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筋トレ・運動の知識

速筋・遅筋の違いは?鍛え方は?鍛えるメリット〜部位別の割合など徹底解説

2020年05月28日

筋肉には速筋と遅筋があり、2つの筋肉には大きな違いがあります。各特徴を知っておくと効率の良い筋トレができるようになり、競技に生かしていくことも可能です。速筋・遅筋の特徴や割合、メリット・デメリットを解説するとともに、速筋・遅筋の鍛え方をご紹介します。

【監修】パーソナルトレーナー 高津諭

トレーニング指導歴22年。大阪・兵庫を中心に活動するパーソナルトレーニングを提供しています。現在、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会のマスタートレーナーとして、またJOTスポーツトレーナー学院の校長として後進の育成、指導にも尽力している。HP / ブログ / Twitter

速筋・遅筋繊維の違いとは?

筋肉の細胞のことを筋線維といい、筋線維には速筋(そっきん)と遅筋(ちきん)の2種類があります。速筋と遅筋にはそれぞれに違う特徴があり、この違いを理解しておくと今後の筋トレやスポーツに大きく活かすことが可能です。速筋と遅筋、それぞれの特徴と違いを見ていきましょう。

速筋とは

速筋は、瞬発力を得意とする筋肉です。主に身体の表面に近い部分に位置するアウターマッスルに多く含まれており、見た目が白いことから白筋(はっきん、はくきん)とも呼ばれています。

短距離走・ボール投げ・ボール蹴り・重量挙げ・負荷が大きい筋トレ・垂直飛びなど瞬間的に大きな力を必要とするスポーツ(無酸素運動)に活躍しますが、持久力が無いためパワーは長続きしません。鍛えれば鍛えるほど太くなる性質があるので、筋肥大を目指したい人は速筋を効率よく鍛える筋トレをおすすめします。

(速筋の鍛え方については以下の記事も参考にしてみてください)

遅筋とは

遅筋は、持久力を得意とする筋肉です。主に身体の内側に位置するインナーマッスルに多く含まれていて、見た目が赤いことから赤筋(せっきん)とも呼ばれています。

マラソン・水泳・ウォーキング・エアロビクス・サイクリングなどの長い時間身体を動かすスポーツ(有酸素運動)には遅筋が活躍しますが、速筋と違って鍛えても太くはなりません。

(遅筋の鍛え方については以下の記事も参考にしてみてください)

速筋・遅筋の割合が多い筋肉部位

筋肉の部位によって速筋の割合が多い筋肉と遅筋の割合が多い筋肉があります。どの部位に速筋があり、どの部位に遅筋があるのかを把握し、これからの身体づくりに役立てましょう。

速筋の割合が多い筋肉部位

出典:https://bukiya.net/blog/musclename/

速筋の割合が1番多い筋肉は二の腕にある上腕三頭筋で、約67.5%が速筋です。いわゆる「力こぶ」は上腕三頭筋が筋肥大した結果であり、「速筋は鍛えれば太くなる」ことを実証しています。次に速筋が多いのは、太ももの前側にある大腿直筋で速筋の割合は約65.6%、次いで首の筋肉・胸鎖乳突筋で速筋の割合は64.8%になっています。

(上腕三頭筋の筋トレ&ストレッチメニューについては以下の記事も参考にしてみてください)

遅筋の割合が多い筋肉部位

出典:https://bukiya.net/blog/musclename/

1番遅筋の割合が多いのは、太もも裏側にあるヒラメ筋です。約87.8%が遅筋で形成されています。次はすねにある筋肉・前脛骨筋で遅筋の割合は約73%。次いで太もも裏にある筋肉・大腿二頭筋で、割合としは約66%が遅筋です。

(ヒラメ筋の筋トレメニューについては以下の記事も参考にしてみてください)

速筋と遅筋の割合は先天性

速筋と遅筋の割合には個人差があり、その割合は生まれた頃から決まっています。つまり、どちらが多いかを知ることで自分に合うスポーツを見つけることができるのです。

とはいえ、速筋が多い人は持久力を必要とするスポーツに向いていないとは言い切れません。比率を変えることは難しいですが、それぞれの筋肉を肥大、もしくは強化することは可能です。目標に合わせたトレーニング方法を取り入れるなど、対策を練って各種目へと活かしましょう。

速筋が多い人の特徴

遅筋よりも速筋が多い人は、次のような特徴を持っています。

・瞬発力がある
・短距離走が得意
・筋肉質
・代謝が良く冬でも汗をかきやすい
・太りやすい

速筋が多い人は、短距離走・重量挙げ・砲丸投げ・剣道・柔道など、瞬発力が必要な競技に向いています。また、瞬発力はボールを蹴る、投げる、打つなどの動作にも必要です。サッカー、野球、バスケットボール、バレーボールなどにも大いに活かすことができます。

遅筋が多い人の特徴

速筋よりも遅筋が多い人は、次のような特徴を持っています。

・持久力がある
・長距離走が得意
・太りにくい

遅筋が多い人は、マラソン、水泳、トライアスロンなど持久力が必要な競技に向いています。また上記で挙げたサッカーや野球、バスケットボールやバレーボールなどは速筋が必要な反面、持久力も必要です。速筋と遅筋、両方鍛えると筋肉バランスの良い身体になり競技に活かすことができます。

速筋と遅筋の割合を調べる計算方法

速筋と遅筋、どちらが多いか分からない人は次の計算方法で速筋と遅筋の割合を確かめてみましょう。

▼速筋の割合を出す計算方法

①50メートルを何秒で走れるか記録を出す
②12分間走(クーパー走)で何メートル走れるか記録を出す
③「-59.8+69.8×(50m走の秒速÷12分間走の秒速)」に当てはめる

例えば、50メートルを8秒で走れる人は秒速6.25m、12分間走で2,500メートル走れる人は秒速3.47mになります。

これを上記の式にあてはめると-59.5+69.8×(6.25÷3.47)=66.14%となり、速筋が66.14%であることが分かります。速筋の割合が50%を超えていれば、遅筋よりも速筋が多いタイプだということがわかります。

速筋・遅筋の鍛えるメリット

瞬発力アップ【速筋を鍛えるメリット】

速筋を鍛えると、瞬発力が良くなります。筋トレ・短距離走・球技など早く動いたり、爆発的に大きなパワーを出したり、短時間に濃縮したエネルギーを使う競技を行っている人は、速筋を鍛えて瞬発力をアップさせましょう。

(瞬発力トレーニングについては以下の記事も参考にしてみてください)

筋肥大が効果がある【速筋を鍛えるメリット】

速筋は鍛えると太くなる性質があります。ムキムキのマッチョ。細マッチョ、引き締まった足やお尻、肩や背中に筋肉がついたかっこいい後ろ姿など、筋肥大した男らしい身体を手に入れたい人は速筋を重点的に鍛えることをおすすめします。

(筋肥大については以下の記事も参考にしてみてください)

持久力アップ【遅筋を鍛えるメリット】

遅筋を鍛えると、持久力がアップします。マラソン、ウォーキング、水泳、サイクリングなど長い時間をかけて行う競技を行っている人は、遅筋を鍛えて各競技に活かしましょう。

ダイエット効果がある【遅筋を鍛えるメリット】

私たちの身体の中には無数の細胞があり、細胞の中にはミトコンドリアという小器官があります。ミトコンドリアはATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを生産しており、ATPを使って身体を動かしたり、筋肉を強化したり、臓器を動かしたりする生命維持のために役立てられます。

身体にとって無くてはならない存在・ATPの原材料は、主に糖・脂肪・酸素です。体内の糖や脂肪を燃やしたい人は、有酸素運動を行って体内にたくさんの酸素を送り込みましょう。糖・脂肪・酸素でATPが生産でき、ダイエットはもちろん健康維持効果にも繋げらえます。

健康維持効果【速筋・遅筋を両方鍛えるメリット】

筋肉量が1番多いのは20代で、30代以降は少しずつ減少していきます。特に速筋は減少量が多く、有酸素運動だけを行っているとどんどん減っていってしまいます。

健康体をキープするためにも、速筋と遅筋の両方をバランス良く鍛えていきましょう。有酸素運動を行ってATPを生み出し、生み出されたATPを筋トレに使えば、速筋も遅筋も両方鍛えられ身体の健康維持にも役立ちます。

【速筋】の鍛え方

①スピードと負荷を意識した筋トレ 【速筋の鍛え方】

速筋を鍛えるのに1番有効なのは、速さを加えた筋トレです。筋トレにスピードを加えると、通常の筋トレよりも瞬発力アップに効果を発揮しやすくなります。

とはいえ、これまで筋トレを行っていなかった人がいきなり速さを加えた筋トレを始めるのは危険です。まずは自分の身体の重みを利用した自重筋トレを行い、慣れてきたらダンベルやバーベル、ケトルベルなどの負荷を加え、そこから速さを加えるなど段階的に筋力をアップさせていく方法をおすすめします。

筋肥大を目指したい人は、筋トレを行うのと同時に食事内容も見直していきましょう。食事を見直せば筋肉がより強化され、健康維持にも効果を発揮します。

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②上腕三頭筋を鍛える【速筋の鍛え方】

上腕三頭筋は速筋の割合が多く、しっかり鍛えれば筋肥大したかっこいい二の腕がゲットできます。上腕三頭筋を鍛える筋トレには様々なものがありますが、ここでは器具やマシンを使わずに行え、より上腕三頭筋にアプローチするナロープッシュアップのやり方を解説します。

▼ナロープッシュアップのやり方

① 両手とつま先を床につけて身体を浮かせる
② 手幅を肩幅程度にまで狭める
② 肘を曲げて身体を床に近付ける
③ 元の体勢に戻る

ナロープッシュアップは、通常のプッシュアップ(腕立て伏せ)よりも手幅を狭くすることで上腕三頭筋にアプローチする筋トレです。難しい場合は、通常のプッシュアップから始めてみてください。

▼ナロープッシュアップのコツ&注意点

・腰を曲げたり反らせたりしないように気を付けましょう
・肘を曲げる時は肩甲骨を寄せるイメージで行ってください

ナロープッシュアップに慣れてきたら、より負荷が強いプッシュアップにチャレンジしてみましょう。足を椅子などに乗せて行うデクラインナロープッシュアップ、手幅をグッと狭めるダイヤモンドプッシュアップなど様々なバリエーションがあります。まずは回数よりも正しいフォームで行うことを意識して頑張ってみてください。

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ずーみー(泉風雅)

肘を曲げ伸ばしするときに小指側の小指球(チョップをする場所)に力を入れると上腕三頭筋によりアプローチできます。

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③大腿直筋を鍛える【速筋の鍛え方】

太ももの前側の筋肉・大腿直筋も速筋の割合が多い筋肉です。大腿直筋を鍛えると、急な方向転換や身体の動きにブレーキをかける動作に効果を発揮します。ここでは大腿直筋を鍛えながら有酸素運動効果もあるフロントスクワットのやり方を解説します。

▼フロントスクワットのやり方

① 足を肩幅よりやや広めにして直立する
② お尻を引きながら膝を曲げる
③ 膝の角度が90°まで曲がったら元の姿勢に戻る

筋肥大を目的に行う場合は8~12回で限界がくる負荷で行うことが目安です。まずは正しいフォームで限界の回数まで行いましょう。筋トレ初心者の方は1週間に1回×3セット、上級者の方は1週間に2回×6セットを目安に頑張ってみてください。

▼フロントスクワットのコツ&注意点

・ 重心は足の親指の付け根・小指の付け根・かかとを結んでできる三角形の真ん中に置いてください
・ 膝を曲げる時に腰が丸まらないように気を付けましょう
・ 膝を曲げる時には膝が外側や内側に向かないように気を付けましょう

正しいフォームで行わないと、膝や腰を痛める恐れがあるので注意してください。慣れてきたらダンベルを持って行うダンベルスクワット、バーベルを担いで行うバーベルスクワットにも挑戦するなど、負荷を大きくしていきましょう。

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ずーみー(泉風雅)

スクワットには様々な種目がありますが、全てのスクワットに重要なのは「足の中央に重心を置く」「腰が曲がらないようにする」「膝を曲げる時に膝とつま先の向きを一致させる」の3点です。こちらの3点を意識しながら行いましょう。

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【遅筋】の鍛え方

①有酸素運動を取り入れる【遅筋の鍛え方】

遅筋を鍛えるのに最も有効なのは、マラソン、水泳、踏み台昇降、サイクリングなど長時間の運動を取り入れることです。これまで運動を行う習慣が無かった人は、ウォーキングや踏み台昇降など負荷が小さいものから始めて遅筋を鍛えることをおすすめします。

何より重要なのは、継続して遅筋を鍛えるトレーニングを続けることです。有酸素運動をライフスタイルの習慣にすれば、遅筋が鍛えられるだけでなく痩せやすい身体をキープすることもできます。

②負荷が小さい筋トレを行う【遅筋の鍛え方】

速筋を鍛える時には負荷が大きい筋トレが効果的ですが、遅筋を鍛えるときは負荷が小さい筋トレがおすすめです。毎日の生活の中に、身体の重みを利用して簡単に行える自重筋トレを取り入れてみましょう。ここでは隙間時間に行えるアダクションのやり方を紹介します。

▼アダクションのやり方

① 横向きに寝て、上にきた足を下の足の前に立てる
② 下の足を上げ下げする
③ 反対側も同様に行う

上側にある手は身体の前におき、身体が倒れないように支えてあげましょう。1~6回を1セットにして筋トレ初心者は1週間に1回×3セット、上級者は1週間に2回×6セットを目安に行ってください。

▼アダクションのコツ&注意点

・ 身体が前や後ろに倒れないように気を付けましょう

アダクションは遅筋のひとつ太ももの内側にアプローチする筋トレです。他の部位の遅筋を鍛える筋トレ方法もありますので下のリンクを参考に行ってみてください。

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ずーみー(泉風雅)

アダクションは、太ももの引き締め効果や脚痩せ効果が期待できます。足を細くしたい人はぜひチャレンジしてみましょう。

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③インナーマッスルを鍛える 【遅筋の鍛え方】

遅筋は、身体の奥に位置するインナーマッスルに多く含まれています。筋トレで遅筋を鍛えるならば、インナーマッスルを強化する種目を取り入れましょう。ここでは筋トレ初心者でも挑戦しやすいドローインのやり方を解説します。

▼ドローインのやり方

① 床に仰向けに寝て、膝を90°に立てる
② 後頭部・お尻・足の裏を真っすぐにして床に付ける
③ 息を思いっきり吸う
④ 吸った息を吐き切りお腹がへこんだ状態をキープする

キープ時間は10~20秒間にし、インターバルを40~50秒挟んで5セットを目安に行いましょう。

▼ドローインのコツ&注意点

・腰が浮かないように気を付けましょう
・お腹に手を当てて行うと、呼吸が意識しやすくなります

ドローインは遅筋であるお腹のインナーマッスル・腹横筋を使う筋トレで、ウエストを細くする効果もあります。簡単に行えますので、筋トレ初心者やウエストを細くしたい女性にもおすすめです。

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ずーみー(泉風雅)

ドローインは床に寝て行う方法のほかに、机などに手を付いて行う方法もあります。どちらもトライしてみて、お腹をへこませる感覚が掴みやすい方法で行ってください。

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速筋・遅筋の性質を理解して運動能力UP

速筋と遅筋にはそれぞれ違う特徴があり、競技や健康維持に活かすためには2つの筋肉の違いを知っておくことが重要になります。瞬発力や持久力、ダイエットや加齢に伴う筋肉量の減少など、自分の目的を定め、それに合わせたトレーニング方法を取り入れていきましょう。