恥骨筋の構造・作用
恥骨筋はその名の通り恥骨の辺りにある筋肉です。まずは、その構造や作用について詳しく見ていきましょう。
恥骨筋の構造
恥骨筋は恥骨と大腿骨をつなぐ筋肉で、股関節を内転させる内転筋群に含まれます。内転筋群には他に、大内転筋・長内転筋・短内転筋・薄筋があり、それぞれ股関節の内転、屈曲、外旋などに関与しています。なお、恥骨筋は内転筋群の中でも一番上に位置しています。
恥骨筋の作用・役割
恥骨筋は、他の内転筋とともに股関節の内転・屈曲などを行う筋肉です。具体的な動作としては、足を閉じたり、前に上げたりする際に働きます。
内転筋群の中では大内転筋が一番体積が大きく、恥骨筋は見逃されがちですが、恥骨筋も下半身を動かしたり、股関節の安定を維持したりするうえでとても重要な筋肉です。
恥骨筋の筋トレ・ストレッチをするメリット
恥骨筋は、股関節を動かす重要な役割を担っているため、鍛えることでさまざまな効果が期待できます。具体的にどのような効果があるのか確認しておきましょう。
脚痩せやO脚改善につながる
恥骨筋のトレーニングを行う際は、恥骨筋のみを鍛えるのではなく内転筋群を狙っていくことが多いです。内転筋は太ももの内側にある筋肉で、鍛えることにより太ももが引き締められて脚痩せ効果が期待できます。また、O脚の改善にも繋がります。美しい脚を手に入れたい女性は、恥骨筋を含む内転筋群をぜひ鍛えてください。
筋トレメニューからみたい方はこちら(下半身を鍛えるメニューについては以下の記事も参考にしてみてください)
【ダンベルの下半身メニュー】脚痩せダイエット〜高負荷で筋肥大・筋力UPも可能!
出典:Slope[スロープ]
股関節の柔軟性が上がる
恥骨筋は普段の生活ではあまり使われないため、そのままにしていると筋肉が硬くなってしまいます。その場合は意識してストレッチでほぐす必要があります。ストレッチすることにより筋肉の柔軟性が増し、機能も向上していくでしょう。
具体的には、脚が開脚しやすくなる、骨盤が安定するなどの効果が期待できます。また、恥骨筋がこわばっていると、あぐらの姿勢ができないこともあります。あぐらがかけない方は、恥骨筋のストレッチを行ってみると良いでしょう。
上半身の筋肉にも影響する
恥骨筋を含む内転筋が鍛えられて下半身が安定すると、上半身の筋肉にも良い影響が出ます。下半身が安定していれば、上半身も力を発揮しやすくなります。そのため、普段の生活はもちろん、他のトレーニングの質も向上させることが可能です。
また、内転筋群は恥骨結合を通して腹筋や腹膜などに繋がっています。恥骨筋を含む内転筋群を刺激することで下半身の機能が上がり、その影響は上半身にも及んでいくのです。
恥骨筋の筋トレメニュー&鍛え方のコツ
恥骨筋を鍛えられる筋肉トレーニングを紹介していきます。恥骨筋は、主に脚を大きく横に開くトレーニングで鍛えることができます。器具を使わずに自重で行う方法もあれば、ダンベルやバーベルを使って負荷を高める方法もあるので、自分に合ったトレーニングを見つけてください。
恥骨筋のトレーニング①サイドランジ
ランジ系のトレーニングにはさまざまな種類がありますが、ここで解説するサイドランジは足を横に出すトレーニングです。股関節内転筋や股関節外転筋などを刺激していくことができるため、スポーツ全般において重要な股関節の動きを習得するのに適しています。また、スクワットの動作訓練などとしても有効です。
▼サイドランジのやり方
①直立姿勢になる
②足を横に出してしゃがむ
③元に戻す
自重のみで行う場合のサイドランジの最適な回数は、フォームが乱れない範囲で限界までです。バーベルなどを使う場合は、筋トレの目的に応じて回数を決めてください。筋力アップのためには1~6回、筋肥大のためには6~12回、筋持久力アップのためには15回以上が目安です。重量は、その回数まで行って限界がくるものに設定しましょう。
セット数は、トレーニングのステータスによって設定しましょう。初心者なら週1回3セット、上級者なら週2回6セット程度がおすすめです。
▼サイドランジのコツ&注意点
・負荷を増やしたい方はダンベルやバーベルを使って行ってみましょう
・しっかりとお尻を落とすことを意識しましょう
・反対の足は膝を曲げずに真っ直ぐにしましょう
内転筋の他にも、大腿四頭筋やハムストリングスなどにも効果があります。下半身を鍛えたい方はぜひ行ってください。
ずーみー(泉風雅)
サイドランジに限らず、筋トレは正しいフォームで行うことが重要です。バーベルやダンベルで負荷を高めるときは、フォームが崩れるほど高重量を扱わないようにしてください。
(サイドランジのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
サイドランジの効果&やり方!内転筋を鍛えて短期間で脚痩せ!ダンベルなど応用メニューも
出典:Slope[スロープ]
恥骨筋のトレーニング②ワイドスタンススクワット
ワイドスタンススクワットは、脚を横に大きく開いた状態でスクワットを行うトレーニングです。自重により行う方法のほか、ダンベルやバーベルで負荷を大きくして行うこともできます。下半身の筋肉を鍛えるトレーニングですが、特に恥骨筋などの内転筋群に大きな負荷をかけることができます。
▼ワイドスタンススクワットのやり方
①足幅を肩幅より広めにとって立つ
②背筋を伸ばしたまましゃがむ
③上体を起こして元の状態に戻す
ワイドスクワットの最適な回数や重量、セット数は、サイドランジと同じです。自重のみで行う場合の回数は、正しいフォームが維持できる限界の回数です。バーベルを使用するときは、筋トレの目的に応じて設定し、重量はその回数で限界がくるものを扱いましょう。セット数はいずれの場合も、トレーニングのステータスによって決めてください。
▼ワイドスタンススクワットのコツ&注意点
・つま先を30度くらい体の外側に向けることで内転筋に刺激が入りやすくなります
・上体を前傾しながら行うことで、内転筋を最大限に鍛えることができます
・腰が曲がらないように意識しましょう
ワイドスタンススクワットは、バーベルを三角筋後部の少し上で担ぐ、ローバースタイルで行うのが良いでしょう。O脚の改善や脚痩せなどの効果も期待できます。
ずーみー(泉風雅)
スクワット中は首がまっすぐになるよう、1.5mくらい先の地面を見つめるようにするとよいでしょう。鏡などを見てしまうと頸椎過伸展となり、腹圧が抜け脊椎が曲がってしまう原因となります。
(ワイドスタンススクワットのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
ワイドスタンススクワットのやり方!O脚改善・脚痩せ効果抜群!自宅でも簡単!
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
恥骨筋のトレーニング③ブルガリアンスクワット
ブルガリアンスクワットは片足を後ろの台に乗せてスクワット動作を行う種目です。通常のスクワットよりも不安定な状態となるのが特徴で、下半身の筋肉である大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋を鍛えることができるほか、内転筋や腸腰筋にも効果的です。
▼ブルガリアンスクワットのやり方
①立った状態で片脚を後ろの台に乗せる
②前脚の膝を曲げて腰を落とす
③腰を上げて元の状態に戻す
ブルガリアンスクワットの最適な回数や重量は、他のトレーニングと同じように設定しましょう。自重のみで行う場合とウエイトを使用する場合、それぞれ自分の体やトレーニングの目的に合ったメニューで行ってください。セット数も同様に、初心者なら週1回3セット、上級者なら週2回6セットが目安です。
▼ブルガリアンスクワットのコツ&注意点
・膝を曲げる際、膝がつま先よりも内側に傾かないように注意してください
・両足にバランスよく体重を乗せ、腰を曲げないようにしましょう
・慣れてきたら、ダンベルを持つなどして負荷を増やしていきましょう
動作に慣れるまでは手を壁に置くなどして、転倒に注意しながら行ってください。美尻効果や脚痩せ効果、腰痛の改善効果なども期待できるトレーニングです。
ずーみー(泉風雅)
台は、しゃがんだときに地面とふくらはぎができるだけ垂直になるように高さを調節してください。台に置く足は立たせても寝かせても構いません。
(ブルガリアンスクワットのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
ブルガリアンスクワットの効果&やり方!片足で行う最強の自重筋トレで下半身強化!
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
恥骨筋のトレーニング④スモウデッドリフト
足幅を大きく広げて行うスモウデッドリフトは、恥骨筋をはじめ内転筋群の活動が得やすくなるトレーニングです。また、臀筋群や広背筋、脊柱起立筋も鍛えていくことができます。
▼スモウデッドリフトのやり方
①足幅を広げて立ち、バーベルを掴む
②バーベルを持ち上げる
③バーベルを下ろす
スモウデッドリフトの最適な回数は、筋トレの目的に応じて変わります。筋力アップのためなら1~6回、筋肥大のためなら6~12回、筋持久力アップのためなら15回以上を目安にしてください。重量は、その回数で限界がくるものがおすすめです。セット数は他のトレーニングと同じく、初心者は週1回3セット、上級者は週2回6セット程度が良いでしょう。
▼スモウデッドリフトのコツ&注意点
・バーベルを持つときは、指先ではなく手のひら全体で握るようにしましょう
・つま先はやや外に向け、膝の向きとつま先の向きが一致するようにしましょう
・腰が曲がったり、反ったりしないように意識しましょう
・バーベルは常に体のすぐそばの位置をキープし、直線・真上の軌道を意識して持ち上げます
通常のデッドリフトに比べて上半身の前傾が少なく、バーベルと体の距離も近いため腰椎への負担を軽減できる筋トレです。腰に不安がある方にもおすすめです。
ずーみー(泉風雅)
初めから大きな重量を扱うのは避けましょう。身体に沿わせてバーベルを動かすために膝と股関節を伸ばすタイミングを学習するようにします。
(スモウデッドリフトのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
スモウデッドリフトのやり方!腰痛が激減!下半身を効果的に鍛えるコツをプロが解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
恥骨筋のトレーニング⑤アダクション
アダクションは、専用のマシンを使用して行うトレーニングです。股関節の内転の動きにだけ働きかけ、集中的に内転筋を鍛えていくことができます。また、股関節をあえて外旋させて行うことも可能です。
▼アダクションのやり方
①アダクションマシンに座る
②股関節を内転させて足を閉じる
③足が開いた状態に戻す
アダクションの最適な回数及び重量は、スモウデッドリフトと同様に、筋トレの目的によって変わります。回数は、筋力アップを目指すなら1~6回、筋肥大を目指すなら6~12回、筋肉の持久力アップを目指すなら15回以上で、重量はその回数で限界となる負荷を用います。
セット数は他のトレーニングと同様に、初心者は週1回3セット、上級者は週2回6セットほどがおすすめです。
▼アダクションのコツ&注意点
・膝をつま先よりも内側に入れないようにし、股関節が内旋してしまわないようにしましょう
太ももが引き締められるトレーニングです。恥骨筋を鍛えたい方だけでなく、脚痩せを目指す方もぜひ挑戦してください。
ずーみー(泉風雅)
アダクションを行うときは、拮抗筋の種目であるアブダクションも並行して行うのがおすすめです。そうすることで、内転筋群のパフォーマンスの改善や疲労回復促進効果を得ることができます。
(アダクションのやり方については以下の記事も参考にしてみてください)
アダクションやり方!短期間で美脚GET!脚痩せ効果UPのコツをマシン・自重別に解説
出典:Slope[スロープ]
(動画で見たい方はこちら)
恥骨筋のストレッチメニュー
恥骨筋のストレッチメニューを紹介します。恥骨筋など内転筋群をストレッチすることで、下半身の筋肉がほぐれて様々な機能が向上していきます。普段、内転筋をあまり使用していない方は、ストレッチでしっかりと柔らかくしていきましょう。
恥骨筋のストレッチ①骨盤が安定する内転筋ストレッチ
恥骨筋を含む内転筋群に効果のあるストレッチです。太ももの内側の筋肉を柔らかくするだけでなく、骨盤の安定性を向上させることもできます。今回は立ったまま行う方法を紹介していますが、片足ずつ行う方法、座って行う方法、四つん這いで行う方法もあります。
▼内転筋ストレッチ(立ったまま行う方法)のやり方
①大きく足を開げて立ち、外側に膝を曲げて腰を下げる
②その姿勢を30秒間保つ
▼内転筋ストレッチのコツ&注意点
・膝はつま先より前に出ないようにし、上半身はまっすぐにします
・足を開脚する際、痛みがあって開かない場合は無理をせず、開く範囲で行いましょう
ケガをしないように、体に無理のない範囲で行うようにしてください。
福田翔馬パーソナルトレーナー
つま先と膝の向きを揃えずにこのストレッチを行うと、膝が捻れてケガにつながる可能性があります。下手に開きすぎてもバランスを取るために無駄な力が入ってしまうので、つま先と膝の向きを揃えることを意識しつつ、できる範囲で行ってください。
恥骨筋のストレッチ②股関節と内転筋のストレッチ
硬くなった内転筋を柔らかくし、機能を向上させるストレッチです。つま先の向きや股関節の動きに注意することで、より恥骨筋などの内転筋に効かせることができます。
▼股関節ストレッチのやり方
①片方は膝をつき、もう片方の脚は横に伸ばす(つま先は上に向ける)
②足を伸ばしたほうに上半身を曲げる
③上半身を元に戻し、つま先を正面に向ける
④足を伸ばしたほうに上半身を曲げる
▼股関節ストレッチのコツ&注意点
・伸ばした足側の手は足の付け根に置き、反対側の腕と脇腹はしっかりと伸ばしましょう
・つま先を上げた状態と正面を向けた状態を交互に10回行いましょう
背骨の筋肉にも刺激が入るストレッチです。下半身だけでなく、背中もほぐしたい方におすすめです。
福田翔馬パーソナルトレーナー
ハムストリングスが固いと恥骨筋が伸びる前にハムストリングスが伸びてしまい、恥骨筋への効果が弱くなることもあります。股関節の根本よりも、太ももや膝裏の伸びが強い方は、膝を曲げて行うと恥骨筋へのストレッチを強めることができます。
恥骨筋のストレッチ③仰向けで行う内転筋ストレッチ
股関節の内転と内旋に働く筋肉に作用するストレッチです。歪んだ骨盤を矯正する効果が期待できます。
▼仰向けで行う内転筋ストレッチのやり方
①仰向けに寝そべり、膝を曲げる
②片方の膝を外側に開く
③その状態を10〜30秒間保つ
④開いた足を元に戻す
▼仰向けで行う内転筋ストレッチのコツ&注意点
・両肩と足の裏は地面に付けるようにしましょう
・ゆっくりとした動作で行いましょう
・左右それぞれ3〜5回ずつ行います
骨盤が矯正されると、姿勢改善や腰痛改善など、さまざまなメリットがあります。
福田翔馬パーソナルトレーナー
恥骨筋が固いために、足を倒した際に骨盤ごと倒れてしまう方がいます。腹部で踏ん張り、骨盤は固定することでより効果的にストレッチできます。
恥骨筋を鍛えて筋トレ効果をUPしよう
恥骨筋は内転筋群の中で一番上に位置し、ほかの内転筋とともに股関節を内転させたり屈曲させたりする役割がある筋肉です。内転筋は股関節の内転だけでなく、股関節屈曲位から中間位までの伸展なども行うため、バックエクステンションやデッドリフトでも使われる筋肉です。恥骨筋を含む内転筋を鍛えることで、多くのトレーニングの質が上がります。
内転筋群の中では大内転筋が一番体積が大きく、恥骨筋は見逃されがちですが、恥骨筋も下半身を動かし、股関節の安定の維持に関わっている重要な筋肉です。筋トレやストレッチでしっかり鍛えて、様々な機能を向上させていきましょう。