遅筋繊維・速筋繊維とは?
筋肉には遅筋線維と速筋線維があります。遅筋線維の役割は筋持久力で、速筋線維の役割は瞬発力です。つまり、遅筋線維を鍛えることで筋肉を長時間使っても身体が疲れにくくなるのです。ランニングなど長時間にわたって運動すると遅筋繊維を鍛えることができます。
また、ランニング以外だと低負荷の筋トレや自重の筋トレを行うことで効果的に遅筋線維を増強することが可能です。疲れにくく持久力のある身体を作るには遅筋繊維の筋トレは欠かせません。一方で速筋線維は爆発的な力を発揮し、サッカーやテニス、バスケなど切り返し動作の多いスポーツなどで使われます。
遅筋線維と速筋線維、どちらも鍛えていく必要があります。遅筋線維はインナーマッスルに多いとされ、最も多いのはふくらはぎに当たるヒラメ筋で遅筋繊維の割合は88%を占めていると言われています。次に多い部位は前脛骨筋で73.4%で、遅筋線維の多い筋肉部位は下半身に寄っている傾向にあります。
(速筋・遅筋の違いについては以下の記事も参考にしてみてください)
速筋・遅筋の違いは?鍛え方は?鍛えるメリット〜部位別の割合など徹底解説
出典:Slope[スロープ]
遅筋の効果的な鍛え方
遅筋線維を効果的に鍛えるためにはコツがあります。遅筋線維は筋肉に低い負荷を長時間与える必要があります。この特徴を頭に入れておけばどのように遅筋繊維を鍛えていけば良いのか思い浮かんでくるはず。ここでは、遅筋線維を効果的に鍛える際に押さえておきたいポイントを紹介します。
①有酸素運動で遅筋を鍛える【遅筋の効果的な鍛え方】
遅筋線維は有酸素運動で鍛えることができます。遅筋は激しい筋トレをする必要はなく、持久力を高めることのほうが重要。持久力を発揮するためには脂質をエネルギー源としなければなりませんが、その脂質を生み出すためには酸素を多く取り込む必要があります。
そのため、ランニングや水泳などの有酸素運動は遅筋線維を鍛えるのに有効だとされています。低負荷から中程度の負荷でゆっくりと長時間、継続した運動をすることによって遅筋繊維を効果的に鍛えることが可能となります。
ただし、有酸素運動は過渡に長時間続けると筋肉が疲労して、筋肉を分解するように働いてしまうので逆効果となることも覚えておきましょう。遅筋線維を鍛える際の適切な運動時間は長くても30分以内だと言われています。物足りない場合は有酸素運動の間にインターバルを挟むといいでしょう。
(有酸素運動で筋肉が落ちる噂については以下の記事も参考にしてみてください)
有酸素運動で筋肉が落ちる噂は嘘ではない!論文〜落とさないポイントを解説!
出典:Slope[スロープ]
②低負荷の筋トレで遅筋を鍛える【遅筋の効果的な鍛え方】
遅筋線維は低負荷の重量で行う筋トレでも鍛えることができます。自重トレーニングで遅筋線維を効果的に鍛えることができるので、特別な道具は必要ありません。それに自重トレーニングなら自宅でも気軽に取り組めるので、どなたでも遅筋線維を効果的に鍛えることが可能。
遅筋線維を鍛える自重トレーニングの代表例としては、プランクやレッグレイズなどが挙げられます。また、ジムで遅筋線維を鍛えたいのであれば、低負荷のダンベルやバーベル、チューブなどを使えば効果的に鍛えられます。
今まで筋肥大のために行っていた筋トレメニューだったとしても、低負荷かつ多回数という条件さえ守っていれば、遅筋線維を効果的に鍛えることができます。同じ筋トレメニューだったとしても、負荷と回数さえ変更すれば鍛えられる筋肉部位を変えることができるのです。
(レッグレイズのやり方&効果については以下の記事も参考にしてみてください)
レッグレイズのやり方&効果!短期間で腹筋を割るコツ!自宅で簡単!
出典:Slope[スロープ]
③スキマ時間で遅筋を鍛える【遅筋の効果的な鍛え方】
遅筋線維はトレーニング器具などが不要で自重トレーニングで鍛えることができるので、スキマ時間を有効活用することができます。仕事や勉強の合間に座ったままで遅筋線維のトレーニングをすることも可能。速筋を鍛える時には重い負荷をかける必要がありますが、遅筋を鍛える場合には不要。
座ったまま足を上げ下げするだけで遅筋を鍛えることもできれば、リビングでテレビを観ながら遅筋線維を鍛えることもできます。わざわざ遅筋を鍛えるための筋トレ時間を捻出しなくてもいい点が魅力的。遅筋を鍛えることによって足が細くなる効果も見込めます。
マラソン選手の足はまさに遅筋線維が発達しているので、足が太い人はいません。このことから遅筋を鍛えることは足を細くする上で効果的であることがわかるでしょう。ダイエットをしたいという方は、遅筋を鍛えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
【有酸素運動】遅筋強化向けのトレーニング&鍛え方
遅筋を効果的に鍛えるためには、有酸素運動が必要だと解説してきました。筋持久力を鍛えて疲れにくい体を手に入れるためにも有酸素運動を取り入れていきましょう。
①ランニング【遅筋強化向けのトレーニング&鍛え方】
ランニングは有酸素運動の代表例です。体一つさえあれば気軽に取り組める有酸素運動です。長時間のランニングをすることで遅筋線維を鍛えることができます。体力に自信のある人だったら20分のランニングから始めると効果的に遅筋線維を鍛えることができます。
ただし、長時間のランニングと言っても、あまりにも長い時間でランニングをしてしまうと、筋肉が分解されてしまい遅筋線維を鍛えられなくなってしまいます。体力をつけるどころか体力を失ってしまう働きに向かってしまう恐れもあります。
ランニングは長くても30分以内にとどめましょう。もし、30分以上のランニングをしたい場合には、10分で休憩をとって、細切れにしてランニングを続けるといいです。そして、ランニングをする時には呼吸のリズムにも意識して、酸素をたくさん体内に取り込むようにしてください。
(ランニングの正しいフォームについては以下の記事も参考にしてみてください)
ランニングの正しいフォーム!効果倍増で疲れにくい理想の走り方を解説!
出典:Slope[スロープ]
②水泳【遅筋強化向けのトレーニング&鍛え方】
近くにプールがあったり、通っているジムにプールが備わっているのなら積極的に利用すべきです。水泳は効果的な有酸素運動ができるスポーツです。泳いでいると、どうしても息継ぎをしなければならないので、強制的に酸素を多く取り込むことができます。
また、水中だと浮力などの力が働くため、体重の負担が減り、怪我のリスクも下げられます。水泳は低負荷で長時間の運動ができる条件が完璧に揃った有酸素運動といえるでしょう。ジムで筋トレをした後、プールで汗を流しながら体もほぐせるので、より効果的なトレーニングができます。
水泳は筋疲労を早く回復させてくれるので、プール付きのジムに通っているのならば、利用しない手はありません。
③サイクリング【遅筋強化向けのトレーニング&鍛え方】
サイクリングも有酸素運動の代表例として挙げられます。さっそうと風を切りながら自転車を漕ぐと気持ちいいですし、走るのが苦手という方でもとっかかりやすい有酸素運動です。晴れた休日にはサイクリングに出かけてみてはいかがでしょうか。
また、仕事が忙しいという方でも通勤手段をサイクリングにすると時間の有効活用もできます。仕事前に自転車を漕ぐと疲れそうに思えますが逆です。適度な有酸素運動をすることによって血の巡りを良くし、体の疲れをとってくれます。
さすがに自転車で通勤すると2時間かかるという方は無理しないほうがいいですが、電車を途中で降りて自転車で通勤するという方法もできます。普段から車通勤という方でも会社からちょっと離れたところに駐車して自転車で通勤するということも可能。ちょっとした工夫で生活の中に有酸素運動を取り入れていきましょう。
【筋トレ】遅筋強化向けのトレーニング&鍛え方
有酸素運動に加えて筋トレをすることで遅筋を効果的に鍛えることができます。遅筋の筋トレは速筋とは異なり、低負荷かつ多回数がポイント。間違っても高負荷をかけて筋トレをしないように気をつけてください。速筋と遅筋は同時に鍛えることができないので、遅筋を鍛える時には遅筋を鍛えることに集中しましょう。
①アダクション【遅筋強化向けのトレーニング&鍛え方】
自重で行う場合にはサイドブリッジの状態で身体を浮かせていくようなものになります。上側の脚TRXのような専用のバンドに引っ掛けるか、椅子などの座面に置き、股関節の内転によって身体を浮かせます。
この自重トレーニングがキツイ・できないというひとはサイドブリッジ姿勢から下側の脚を上げ下げする方法から始めてみましょう。さらに負荷を弱める場合には完全に寝転がって上側の脚を立て、下側の脚を持ち上げる方法があります。
ずーみー(泉風雅)
内転筋群は恥骨結合を通して腹筋や腹膜などに繋がっており、内転筋を『締める』ことで骨盤底筋や腹直筋、そこからつながる大胸筋の下部にも力が入りやすくなるはずです。
また腹膜連続している内転筋のマッサージ・コンディショニングは腹部の深層の筋肉のコンディションを保つことに繋がるともいわれています。
(詳しく見たい方はこちら)
アダクションやり方!短期間で美脚GET!脚痩せ効果UPのコツをマシン・自重別に解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
②レッグランジ【遅筋強化向けのトレーニング&鍛え方】
レッグランジは片脚を前に出しては戻す種目で、下半身を機能的かつ全体的に鍛えたいという人にオススメの種目です。自重でもできる気軽さもあります。
レッグランジは一般的にはフロントランジまたはフォワードランジと呼ばれることもあります。まずは何も持たないバージョンから。直立姿勢から脚を前に出し、しっかりと沈み込みます。このとき両脚の膝がだいたい90度になるくらいが目安です。
実際には前脚の膝は少し鋭角に、後ろ脚の膝は少し鈍角になるので90°きっかしにこだわる必要はありません。上半身は前傾せず、まっすぐ立てた状態をキープします。この状態から脚を伸ばし、足を浮かせて戻します。片側ずつ、連続で行うのがオススメです。
ずーみー(泉風雅)
レッグランジでは後ろ脚側の腸腰筋も鍛えていくことができます。腸腰筋は姿勢の維持や腰のポジションにも関わる重要な筋肉なので、レッグランジは脚のストレングスと機能性を同時に鍛えていく優れた種目と言えるでしょう。
(詳しく見たい方はこちら)
レッグランジのやり方!太もも・お尻の引き締めに!初心者〜上級者向けのコツを解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
③ヒップリフト【遅筋強化向けのトレーニング&鍛え方】
ヒップリフトは大臀筋に強力な収縮負荷をかけられる自重トレーニングで、大殿筋を強化したいという人にオススメの種目です。
自重で完結するので家でも簡単に始められる股関節の伸展作用をほとんど大臀筋のみで行うことができるます。スクワットやデッドリフトなどは大臀筋にとってストレッチ種目であり、大殿筋にコントラクション、つまり収縮の負荷を掛けられる種目は非常に貴重です。
大殿筋を集中的に強化したい、お尻を大きくしたい、ヒップアップをしたいという女性にとってもかなり有効です。丸いお尻のためにはお尻の上の方のトレーニングも忘れず行いましょう。
ずーみー(泉風雅)
ヒップリフトは家でも簡単に始められる股関節の伸展作用をほとんど大臀筋のみで行うことができる種目です。スクワットやデッドリフトなどは大臀筋にとってストレッチ種目であり、大殿筋にコントラクション、つまり収縮の負荷を掛けられる種目は非常に貴重です。
(詳しく見たい方はこちら)
ヒップリフトの効果&やり方!短期間で美尻GET!腰を痛めないコツなどプロが徹底解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
④シーテッドカーフレイズ【遅筋強化向けのトレーニング&鍛え方】
シーテッドカーフレイズでは自重でヒラメ筋を鍛えていくことができます。ヒラメ筋はふくらはぎの非常に大きな筋肉で腓腹筋の深部にあります。ヒラメ筋はふくらはぎ後面全体にわたる筋肉で、持久力の高い遅筋線維が多いものの力が強い羽状筋という形状をした筋肉です。
ですので「高重量高回数」で行っていくことがこの筋肉を大きくするためのキーポイントです。ある程度高回数を行うときでも重量を下げすぎないように気を付けましょう。
ずーみー(泉風雅)
椅子の代わりにバランスボールを使用する方法もありますが、ふくらはぎが上がるのとあわせて上半身も沈んでしまうためおすすめとはいえません。
(詳しく見たい方はこちら)
シーテッドカーフレイズのやり方!ダンベル重量の目安など効果UPのコツを解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
⑤ハーフスクワット【遅筋強化向けのトレーニング&鍛え方】
ハーフスクワットはスクワットの中でもクォーターほど浅くはないものの、パラレルほど深くはない位置で切り返すトレーニングです。バーベルを使って速筋繊維を鍛えることもできますが、自重で行えば遅筋線維を鍛えられます。まずは自重から始めてみてください。
ハーフスクワットの特徴としては特に切り返し時の大腿四頭筋への負荷が大きく、適切に扱えばテンポよくハイレップで大腿四頭筋を刺激するのに向いています。また多くのスポーツでの切り返し動作はフルスクワットほど深い位置での切り返し動作とはならないためより実践的な形と言えます。
スクワットのスタイル・深さは個人の可動域や力の入れやすいタイミング、目的によって決められるべきであり、ハーフスクワットよりフルスクワットのほうが必ず優れているというわけではありません。しかし、フルスクワットが十分に実施できるストレングスと柔軟性を手に入れておくことは広い範囲で役に立ちます。
ずーみー(泉風雅)
スクワットは浅ければ浅いほど膝に優しいと思えますが、実は違います。特に切り返し時にハムストリングスや大殿筋がしっかりと伸ばされ、大きな力を発揮できる状態にないと表と裏のバランスで大腿四頭筋の活動が大きくなり、膝が痛くなりやすいです。
(詳しく見たい方はこちら)
ハーフスクワットのやり方!ダイエット・リハビリに効果的!初心者・高齢者も簡単!
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
遅筋の鍛え方をマスターして疲れにくい身体へ
速筋線維と遅筋線維の筋肉は鍛え方が異なります。瞬発力や爆発的な力をつけたいなら速筋を鍛える必要があり、疲れにくい体や筋持久力を手に入れたいなら遅筋線維を鍛える必要があります。遅筋繊維すなわち持久力のある筋肉を鍛えておけば、日常生活でも疲れにくくなります。
仕事や勉強、スポーツにおいて遅筋繊維を鍛えておけば、長時間パフォーマンスを発揮し続けることができるでしょう。筋トレをする際には筋肉の特徴を理解した上で、目的に応じた筋肉を鍛えるようにしてください。
また、遅筋線維は自重で鍛えられるものばかりですので、鍛えない手はありません。