筋トレというのもメンタル面に良さそうです。

筋トレで血糖値が改善



血糖値は健康診断で異常値が指摘されることが多い項目の1つです。血糖値が低すぎると低血糖、高すぎると高血糖を引き起こし、動悸や動脈硬化、糖尿病の引き金になることもあります。筋トレで血糖値の数値が改善されたと言うことは、病気を予防できたとも言えます。

1回15分を続けた成果

出典:https://kaigaihanno.com/kaigai/muscle-attractiveness/
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個人ブログ

断言できるが15分の筋トレ週3回くらいなら誰でも継続できるし挫折しない。ずっと家に引きこもっていたい生来怠惰な私でもできたくらいなのだから。

こちらはベンチプレス・懸垂・ハンギングレッグレイズの3種目を所要時間15分で、週3回やり続けたそうです。精神的にも楽な短い時間のトレーニングですが、見た目にしっかり筋トレの効果が出ています。やはり継続することが大切ということでしょう。

無理しないのがこつでした

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CLUB Panasonic30代

初めて暫くは息が上がってたいした運動にならなかったけど、そのうち長時間続けられるようになりました。 基礎代謝が上がったのか散歩するにも早足で長時間出来るようになったので、効果は抜群。 ただし、途中でやめたら即戻ったので、最低3ヶ月は続けるようかも?その際絶対無理しないのがこつでした

無理をしない筋トレで抜群の効果が出たようです。筋トレというと、肉体的にも精神的にもきつそう、苦しそうといったイメージをもたれがちですが、無理をしなくても充分効果が現われるという良い例です。

筋トレを習慣にして健康的な体を手に入れよう

筋トレの健康効果を紹介しましたが、今後の研究でさらなる効果が発見されていくことでしょう。この効果を手に入れるためには継続的な筋トレが必要です。

長く続けることは大変ですが、自分にあった継続方法を見つけたり、メニューを組んだりすることを楽しめるといいですね。ぜひ、筋トレを習慣にして健康的な体やメンタルを手に入れてください。