烏口腕筋の構造・作用
烏口腕筋(うこうわんきん)の起始停止は肩甲骨の烏口突起から上腕骨の内側中央までで、他の筋肉と比べても小さい筋肉です。この烏口腕筋は同じ上腕骨にある上腕二頭筋などのように主動筋として力を出すことはありません。
その代わりに上腕二頭筋などを使って上腕を動かす時のサポートをしています。特にバットのスイングなどのような腕を水平方向に内転させる動作のサポートには強く関わってきます。
烏口腕筋の筋トレをするメリット
烏口腕筋を筋トレで鍛えるメリットは主に以下の3つ挙げられます。
・肩関節の動きの安定化
・肩関節のトラブルの予防や改善
・スイングなどのパフォーマンスアップ
それでは1つずつ詳しく見ていきましょう。
肩関節の動きの安定化
先ほども触れたように烏口腕筋は上腕二頭筋などの筋肉を使って上腕を肩関節を支点に動かす時のサポートの役割を持っています。そのためこの烏口腕筋を筋トレで鍛えておくことで、そのサポート力がアップするのです。
また烏口腕筋を鍛えておくと上腕骨の骨頭を肩関節のくぼみである関節窩に引き付けて、関節自体を安定させる力がアップするのも期待できます。
肩関節のトラブルの予防や改善
烏口腕筋は目立たない筋肉で補助的にしか使われない筋肉です。そのため筋トレなどで意識的に動かさないと筋肉が硬くなってしまい、それによって巻き肩や肩の可動域が狭くなるなどの悪影響が出ることがあります。また姿勢が悪化することで神経が圧迫されて、手先などにしびれが出る可能性もあります。
しかし、筋トレによってしっかりと烏口腕筋を動かしておけば、硬い状態になりにくくなって肩のトラブルの予防や改善につながります。特に後ほど紹介するストレッチと組み合わせるとより高い効果が期待できるので、興味がある方はストレッチのやり方もチェックしてみてください。
スイングなどのパフォーマンスアップ
繰り返しになりますが、烏口腕筋は肩関節を動かす時のサポートの役割を持っています。特に水平方向に腕を動かす時には重要な役割を果たします。そのため烏口腕筋を鍛えておくとバットやラケットのスイング動作にも良い影響を与える可能性があるのです。
1つ前に解説したように肩関節のトラブルの予防にもつながるので、肩関節を動かすスポーツをしている人は特に意識して鍛える価値がある筋肉だと言えるでしょう。
烏口腕筋の筋トレメニュー&鍛え方のコツ
烏口腕筋を鍛えるメリットがあっても、残念ながら烏口腕筋だけを動かして鍛えることはできません。鍛えるのであれば、補助的に烏口腕筋が使われるメニューを選ぶ必要があります。そこで次に烏口腕筋を効果的に鍛えられる筋トレメニューを紹介します。それぞれのメニューでの鍛え方のコツも解説するので、合わせてチェックしてみてください。
烏口腕筋の筋トレメニュー①インクラインハンマーカール
インクラインハンマーカールはインクラインベンチに座った状態でカールを行うメニューです。特に逞しい印象のある腕を作るのに重要な上腕二頭筋長頭を鍛えるのに効果的なメニューでもあります。
▼インクラインハンマーカールのやり方
①両手でダンベルを持ってインクラインベンチに座る
②親指を前に向けたまま肘を曲げてダンベルを挙げる
③ゆっくりとダンベルを降ろす
このメニューでは筋力アップが目的なら1~6回、筋肥大が目的なら6~12回、筋持久力アップが目的なら15回以上で限界が来る重量を使いましょう。セット数については初心者は週1回3セット、上級者には週2回6セットが目安です。
▼インクラインハンマーカールのコツ&注意点
・コントロールできない重量は扱わない
・挙げる時に肘が前に出ないようにする
・手首が小指側に曲がらないように注意する
インクラインハンマーカールは両側を同時に行うだけでなく、片方ずつ行うこともできます。その場合は片方ずつ連続して動作を行うやり方をおすすめします。
(インクラインハンマーカールのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
ハンマーカールのやり方!片方ずつが上腕二頭筋長頭に効果的?重量、回数なども解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
烏口腕筋の筋トレメニュー②チューブハンマーカール
チューブハンマーカールは名前の通りチューブを使ってハンマーカールを行います。腕の収縮ポジションで負荷が大きくなるのが特徴なので、新しい刺激を与えたい時などにおすすめです。またチューブがあればできる種目なので、家でトレーニングする人にも向いているやり方と言えます。
▼チューブハンマーカールのやり方
①チューブを足で踏んで立ち、グリップを持つ
②親指を前に向けたまま肘を曲げる
③ゆっくりと肘を伸ばす
チューブではダンベルのように高負荷をかけることは難しいです。そのため基本としては8~12回で限界が来るような負荷のチューブを使うと良いでしょう。セット数は初心者なら週1回3セット、上級者であれば週2回6セット程度が目安です。
▼チューブハンマーカールのコツ&注意点
・上半身を反らせない
・肘の位置を固定し肩を動かさない
チューブハンマーカールは比較的負荷の軽い種目です。またダンベルよりも安全なので筋トレ初心者や女性の方も安心して取り組めるでしょう。
(チューブトレーニングについては以下の記事も参考にしてみてください)
チューブトレーニングの効果抜群メニュー!腹筋・背筋・肩・太もも・胸筋など部位別にコツを解説!
出典:Slope[スロープ]
烏口腕筋の筋トレメニュー③ダンベルカール
ダンベルカールは手のひらを前に向けたままカール動作を行うメニューです。ハンマーカールとは違ってやり方次第で上腕二頭筋の短頭と長頭のどちらも狙うことができるメリットがあります。
▼ダンベルカールのやり方
①ダンベルを持って立つ
②手のひらを前に向けたまま肘を曲げてダンベルを挙げる
③ゆっくりとダンベルを降ろす
このメニューでは筋力アップが目的なら1~6回、筋肥大が目的なら6~12回、筋持久力アップが目的なら15回以上で限界が来る重量を使いましょう。セット数については初心者は週1回3セット、上級者には週2回6セットが目安です。
▼ダンベルカールのコツ&注意点
・肩を回すようにダンベルを挙げない
・動作中に手首を反らせない
ハンマーカールと同様にダンベルカールでも片方ずつ行う場合は、片方ずつ連続して行うやり方をおすすめします。
(ダンベルカールのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
ダンベルカールのやり方!上腕二頭筋に効かせるコツ〜重さ・回数などもプロが解説
出典:Slope[スロープ]
烏口腕筋の筋トレメニュー④ケーブルカール
ケーブルカールはロープーリーマシンを使ってアームカールを行うメニューです。チューブと同じように動作の初動から負荷をかけ続けられるメリットがあります。
▼ケーブルカールのやり方
①マシンにバーを取り付ける
②バーを両手で持って立つ
③肘を曲げてバーを挙げる
④ゆっくりとバーを降ろす
このメニューでは筋力アップが目的なら1~6回、筋肥大が目的なら6~12回、筋持久力アップが目的なら15回以上で限界が来る重量を使いましょう。セット数については初心者は週1回3セット、上級者には週2回6セットが目安です。
▼ケーブルカールのコツ&注意点
・バーは深く巻き込むように握る
・挙げる時に肘が前に出ないようにする
ケーブルカールはロープを使うことでハンマーカールのような動作を行うこともできます。ジムにアタッチメント用のロープがある場合は活用してみると良いでしょう。
(ケーブルカールのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
ケーブルカールのやり方!上腕二頭筋に爆裂に効くコツ〜ロープなど種類も解説
出典:Slope[スロープ]
烏口腕筋の筋トレメニュー⑤ダンベルフロントレイズ
上腕を前に持ち上げる動作を行うフロントレイズでも烏口腕筋を補助的に鍛えらえます。ダンベルを持っていない場合は、ペットボトルに限界まで水を入れてダンベル代わりに使うことも可能です。
▼ダンベルフロントレイズのやり方
①ダンベルを両手に持って立つ
②腕を伸ばしたままダンベルを体の前方向に挙げる
③ゆっくりと腕を元の位置に降ろす
フロントレイズは強い動きではないので高重量を扱うことができません。そのため後半まで正しいフォームを維持できる比較的軽めの重量を扱うのをおすすめします。セット数は初心者なら週1回3セット、上級者であれば週2回6セット程度が目安です。
▼ダンベルフロントレイズのコツ&注意点
・反動を使ってダンベルを挙げない
・肩をすくませた状態で行わない
どうしても反動を付けてしまうという方は背中を壁などに付けた状態で動作を行うと良いでしょう。またフロントレイズはリヤレイズなどの拮抗筋を鍛える種目と一緒に取り組むのも効果的です。
(フロントレイズのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
フロントレイズのやり方!三角筋に効くコツをダンベル・バーベル・ケーブル別に解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
烏口腕筋の筋トレメニュー⑥チューブフロントレイズ
チューブフロントレイズはチューブを使ってフロントレイズを行うメニューです。ダンベルとは違って初動から負荷をかけられるのが大きなメリットです。
▼チューブフロントレイズのやり方
①チューブを足で踏んで立ち、グリップを持つ
②腕を伸ばしたまま体の前方向に挙げる
③ゆっくりと腕を元の位置に降ろす
チューブを使う場合も通常のフロントレイズと同様に後半まで正しいフォームを維持できる比較的軽めの負荷で行うをおすすめします。セット数は初心者なら週1回3セット、上級者であれば週2回6セット程度が目安です。
▼チューブフロントレイズのコツ&注意点
・挙げる時に肩をすくませない
・上半身を反らせたり、肩甲骨を寄せない
チューブの負荷を変えられない場合は基本的に正しいフォームが維持できる限界の回数までこなすようにしましょう。
烏口腕筋の筋トレメニュー⑦プレートフロントレイズ
ダンベルフロントプレスよりも手首への負担が少ないのが、このプレートを用いたプレートフロントプレスです。ただし、負荷の調節が難しいデメリットもあります。
▼プレートフロントレイズのやり方
①プレートを両手で持って立つ
②腕を伸ばしたままプレートを体の前方向に挙げる
③ゆっくりと腕を元の位置に降ろす
プレートを使う場合も通常のフロントレイズと同様に後半まで正しいフォームを維持できる比較的軽めの負荷で行うをおすすめします。セット数は初心者なら週1回3セット、上級者であれば週2回6セット程度が目安です。
▼プレートフロントレイズのコツ&注意点
・挙げる時に息を吐き、降ろす時に息を吸う
・身体の反動を使ってプレートを挙げない
重い重量を扱うと自然と後ろに反ってしまい腰を痛める原因になるので注意しましょう。
烏口腕筋のストレッチメニュー
最後に烏口腕筋のストレッチメニューを紹介します。筋トレと合わせて取り組むことで、肩関節の安定性などがより高まるのでぜひ取り入れてみてください。
烏口腕筋のストレッチ①
これは肩の筋肉の緊張を緩めることで、巻き肩の解消や猫背の改善に役立つストレッチです。肩の内転動作がスムーズにできるようになるので、肩こりの解消や運動能力向上も期待できます。
▼烏口腕筋のストレッチのやり方
①右手の平を壁に当てる
②肘は伸ばしたまま、ゆっくりと腰を落とす
③5秒ほど腰を落とし、三角筋から大胸筋を伸ばす
④反対側も同じように行う
このストレッチは5秒を1セットとして左右2セットずつ行いましょう。
▼烏口腕筋のストレッチのコツ&注意点
・動作はゆっくりと行う
・息を吐きながら伸ばすようにする
他のストレッチにも共通することですが、決して痛みが出るまで無理して伸ばすことはしないでください。あまりに肩周りが固い場合は同時に筋膜リリースやマッサージなどに取り組んでも良いでしょう。
福田翔馬パーソナルトレーナー
胸を張りながら腰を落とすことで、鳥口腕筋がよく伸びます。固い人が無理をすると、肩がすくんでしまい胸が張れないので、肩がすくまないように注意しましょう。
烏口腕筋のストレッチ②
脇の下の烏口腕筋は、肺経と関連する筋肉でもあります。そのため烏口腕筋をストレッチして伸ばしてやると肺呼吸が楽になったりするのです。また肺の動きは肌の調子とも関係があるため、このストレッチをすることで美肌効果も期待できます。
▼烏口腕筋のストレッチのやり方
①壁に片手をつけ、腕が体に対して直角になるような姿勢で固定します。
②そのままの姿勢で体を反らせていき、脇の下を伸ばします。
③反対側も同じように行う
このストレッチでは伸ばした状態を10秒維持するのを左右行いましょう。
▼烏口腕筋のストレッチのコツ&注意点
・動作はゆっくりと反動をつけずに行う
・脇の下から大胸筋の筋肉が伸びていることを意識する
このストレッチで肺の機能を高めると美肌効果だけでなく、健康維持や体力向上にもつながります。壁があればどこでもできるので、日々継続して取り組んでいきましょう。
福田翔馬パーソナルトレーナー
しっかり深呼吸しながらこのストレッチを行いましょう。息を吸った時に肋骨をしっかり広げるようにして、お腹から胸が膨らむように息を吸った後、吐く時は脱力して吐くとリラックスできます。
烏口腕筋のストレッチ③
このストレッチは壁を使うか、手すりなどの棒を使うかで難易度が変わってきます。手すりなどを使う応用のやり方ではさらに強いストレッチをかけられるので、柔軟性がある方は応用の方法にも挑戦してみると良いでしょう。
▼烏口腕筋のストレッチのやり方
①壁を横にしてまっすぐ立つ
②壁に片手をつく
③手をついた方の手首を反転させる
④体を壁につけた手と反対方向にひねって腕を伸ばす
⑤反対側も同様に行う
他のストレッチと同様に5秒から10秒程度伸ばすようにしましょう。
▼烏口腕筋のストレッチのコツ&注意点
・小胸筋と烏口腕筋が伸びているのを意識しながら行う
・しっかりと呼吸をしながら行う
ストレッチ中は呼吸は止めないように気をつけましょう。痛みを感じる人は無理して行わず、できる範囲で伸ばすようにしてください。
▼烏口腕筋のストレッチのやり方 応用編
①手すりや鉄棒など握れるものに対して背中を向けて立つ
②片方の手を後ろにまわし、棒や手すりなど指をかける
③頭と体幹をまっすぐにし、腕は伸ばした状態がスタートポジション
④指をかけたまま足を動かさず、頭と体幹を前方に重心移動させる
他のストレッチと同様に5秒から10秒程度伸ばすようにしましょう。
▼烏口腕筋のストレッチ応用編のコツ&注意点
・頭を下げない
・お腹だけ前方に重心移動しない
・気持ちいい範囲で伸ばす
握る棒などの高さは、腰から背中にかけての範囲の高さのものを選びましょう。頭と体幹を前方に重心移動させる時に頭を少し倒すと、より小胸筋と烏口腕筋にストレッチがかかります。また左右の手の距離を縮めるのもストレッチ感を高めるのに有効なので余裕がある方は試してみると良いでしょう。
福田翔馬パーソナルトレーナー
棒を握るとき、指は引っかかる程度にしましょう。棒をしっかり握ってしまうと、屈筋に力が入って体が丸くなりやすくなります。
烏口腕筋を鍛えて筋トレ効果をUPしよう
烏口腕筋は目立たない筋肉ですが、肩関節を安定させたり、動きのサポートのために働きます。筋トレで鍛えることで猫背や巻き肩の改善や予防だけでなく、肩関節の可動域が広がり、スイングなどの動作のパフォーマンスアップにもつながります。ぜひ今回紹介した筋トレメニューやストレッチを実行して、さらに筋トレ効果をUPさせましょう。