目次
逆手懸垂と順手懸垂の違い
懸垂は、手の平の向きによって「逆手」と「順手」の2種類に分けられます。懸垂は主に背中と前腕の筋肉を鍛えるトレーニングですが、順手にするか逆手にするかによって、特に負荷のかかる部位を変えることができます。それでは、逆手懸垂と順手懸垂それぞれの特徴や効果について見ていきましょう。
逆手懸垂(チンアップ)
逆手懸垂は、手の平を身体側に向けて行うトレーニングで、チンアップやチンニングとも呼ばれます。肩関節の伸展(腕を縦に振り下ろす動き)が出やすくなり、広背筋への効果が高い一方で、上腕二頭筋への負荷が大きくなるという特徴もあります。
ちなみに、逆手懸垂は広背筋と上腕二頭筋を鍛えることができるので、腕相撲が強くなるトレーニングでもあります。
順手懸垂(プルアップ)
順手懸垂はプルアップとも呼ばれ、手の平を前に向けて懸垂を行います。順手懸垂は肩関節の内転(腕を横に振り下ろす動き)が出やすくなります。特に、身体を地面に対して垂直にしたまま行うと、大円筋や僧帽筋の下部を鍛えることができます。
ずーみー(泉風雅)
順手懸垂はプルアップ、逆手懸垂はチンアップまたはチンニングと呼ぶのが本来の区別ですが、日本では慣習的にオーバーハンドで行うものもチンアップ・チンニングと呼ぶことが多いようです。
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逆手懸垂で鍛えられる筋肉部位、得られる効果
逆手懸垂は主に背中の筋肉を鍛えるトレーニングですが、特に以下の筋肉に効果があります。
①広背筋
②僧帽筋下部
③大円筋
④上腕二頭筋
では、①広背筋から詳しく見ていきましょう。
広背筋
逆手懸垂では、グリップからの連動で肩甲骨を動かしやすくなっているため、広背筋を効果的に動かし、鍛えることができます。広背筋は日常的にもよく使用される筋肉で、伸びた腕を引く動作や腕を閉じるときなどに働いています。
(広背筋の筋トレについては以下の記事も参考にしてみてください)
広背筋の筋トレ11選!逆三角形ボディに爆速で近づく鍛え方のコツを解説
出典:Slope[スロープ]
僧帽筋下部
逆手懸垂は、肩甲骨を内側に寄せながら下に動かすトレーニングです。これにより、僧帽筋下部を鍛えることができます。僧帽筋は首から背中にかけて広がっているため、鍛えることで姿勢や肩こりの改善が見込めます。
フォーム解説から見たい人はこちら(僧帽筋の鍛え方については以下の記事も参考にしてみてください)
僧帽筋の鍛え方!自重〜器具使用の筋トレメニュー&背中をデカくするコツを解説
出典:Slope[スロープ]
大円筋
逆手懸垂では、大円筋にも負荷をかけることができます。大円筋は肩甲骨と上腕骨をつなぐ筋肉で、鍛えることで逆三角形の背中を作ることができます。物を引き寄せたり、腕を後ろに回す時に主に使う筋肉で、鍛えることで日常生活や筋トレの動きがスムーズになります。
(大円筋の筋トレ&ストレッチメニューについては以下の記事も参考にしてみてください)
大円筋の筋トレ&ストレッチメニュー!構造・作用〜鍛え方のコツまで徹底解説
出典:Slope[スロープ]
上腕二頭筋
逆手懸垂は前腕にある上腕二頭筋への負荷が大きいため、たくましい力こぶが欲しい人におすすめのトレーニングです。上腕二頭筋は短頭と長頭に分かれており、肘関節の屈曲や前腕の回外などの動きを担っています。
(上腕二頭筋の筋トレメニューについては以下の記事も参考にしてみてください)
上腕二頭筋の筋トレメニュー!急激に力こぶを発達させる鍛え方のコツを解説
出典:Slope[スロープ]
逆手懸垂の効果的なやり方
ここからは、逆手懸垂のフォームを解説します。負荷の大きいトレーニングなので、間違ったフォームで体を痛めてしまわないように、きちんと正しいやり方をマスターしてください。
①肩幅より広めにバーを逆手に握る
懸垂ができる高さのバーを逆手(手の平が自分側)で握ります。手幅はバンザイをした位置と同じ幅か少し広め(肩幅の1.0~1.2倍を目安)にすると良いでしょう。
ずーみー(泉風雅)
このとき、ただぶら下がるのではなく、肩甲骨の内側にしっかりとテンションをかけた状態にするのがポイントです。そうすることで、広背筋などの背中の筋肉をしっかりと使うことができます。
②身体を引き上げる
バーを深く握り、バーに鎖骨の少し下をぶつけるイメージで身体を引き上げていきます。
ずーみー(泉風雅)
上腕二頭筋への負荷が大きい場合は、下半身を軽く持ち上げ、バーとみぞおちをぶつけるように引き上げると、背中の筋肉が動かしやすくなります。身体を地面と垂直にしていると、腕への負担が大きくなります。
③身体を下ろす
体を下ろすときは、下ろし切らないことが重要です。下ろし切ってしまうと肩甲骨の内側からテンション(引っ張る力)が抜けた状態になってしまい、再び身体を引き上げるようとしても肩甲骨を寄せることが難しくなってしまいます。
ずーみー(泉風雅)
首は動作中真っすぐを意識し、反りすぎないように注意してください。
【応用】上腕二頭筋の負担を軽減し背中も鍛えるパラレルグリップ
逆手懸垂の負荷が大きすぎる場合は、パラレルグリップ(手の平同士が向き合う持ち方)にするのがおすすめです。順手よりも肩甲骨が動かしやすく、逆手ほど上腕二頭筋に負荷がかかりません。手幅は、肩幅より少し広めにとるようにしましょう。
ずーみー(泉風雅)
パラレルグリップで行うには、ラットプルダウンで使うようなアタッチメントを使用したり、シングルハンドル2つをチンニング台に取り付けたりすると良いでしょう。ただ、金属製のシングルハンド台はバーを傷つけてしまうのでおすすめできません。
逆手懸垂のコツ&注意点
続いて。間違ったフォームの例を見ていきます。筋肉への負荷があまり感じられないときや、体が痛くなってきたときはフォームが正しくできているか確認してください。
肩甲骨が寄せ下げられていない
肩甲骨を寄せ下げられないと、手が肩の上に近づいていく動作になってしまいます。肘の曲げ伸ばし動作が大きくなり、広背筋に負荷がかからず、大円筋や三角筋の後部、上腕二頭筋にばかりに刺激が入ってしまいます。
肩甲骨を下げるには、肩甲骨に負荷をかけた状態をキープするのがコツです。力が抜けてぶら下がった状態にならないようにしてください。
ずーみー(泉風雅)
このフォームでは、とても負荷の大きいアームカールのような動作になってしまいます。これを上げられる人はまずいないでしょう。上腕二頭筋が痛くなる可能性もあるので、きちんと肩甲骨を動かすことを意識してください。
指先で握っている
指先でグリップを握ることも、肩甲骨が動かない原因となります。グリップを深く握ることで手の力が入りやすくなり、背中も動かしやすくなります。グリップはしっかりと握るようにしましょう。
首を反らしてしまう
首を過剰に反らせてしまうと、胸と連動して広背筋の下部を鍛えることができず、悪い姿勢の原因にもなってしまいます。動作中は首を真っすぐに保ち、できるだけ動かさないようにしましょう。
逆手懸垂の平均回数は?セットの組み方も
成人男性の懸垂の平均回数は8回ほどですが、全く筋トレを行わない人の平均は1回と言われています。逆手懸垂はさらに負荷が高くなるので、1回もできないという人も少なくないでしょう。その場合は、下で紹介する負荷の小さいトレーニングを行うのがおすすめです。そちらに慣れてきたら、再び逆手懸垂に挑戦してください。
なお、逆手懸垂をトレーニングに取り入れる際の最適な回数は、正しいフォームが維持できる限界の回数です。間違ったフォームで行うと体を痛める可能性もあるので、できないときは無理をしないようにしてください。
逆手懸垂の最適なセット数は、トレーニングのステータスによって変わります。初心者なら週1回3セット、上級者なら週2回6セットを目安にしてください。慣れてきたら少しずつセット数を増やすと良いでしょう。
(筋トレのセット数・回数の最適解については以下の記事も参考にしてみてください)
筋トレのセット数・回数の最適解はコレ!目標別に成長効率を上げるコツを解説!
出典:Slope[スロープ]
【初心者編】逆手懸垂ができない人向けの練習方法
逆手懸垂が難しいという人のために、負荷が小さいトレーニングや、動作がやりやすいフォームを紹介します。まずはこちらの筋トレで基本的な筋力や正しいフォームを身に付け、それから通常の逆手懸垂にチャレンジすると良いでしょう。
その① ジャンプを利用した逆手懸垂
逆手懸垂にジャンプを取り入れることで、身体を持ち上げる際の負荷を軽減することができます。逆手懸垂が1回もできないという人はこの方法から始めましょう。そうすることで、だんだんと通常の懸垂ができる筋力がついていきます。
▼ジャンプを利用した逆手懸垂のやり方
①肩幅より広めにバーを逆手に握る
②台や床からジャンプをして身体を持ち上げる
③身体を下ろす時のみゆっくりと負荷をかける
ジャンプを利用した逆手懸垂の最適な回数は、正しいフォームで行える限界の回数です。まずは1回やってみて、慣れてきたら徐々に回数を増やして行くと良いでしょう。セット数は通常の逆手懸垂と同様に、初心者は週に1回3セット、慣れてきたら週に2回6セットを目安に行います。
▼ジャンプを利用した逆手懸垂のコツ&注意点
ネガティブストレッチに耐えることにより、筋力を付けるトレーニングです。通常の逆手懸垂と同様に、肩甲骨の動きやグリップの握り方、首の角度などに注意してください。
ずーみー(泉風雅)
初心者には、他にもラットプルダウンなどの負荷の弱いトレーニングもおすすめです。焦らずに取り組んでいきましょう。
② ナローグリップでの逆手懸垂
手幅を狭めてグリップを握る逆手懸垂です。肩関節の伸展(腕をタテに振り降ろす動き)が大きくなるため、肩甲骨を下方向に動かしやすくなり、広背筋に負荷をかけやすくなります。肩甲骨を寄せるのが苦手な人におすすめです。
▼ナローグリップでの逆手懸垂のやり方
①手の幅を狭く握る
②肩甲骨を寄せ下げることを意識しながら体を上げる
③ゆっくりと体を下ろす
ナローグリップでの逆手懸垂の最適な回数とセット数は、通常の逆手懸垂と同じです。回数は、正しいフォームで行える限界の回数を目安にしてください。セット数は、最初のうちは週1回3セットを行い、慣れてきたら週2回6セット程度に増やすと良いでしょう。
▼ナローグリップでの逆手懸垂のコツ&注意点
広背筋に効かせやすい一方で、上腕二頭筋の負荷が大きくなるというデメリットもあります。腕が痛いときは無理に行わないようにしてください。
ずーみー(泉風雅)
肩甲骨をうまく寄せることができないと、広背筋ではなく三角筋後部や大円筋の負荷が大きくなる原因になります。正しいフォームを維持することが重要です。
懸垂のバリエーション
ここからは、逆手懸垂以外の懸垂のバリエーションを解説します。背中をさらに鍛えたいときは、こちらにも挑戦してください。
①順手懸垂
冒頭で紹介した、順手で行う懸垂です。上腕二頭筋よりも上腕三頭筋を使います。ここで解説しているフォームでは、大円筋や肩甲骨を寄せる筋肉に効果があります。
▼順手懸垂のやり方
①手の平を前に向けて、肩幅よりも広くにバーを握る
②足から頭をまっすぐにし、鎖骨をバーの方に引き上げる
③身体を降ろす
順手懸垂の最適なセット数は、逆手懸垂と同様に正しいフォームを維持できる限界の回数です。セット数も同じく、初心者は週に1回3セット、上級者は週に2回6セット程度行うとよいでしょう。
▼順手懸垂のコツ&注意点
逆手懸垂と同様に、肩甲骨を寄せ下げること、グリップをしっかりと深く握ること、首を反らさないようにすることを意識してください。
ずーみー(泉風雅)
体をまっすぐにする代わりに足を畳んで鎖骨の下のほうに引くと、広背筋への負荷を上げることができます。
(順手懸垂については以下の記事も参考にしてみてください)
プルアップのやり方!背中に効かせるコツで筋トレ効果UP!チンアップとの違いも
出典:Slope[スロープ]
②スターナムチン
スターナムチンとは、特に狭い手幅で行うパラレルグリップの懸垂のことです。肩関節の伸展、腕を縦に振り下ろす動きを強調することで、広背筋に効果的に負荷をかけることができます。
▼スターナムチンのやり方
①狭い手幅で手の平を向かい合わせてグリップを握る
②手やバーをみぞおちにぶつけるように身体を引き上げる
③身体を降ろす
順手懸垂の最適なセット数は、逆手懸垂と同様に正しいフォームを維持できる限界の回数です。セット数も同じく、トレーニングのステータスによって設定しましょう。初心者は週に1回3セット、上級者は週に2回6セット程度が目安です。
▼スターナムチンのコツ&注意点
腕を縦に振り下ろす動作ができていても、肩甲骨が寄せ下げられていないと広背筋に負荷をかけられません。肩甲骨の動きは常に意識しながら行うようにしましょう。
(スターナムチンニングについては以下の記事も参考にしてみてください)
上級レベルの懸垂『スターナムチンニング』のやり方!効果のある部位など徹底解説!
出典:Slope[スロープ]
逆手懸垂の効果を高める為のポイント
逆手懸垂を行う際に注意してほしい点を解説します。筋トレはやりすぎると体に負担がかかるので、適度に休息を入れるようにしてください。また、一緒に行うと効果的なトレーニングも紹介します。
オーバーワークに気を付ける
筋トレは、週に1回よりも2回の方が効果があるとされていますが、週に3回以上のトレーニングがそれ以上の効果があるのかは分かっていません。
やりすぎるとオーバーワークになり、体の痛みや不調の原因になることもあります。成果を期待して頑張りすぎてしまう方が多いですが、自分に合った回数や頻度を見つけながら健康的に理想の身体に近づけていきましょう。
また、頑張りすぎるあまりフォームが崩れてしまうと、効果が半減したり、狙っていない筋肉に負荷がかかってしまったりするほか、ケガをしてしまう可能性もあります。正しいフォームを維持して行うことを意識してください。
一緒に行うべきメニュー
逆手懸垂は、僧帽筋下部などを鍛え厚みを出すことのできる、ワンハンドロウやベントオーバーロウなどの背中のロウイング系種目と組み合わせるのがおすすめです。
また、拮抗筋の種目として、ショルダープレスやインクラインベンチプレス、ベンチプレスなども一緒に行うことにより、バランスよく身体を鍛えることができます。逆手懸垂のトレーニングに慣れてきたら取り入れてみてください。
(一緒に行うべきメニューについては以下の記事も参考にしてみてください)
ベントオーバーローイングのやり方!広背筋に確実に効くコツをダンベル・バーベル別に解説
出典:Slope[スロープ]
逆手懸垂で上腕二頭筋を鍛えて逞しい腕に
逆手懸垂は背中を中心に、上腕二頭筋なども鍛えることができるトレーニングです。今回お伝えしたトレーニングのポイントを意識して、正しいフォームで逆手懸垂に挑戦してみてください。
(一緒に行うべきメニューについては以下の記事も参考にしてみてください)
ダンベルショルダープレスのやり方!重量・角度など肩をデカくするコツを解説
出典:Slope[スロープ]
インクラインベンチプレスのやり方!角度・重量など大胸筋上部に効かせるコツを解説
出典:Slope[スロープ]
ベンチプレスのやり方!正しいフォーム&効果UPのコツ!初心者向けに回数・重量なども徹底解説!
出典:Slope[スロープ]