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ビハインドネックラットプルダウンは非推奨?
背中のボディメイクを目的として、ラットプルダウンを行ったことのある人は多いでしょう。広背筋を鍛えるためのトレーニングとして、懸垂やダンベルを用いたトレーニングが有名ですが、初心者や女性にはなかなか手が出しにくいメニューです。初心者や女性でもラットプルダウンは取り入れやすいトレーニングなので、ジムで行っている人はよく見かけます。
ラットプルダウンは頭部後方にアタッチメントを引き下ろす「ビハインドネックラットプルダウン」と、前方に引き下ろす「フロントラットプルダウン」があります。様々な文献で明らかにされていますが、ビハインドネックラットプルダウンは関節を痛めてしまうリスクが高いのです。ビハインドネックラットプルダウンは非推奨とされる理由は、主に下記の3つです。
①首や背中を痛めやすい
②ローテーターカフの炎症を引き起こしやすい
③フロントラットプルダウンに比べて筋活動が乏しい
それでは①首や背中を痛めやすいから確認していきましょう。
(広背筋の筋トレについては以下の記事も参考にしてみてください)
広背筋のチューブトレーニング7選!自宅で背中を効果的に鍛えるコツ解説
出典:Slope[スロープ]
首や背中を痛めやすい
ビハインドネックラットプルダウンは肩甲骨の動きに関わる僧帽筋の柔軟性が低下した状態で行うと、首や背中を痛めてしまうリスクがあります。現代人はスマホやパソコン操作の時間が長く、習慣的に前かがみ・猫背姿勢になりやすいのです。猫背は頚椎前傾や肩甲骨外転・肩関節内旋位となるため、僧帽筋が持続的に引き伸ばされている状態といえます。
不良姿勢の影響で、僧帽筋の柔軟性が低下している人はとても多いのです。その状態でアタッチメントを引き下ろそうとすると十分に肩甲骨が動かず、頭に当たってしまいやすくなります。当たらないようにするために頭部を前屈させてアタッチメントを引き下ろそうとしてしまうと、頚椎に負担がかかり痛みを誘発するのです。
広背筋に効果を得ようと頑張れば頑張るほど、痛みの原因をつくってしまうことになりかねません。ビハインドネックラットプルダウンを行い、「首や背中が痛い」と感じている人は、僧帽筋の柔軟性をチェックしましょう。ストレートネックや頚椎症、頚椎ヘルニアの既往歴がある人も、ビハインドネックラットプルダウンは避けたほうが無難です。
(僧帽筋の柔軟性改善については以下の記事も参考にしてみてください)
僧帽筋のストレッチメニュー!一瞬で肩こりも解消する伸ばし方のコツも解説!
出典:Slope[スロープ]
ローテーターカフの炎症を引き起こしやすい
ローテーターカフは肩関節の安定性を保つ重要な役割を担っている、棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋からなるインナーマッスルです。ローテーターカフは肩関節外転・外旋位で最も負荷がかかりやすいとされており、炎症による痛みがひどいと腕が上げられなくなったり、夜間痛で睡眠障害も引き起こしてしまいやすいのです。
ビハインドネックラットプルダウンではアタッチメントを頭部後方に引き下ろすため、過度に肩関節外転・外旋位となります。僧帽筋の柔軟性が低下による頭部前屈の代償動作も加わると、さらにローテーターカフへのダメージが増してしまいます。またZAMSTによると、以下のような記述があります。
反復性脱臼では、肩関節に外転外旋位が強制されると、しばしば上腕骨が肩甲骨のソケットから外れてしまう。
肩関節外転・外旋位は痛みを誘発しやすいだけでなく、脱臼のリスクも高いため注意しましょう。肩板損傷の既往がある人も、ビハインドネックラットプルダウンは肩を痛めてしまいやすいので避けたほうが良いでしょう。
(ローテーターカフについては以下の記事も参考にしてみてください)
ローテーターカフ(回旋筋腱板)の筋トレ!構造・作用〜鍛え方のコツまで解説
出典:Slope[スロープ]
フロントラットプルダウンに比べて筋活動が乏しい
ラットプルダウンは広背筋に効果的なトレーニングですが、フロントラットプルダウンに比べてビハインドネックラットプルダウンのほうが筋活動が乏しいという論文があります。アメリカの専門誌「Journal of Strength and Conditioning Research」によると、以下のような記述があります。
ワイドグリップでのフロントネックラットプルダウンが、他のグリップバリエーションに比べて広背筋の動員率が高かった。
フロントラットプルダウンは顔全面にアタッチメントを引き下ろすので、肩甲骨の内転・肩関節外転・外旋位の可動域が少なく行えるトレーニング。痛み誘発のリスクが低いうえ、広背筋の筋肥大効果が高いため、背中のボディメイクにフロントラットプルダウンを推奨している人が多いのです。
ビハインドネックラットプルダウンの正しいやり方
ビハインドネックラットプルダウンは正しいやり方でないと、痛みを誘発するリスクが高いトレーニングです。正しいフォームを意識しながら行い、広背筋に対する効果を高めましょう。ここからは以下の3つの手順ごとに、正しいやり方を解説します。
①マシンに座りアタッチメントを把持する
②頭部後方にアタッチメントを引き下ろす
③ゆっくりとスタートポジションに戻る
それでは①マシンに座りアタッチメントを把持から確認していきましょう。
マシンに座りアタッチメントを把持する
シートに座る際、骨盤を起こして腰をかけましょう。骨盤が左右どちらかに回旋している状態で行うと、広背筋への効果が薄れてしまうので注意してください。アタッチメントを引き下ろすときに、広背筋の十分な収縮を引き起こすためには肩甲骨内転・肩関節の水平伸展の動作がポイントです。
グリップ幅は肩幅の1.3~1.5倍にすると、肩甲骨内転・肩関節の水平伸展の可動域が確保されるので効果的にトレーニングを行うことができます。アタッチメントを把持する手は、中手骨からしっかりと握りこむようにしましょう。
頭部後方にアタッチメントを引き下ろす
アタッチメントをしっかりと握ったら、息を吐きながら肩を後ろに引いて頭部後方まで下ろします。肩甲骨を内転方向に寄せることを意識すると、僧帽筋下部線維に効果的です。反対に肩甲骨を寄せすぎずに引き下ろすと、大円筋や三角筋後部線維を鍛えられます。ターゲットにしたい部位によって、意識するポイントを変えるだけで効果が得られる点はメリットです。
引き下ろす際には、頭部を前屈したり背中を丸めたりしないよう、胸を張って行うようにしましょう。あまり肩の近くまで下げようとしてしまうと怪我のリスクが増してしまうので、頭部中央まで下ろすようにしてください。
ゆっくりとスタートポジションに戻る
アタッチメントを引き下ろしたら、息を吸いながらゆっくりとスタートポジションまで戻ります。完全に肘を伸展してしまうと負荷が抜けてしまい、効果が半減してしまうので注意しましょう。
正しいフォームで行い、たくましいボディをゲット
こちらの動画では、肩甲骨の動きやアタッチメントの引き下ろし方、正しい姿勢がわかりやすいのであわせて参考にしてください。
ビハインドネックラットプルダウンのコツ&注意点
ビハインドネックラットプルダウンを効果的に、かつ怪我を防止するためにはこれから解説するポイントを意識しましょう。ビハインドネックラットプルダウンのコツ&注意点は、主に下記4つです。
①呼吸を意識することで効果アップ
②首や背中を丸めないようにして行う
③ゆっくりとアタッチメントをもどす
④軽負荷からはじめる
それでは①呼吸を意識することで効果アップから確認していきましょう。
呼吸を意識することで効果アップ
筋トレ効果を高めるには、筋収縮に合わせた呼吸法が重要です。息を吐きながらアタッチメントを引き下ろし、息を吸いながら戻すことで筋肉に酸素供給を促すことができます。酸素供給が十分にされている状態だと、筋肉はパワーを発揮しやすいので効果的にトレーニングができます。
またしっかりと腹式呼吸が行われていると、インナーマッスルの働きによって体幹が固定されやすくなるというメリットもあるのです。フォームが安定するので怪我の防止にもつながるため、怪我のリスクが高いビハインドネックラットプルダウンだからこそより呼吸を意識して行いましょう。
首や背中を丸めないようにして行う
ビハインドネックラットプルダウンでアタッチメントを引き下ろす際に、首や背中を丸めてしまうと痛みを誘発してしまいやすいので注意しましょう。骨盤後継位で座っていると、腰椎は丸まりやすくなってしまいます。骨盤をしっかりと立てた状態で座ることも、重要なポイントです。
ゆっくりとアタッチメントをもどす
アタッチメントをもどす際には、ゆっくりと行うように意識しましょう。急に戻してしまうと筋肉が急激に伸ばされて、痛めてしまいやすくなります。それだけでなく、せっかくの負荷が抜けてしまい効果が半減してしまいます。ゆっくりともどすようにすることで、怪我防止・トレーニング効果を高めましょう。
軽負荷からはじめる
首や肩への負担が大きいビハインドネックラットプルダウンは、軽負荷からはじめるのが原則です。高負荷になればなるほど怪我のリスクが増してしまいます。また疲労によってフォームが乱れてしまうときも要注意です。トレーニング中に疲労を感じたら、一度休憩を挟むようにして安全に行いましょう。
(ラットプルダウンの平均重量については以下の記事も参考にしてみてください)
ラットプルダウンの平均重量は?男女の初心者〜上級者の目的別に適切な重さを解説!
出典:Slope[スロープ]
ビハインドネックラットプルダウンについて正しい理解をしておこう
ビハインドネックラットプルダウンを行い、「首や背中が痛い」と感じた人は要注意です。フロントラットプルダウンに比べて肩への負担が大きいトレーニングなので、肩甲骨周囲筋の柔軟性が低下していたり、首や肩に既往歴のある人は避けたほうが良いでしょう。ビハインドネックラットプルダウンは、正しいやり方や注意点を意識しながら行うようにしてください。